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魔女と奇妙な男 (81) 医者と魔女
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そうだ、”忘れて”いた。サジルの旦那がいたんだっけ。
”人の命を助けるのが魔女”
それは、戦闘魔女のクレオンだって同じです。激戦の直後とはいえ、重症者の安否について失念していた事を、彼は大いに恥じいりました。
駆け出しの魔女に、教えられるとはね。僕も焼きが回ったかな。
そう思いながら、クレオンは只の人間に戻ったメサイトをロープで縛りあげます。
「生きてる! サジルさん、生きてます!」
ネリスが振り返り、半分泣きながらクレオンに告げました。それを聞いたクレオンも、ホッと胸をなでおろします。悪党に利用されていたとはいえ、彼の命をかけた行動がなければ、クレオンの勝利はあり得なかったわけですからね。
メサイトは完全に意識を失い、もはや逃げられない事を確認すると、クレオンはサジルの元へと駆けつけます。
「ネリス。今から言う薬と品を、二階の倉庫から取って来てくれ」
瀕死のサジルを診察したクレオンが、幾つかの薬や用具の名前を口にしました。
「薬って、クレオンさん、わかるんですか?」
ネリスが、驚いたように尋ねます。
「もう、失礼だな、君は。僕だって一応魔女なんだよ。薬の知識は、君の数十倍は持ってるつもりだけどね。
それにさ、僕は医者の資格も有しているんだよ。ほら。わかったら、さっさと行って」
ネリスの言いようは、本当に失礼なものでしたが、あれだけの戦闘を見せつけられたのです。”戦闘しか能がない”と、彼女が考えたとしても、無理はないのかも知れませんね。
しかしクレオンの言う通り、魔女は薬の専門家です。それは男の魔女でも、戦闘魔女でも変わりはありません。そして当然ながら、薬は医療と深いつながりがある事から、魔女の中には医師の資格を持つ者も多く存在するのでした。
突然の告白に、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするネリスでしたが、今はサジルの命が最優先です。聞きたい事が山ほどあるものの、ここはクレオンの言う通り、直ちに倉庫へと向かいました。
その時、受付へと続く廊下の片隅。雑然と置かれた荷物の影で一人の男が呟きます。
「ここまでだな」
彼は紛れもなく、あの”濃紺のローブの男”でした。この建物にレアロンを欺く結界を張った後、誰にも気づかれる事なく一部始終を観察していたのです。
ただ彼の行動には、幾つかの疑問点がありました。
ネリスとサジルが、逃げ出そうとした時、彼は既に今の場所に潜んでいたにもかかわらず、彼らを素通りにさせましたし、アテロットが表から戻ったサジルに殴らた時も、何もせずに、ただ見ていただけでした。
紺色のローブの男は、明らかにメサイト側の人間です。それなのに、これは一体どういうわけなのでしょうか。
彼は踵を返すと、
「作戦は失敗だが、出来は上々といったところか。”あのお方”に、良い報告が出来そうだ」
と、そう言って、クレオンたちに気づかれる事なく出口へと姿を消しました。あぁ、そうそう。つまり彼は、メサイトがいうところの「あのお方」ではなかったという事ですね。
ネリスが二階の倉庫へ行って、薬や他の品を調達している間、クレオンは一端サジルの元を離れ、メサイトが禁忌の薬をまだ持っていないかを調べました。
他には、特にないな……。では、あれでお終いだったわけか。しかし最後の一本のみ、あれだけ効果時間が長く、しかも結果的に二段階にも変化した。どういう事なんだ。
元々ビリビリだった、メサイトの洋服のポケットをまさぐったクレオンは、恐ろしい薬がもうない事を確認します。
こうしてみると、本当に只の若者だな。どうしてそれが……。
”人の命を助けるのが魔女”
それは、戦闘魔女のクレオンだって同じです。激戦の直後とはいえ、重症者の安否について失念していた事を、彼は大いに恥じいりました。
駆け出しの魔女に、教えられるとはね。僕も焼きが回ったかな。
そう思いながら、クレオンは只の人間に戻ったメサイトをロープで縛りあげます。
「生きてる! サジルさん、生きてます!」
ネリスが振り返り、半分泣きながらクレオンに告げました。それを聞いたクレオンも、ホッと胸をなでおろします。悪党に利用されていたとはいえ、彼の命をかけた行動がなければ、クレオンの勝利はあり得なかったわけですからね。
メサイトは完全に意識を失い、もはや逃げられない事を確認すると、クレオンはサジルの元へと駆けつけます。
「ネリス。今から言う薬と品を、二階の倉庫から取って来てくれ」
瀕死のサジルを診察したクレオンが、幾つかの薬や用具の名前を口にしました。
「薬って、クレオンさん、わかるんですか?」
ネリスが、驚いたように尋ねます。
「もう、失礼だな、君は。僕だって一応魔女なんだよ。薬の知識は、君の数十倍は持ってるつもりだけどね。
それにさ、僕は医者の資格も有しているんだよ。ほら。わかったら、さっさと行って」
ネリスの言いようは、本当に失礼なものでしたが、あれだけの戦闘を見せつけられたのです。”戦闘しか能がない”と、彼女が考えたとしても、無理はないのかも知れませんね。
しかしクレオンの言う通り、魔女は薬の専門家です。それは男の魔女でも、戦闘魔女でも変わりはありません。そして当然ながら、薬は医療と深いつながりがある事から、魔女の中には医師の資格を持つ者も多く存在するのでした。
突然の告白に、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするネリスでしたが、今はサジルの命が最優先です。聞きたい事が山ほどあるものの、ここはクレオンの言う通り、直ちに倉庫へと向かいました。
その時、受付へと続く廊下の片隅。雑然と置かれた荷物の影で一人の男が呟きます。
「ここまでだな」
彼は紛れもなく、あの”濃紺のローブの男”でした。この建物にレアロンを欺く結界を張った後、誰にも気づかれる事なく一部始終を観察していたのです。
ただ彼の行動には、幾つかの疑問点がありました。
ネリスとサジルが、逃げ出そうとした時、彼は既に今の場所に潜んでいたにもかかわらず、彼らを素通りにさせましたし、アテロットが表から戻ったサジルに殴らた時も、何もせずに、ただ見ていただけでした。
紺色のローブの男は、明らかにメサイト側の人間です。それなのに、これは一体どういうわけなのでしょうか。
彼は踵を返すと、
「作戦は失敗だが、出来は上々といったところか。”あのお方”に、良い報告が出来そうだ」
と、そう言って、クレオンたちに気づかれる事なく出口へと姿を消しました。あぁ、そうそう。つまり彼は、メサイトがいうところの「あのお方」ではなかったという事ですね。
ネリスが二階の倉庫へ行って、薬や他の品を調達している間、クレオンは一端サジルの元を離れ、メサイトが禁忌の薬をまだ持っていないかを調べました。
他には、特にないな……。では、あれでお終いだったわけか。しかし最後の一本のみ、あれだけ効果時間が長く、しかも結果的に二段階にも変化した。どういう事なんだ。
元々ビリビリだった、メサイトの洋服のポケットをまさぐったクレオンは、恐ろしい薬がもうない事を確認します。
こうしてみると、本当に只の若者だな。どうしてそれが……。
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