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ニールの目ざめ (1) 翼
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ここはヴォルノースの南の森。ニンゲンの男の子ニールが、原っぱに一人たたずんでいます。彼は、抜けんばかりの真っ青な天を仰ぎ、一つ大きな深呼吸をしました。
すると、どうでしょう。彼の背中に天使のような翼が生えてきたかと思うと、それは静かに動き始めます。ほどなく、ニールの足がふわりと地面から離れました。そして羽ばたきとともに、スピードを増した彼の小さい体は、大空向かって一直線に昇って行きます。
「どうだい、これがボクの魔法だぞ。パパの空を歩ける魔法より、ずっと凄いんだ」
ニールが、はしゃいで言いました。
(ニールのパパは、両足の下に光の輪っかを出現させ、空中を自由に踏みしめる魔法が使えます。《第一部 パパの魔法 参照》)
「わ~、とっても気持ちがいいなぁ」
高い場所にいる恐怖など微塵も感じる事なく、ニールはウキウキとした気分になりました。既に、パパとママの居るお家も、豆粒のように小さく見えます。
雲と同じくらいの高さまで上昇したニール。今度は水平飛行に移ります。眼下には、いつも下から眺める森の木々が、うっそうと茂っている様子が目に入りました。仲良し三人組のマリアやドッジとよく遊ぶフォグラン川も、地図で見た通りの形で流れています。
ようし、このまま”決め事の都市”まで行って見よう!
ニールはそう思い立ち、頭を北方へと向けました。決め事の都市とは、ヴォルノースの東西南北の森の中心にある都会の街です。ニールはまだ一ぺんもそこへは行った事がなく、どんな場所なんだろうかと、いつもワクワクしながら考えておりました。
その時です。
ニールの目の前に、モクモクと黒い雲が広がり始めました。そして炭のような雲の両側から二本の腕がニョッキリと伸びだして、小さなニールを捕まえようと追いかけてきます。
「た、助けてぇ!」
ニールは、か細い声で助けを求めながら逃げ惑いました。しかし彼の小さな翼では、黒雲のスピードにはかないません。その黒い両腕はドンドンとニールに迫って来ました。そして近づくにつれ、恐ろしい声が雲の中から響きます。
……ール、ニール、ニール!
声は次第に大きくなり、その声の強さに耐え切れなくなったニールは、両耳を押さえました。
「やめて、やめて! 落っこちちゃう!」
彼の必死の願いも空しく、声は増々大きくなり、暗黒の腕はニールを包み込みます。腕はニールを大きく揺さぶって、彼と共に地上へ真っ逆さまに落ちて行きました。
……ル、ニール、起きなさい! 学校、おくれるわよ!
窓から差し込む朝日の中、ニールが目にしたのはママの顔です。彼が横たわっているのも大空ではなく、いつも寝ている樫の木のベッドでした(今の家に引っ越して来た時に、ニールの父方の祖父母が買ってくれたものです)。
「あれ? ママ、何でここにいるの? ボク、魔法で空を飛んでたはずなんだけど……」
ニールが、寝ぼけまなこをこすります。
ママはニールの言葉を聞き、少し考えてから、
「ほら、早く着替えて降りて来なさい。本当に学校、遅れちゃうわよ。
あぁ、でも手抜きをしないで、ちゃんと顔を洗う事!」
と、魔法という言葉に触れる事なく、少し厳しい声で、ピシャリと言いました。これには、ちょっとした理由があるのです。
「なぁんだぁ、夢かぁ」
ニールが残念そうにつぶやきながら、寝間着を脱ぎ始めました。
実はニール、今、魔法の事で相当悩んでいるのです。
すると、どうでしょう。彼の背中に天使のような翼が生えてきたかと思うと、それは静かに動き始めます。ほどなく、ニールの足がふわりと地面から離れました。そして羽ばたきとともに、スピードを増した彼の小さい体は、大空向かって一直線に昇って行きます。
「どうだい、これがボクの魔法だぞ。パパの空を歩ける魔法より、ずっと凄いんだ」
ニールが、はしゃいで言いました。
(ニールのパパは、両足の下に光の輪っかを出現させ、空中を自由に踏みしめる魔法が使えます。《第一部 パパの魔法 参照》)
「わ~、とっても気持ちがいいなぁ」
高い場所にいる恐怖など微塵も感じる事なく、ニールはウキウキとした気分になりました。既に、パパとママの居るお家も、豆粒のように小さく見えます。
雲と同じくらいの高さまで上昇したニール。今度は水平飛行に移ります。眼下には、いつも下から眺める森の木々が、うっそうと茂っている様子が目に入りました。仲良し三人組のマリアやドッジとよく遊ぶフォグラン川も、地図で見た通りの形で流れています。
ようし、このまま”決め事の都市”まで行って見よう!
ニールはそう思い立ち、頭を北方へと向けました。決め事の都市とは、ヴォルノースの東西南北の森の中心にある都会の街です。ニールはまだ一ぺんもそこへは行った事がなく、どんな場所なんだろうかと、いつもワクワクしながら考えておりました。
その時です。
ニールの目の前に、モクモクと黒い雲が広がり始めました。そして炭のような雲の両側から二本の腕がニョッキリと伸びだして、小さなニールを捕まえようと追いかけてきます。
「た、助けてぇ!」
ニールは、か細い声で助けを求めながら逃げ惑いました。しかし彼の小さな翼では、黒雲のスピードにはかないません。その黒い両腕はドンドンとニールに迫って来ました。そして近づくにつれ、恐ろしい声が雲の中から響きます。
……ール、ニール、ニール!
声は次第に大きくなり、その声の強さに耐え切れなくなったニールは、両耳を押さえました。
「やめて、やめて! 落っこちちゃう!」
彼の必死の願いも空しく、声は増々大きくなり、暗黒の腕はニールを包み込みます。腕はニールを大きく揺さぶって、彼と共に地上へ真っ逆さまに落ちて行きました。
……ル、ニール、起きなさい! 学校、おくれるわよ!
窓から差し込む朝日の中、ニールが目にしたのはママの顔です。彼が横たわっているのも大空ではなく、いつも寝ている樫の木のベッドでした(今の家に引っ越して来た時に、ニールの父方の祖父母が買ってくれたものです)。
「あれ? ママ、何でここにいるの? ボク、魔法で空を飛んでたはずなんだけど……」
ニールが、寝ぼけまなこをこすります。
ママはニールの言葉を聞き、少し考えてから、
「ほら、早く着替えて降りて来なさい。本当に学校、遅れちゃうわよ。
あぁ、でも手抜きをしないで、ちゃんと顔を洗う事!」
と、魔法という言葉に触れる事なく、少し厳しい声で、ピシャリと言いました。これには、ちょっとした理由があるのです。
「なぁんだぁ、夢かぁ」
ニールが残念そうにつぶやきながら、寝間着を脱ぎ始めました。
実はニール、今、魔法の事で相当悩んでいるのです。
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