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ニールの目ざめ (3) 夫婦喧嘩
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パパは、空中を歩ける魔法を利用した商売「高いところ屋さん」なのです。屋根の修理や建築工事のお手伝いをする仕事で、結構繁盛しています。今日は、渓谷にかかっている橋の下へ潜り込んでの、点検作業に呼ばれているのでした。パパは二級検査技師の資格を持っていて、これまたお役所の人に重宝されています。
「うん。いつもの点検だけならそうでもないんだけどさ、今日は職人さんが修繕をしてから、そのチェックをする関係上、こっちの都合だけじゃ決められないんだよ。向こうが遅れれば、その後に調べる僕の方も遅れてしまう」
パパが、ちょっと渋い顔をします。もし帰りが遅くなってしまったら、エンシャント・ケイブに寄れなくなってしまいますからね。この店でのひと時は、パパにとって至福の時間であり、オアシスと言って良い場所なんです。ママには、そこがわかっていません。
「職人さんの方に、パパみたいな空中を自由に動ける魔法を持ったニンゲンや、鳥の動物ビトとかいないの?」
パパの、晩ご飯の事を考えているのでしょう。ママが、更に突っ込んた質問をしました。ちなみに動物ビトとは、頭が動物、体がニンゲンといった種族であり、使える魔法は、顔が何の動物かにちなんだ場合が多いのです。
「今度の現場じゃ、その手の魔法を使えるのは僕しかいないな。職人さんたちは、ロープで体を括り付けての危険な作業だから、作業が遅れても急かすわけにはいかないよ。
そもそも、空中ならお手のものって魔法を使える奴は、そうそういないからね」
パパが、少し自慢げに言うと、
「パパっ」
と、ママが、声を潜めて、でもかなりきつい調子で夫を睨みつけました。
「あっ」
パパが、しまったとばかりに小声をあげます。
何故かって? 今、彼らのお家で、魔法の話はご法度なんです。だって、ニールがとても気にしますからね。
「ごちそうさま~」
朝食を食べ終わったニール、二人の話は聞こえなかったフリをして椅子を降りました。パパとママが気を使ってくれるのが、かえって煩わしく感じる年頃に差し掛かっているニールです。
彼は学校へ行く準備をするために、二階へと続く階段を上って行きました。そして自室のドアを、バタンと閉めます。ちょっとだけ強めに閉めたのは、せめてもの抗議だったようですね。
「パパってば、だめじゃない。あの子、さっきも魔法で空を飛ぶ夢を見ていたらしいの」
ママが。コーヒーカップをドンと机の上に置きました。
「ご、ごめんよ。あ、でも最初、魔法の事に触れたのはママだからね」
取りあえずは謝ったものの、パパもすかさず反撃します。
「そ、そりゃそうだけど、自分の魔法を自慢したのはパパの方でしょ?
いい? ヴォルノースの森の住人なんだから、魔法を使るのは当たり前なのよ。問題は”どういう魔法が使えるか”よね。
それをパパが、自慢たらしく言うから……」
パパのいう事にも一理あるので、ママが言い訳がましく理屈を並べたてます。何かもう、受験生を抱えるお家みたいな感じですね。
ただママの主張にも、理解できる所がありました。というのは、どういう魔法を使えるようになるのかは、全く予想がつかないんです。遺伝とか家柄とか、IQとか体つきとか、そういうものは全く関係ないんです。ですから本人はもちろんの事、どんな魔法が使えるかわかるまで、家族そろってドキドキし通しなんですね。
もちろんヴォルノースの森では、使用できる魔法の種類によって、差別をされたりする事はありません。しかし、それが仕事などに生かせる場合、他人よりも有利に働く場合があります。
パパの魔法が、正にそれなんです。
高い場所へ行けるというのは結構珍しい魔法であり、それが仕事に直結しています。ですからママとしては、ニールの将来と魔法をどうしてもリンクさせて考えてしまうのです。これは子供を持つ親、特に母親にとっては共通の悩みです。得られる魔法の種類は、当人の努力でどうにかなるものではないので、ホントやきもきするしかありません。
「うん。いつもの点検だけならそうでもないんだけどさ、今日は職人さんが修繕をしてから、そのチェックをする関係上、こっちの都合だけじゃ決められないんだよ。向こうが遅れれば、その後に調べる僕の方も遅れてしまう」
パパが、ちょっと渋い顔をします。もし帰りが遅くなってしまったら、エンシャント・ケイブに寄れなくなってしまいますからね。この店でのひと時は、パパにとって至福の時間であり、オアシスと言って良い場所なんです。ママには、そこがわかっていません。
「職人さんの方に、パパみたいな空中を自由に動ける魔法を持ったニンゲンや、鳥の動物ビトとかいないの?」
パパの、晩ご飯の事を考えているのでしょう。ママが、更に突っ込んた質問をしました。ちなみに動物ビトとは、頭が動物、体がニンゲンといった種族であり、使える魔法は、顔が何の動物かにちなんだ場合が多いのです。
「今度の現場じゃ、その手の魔法を使えるのは僕しかいないな。職人さんたちは、ロープで体を括り付けての危険な作業だから、作業が遅れても急かすわけにはいかないよ。
そもそも、空中ならお手のものって魔法を使える奴は、そうそういないからね」
パパが、少し自慢げに言うと、
「パパっ」
と、ママが、声を潜めて、でもかなりきつい調子で夫を睨みつけました。
「あっ」
パパが、しまったとばかりに小声をあげます。
何故かって? 今、彼らのお家で、魔法の話はご法度なんです。だって、ニールがとても気にしますからね。
「ごちそうさま~」
朝食を食べ終わったニール、二人の話は聞こえなかったフリをして椅子を降りました。パパとママが気を使ってくれるのが、かえって煩わしく感じる年頃に差し掛かっているニールです。
彼は学校へ行く準備をするために、二階へと続く階段を上って行きました。そして自室のドアを、バタンと閉めます。ちょっとだけ強めに閉めたのは、せめてもの抗議だったようですね。
「パパってば、だめじゃない。あの子、さっきも魔法で空を飛ぶ夢を見ていたらしいの」
ママが。コーヒーカップをドンと机の上に置きました。
「ご、ごめんよ。あ、でも最初、魔法の事に触れたのはママだからね」
取りあえずは謝ったものの、パパもすかさず反撃します。
「そ、そりゃそうだけど、自分の魔法を自慢したのはパパの方でしょ?
いい? ヴォルノースの森の住人なんだから、魔法を使るのは当たり前なのよ。問題は”どういう魔法が使えるか”よね。
それをパパが、自慢たらしく言うから……」
パパのいう事にも一理あるので、ママが言い訳がましく理屈を並べたてます。何かもう、受験生を抱えるお家みたいな感じですね。
ただママの主張にも、理解できる所がありました。というのは、どういう魔法を使えるようになるのかは、全く予想がつかないんです。遺伝とか家柄とか、IQとか体つきとか、そういうものは全く関係ないんです。ですから本人はもちろんの事、どんな魔法が使えるかわかるまで、家族そろってドキドキし通しなんですね。
もちろんヴォルノースの森では、使用できる魔法の種類によって、差別をされたりする事はありません。しかし、それが仕事などに生かせる場合、他人よりも有利に働く場合があります。
パパの魔法が、正にそれなんです。
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