ヴォルノースの森の なんてことない毎日 《第二部》 (オムニバス短編集)

藻ノかたり

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ニールの目ざめ (18) 神々の恩賜 その1

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「みんな。”神々の恩賜”って、どういう意味かわかるかな?」

メリドルの美声授業が、スタートします。

子供たちは、ざわつきながらお互いの目を見合わせました。

”神々”というのは、彼らにも理解できますが、”恩賜”となると、二年生にはまだ難しい言葉となります。

「ふふっ、みんな”恩賜”の部分で、悩んでいるんじゃないのかい? 

この言葉の意味が、わかる人はいないかな?」

メリドルが、少しイタズラっぽく、生徒たちを見回します。

実はこの時、マリアはすごく緊張していました。「もし先生が、私を当てたらどうしよう」と思っていたのです。彼の口調は、如何にもそんな感じだったのですね。

でも、何故でしょう? 

実を言えば、マリアは”恩賜”の意味を知らなかったのです。もっとも、二年生でこの言葉を知っている生徒の方が珍しいのですが、何せ彼女はクラスの知の象徴です。わからないなんて事が暴露されれば、彼女の面目は丸つぶれです。

気の弱いマリアは、メリドルと目が合わないように気をつけながら、心の中で「当たるな、当たるな」と、必死につぶやいておりました。

そんな彼女の思いを知ってか知らずか、

「この言葉はもっと学年が進んでから習うので、みんなが知らないのは当然です。恩賜というのは、まぁザックリと言えば”かなり偉い人からの贈り物”というような意味です。

つまり、神々の恩賜というのは”神様からの贈り物”と考えて下さい」

と、メリドルがアッサリと回答を述べました。

へぇ、とばかりに、教室のあちこちから囁く声が聞こえてきます。マリアは、心の中で安堵の溜息を漏らしました。

メリドルは、

「これから説明する内容は、かなり簡単なものになっています。もっと詳しい話は、みんなの学年が上がるごとに、少しずつ習う事になりますからね」

と、話を続けます。

子供たちの中には、難しい話が苦手な子、逆に根掘り葉掘り聞きたがる子など、様々なタイプが存在します。メリドルの前置きは、ある意味、彼らの機先を制した形で行われました。これも話を円滑に進めるための、一つのテクニックなんです。

「さて、では神々の恩賜の意味が分かったところで、説明に入ります」

メリドルの言葉に、子供たちが少し緊張します。

「昔々、ヴォルノースには神様が何人もいたと言われています。ただ人々の前には余り姿を現さず、世界の様々なところでヴォルオースの民を見守っていたんですね」

彼の美声が、本題への口火を切りました。

「そしてこの頃はまだ、神様以外、誰も魔法を使えなかったんです」

”え~!”

メリドルの放ったジャブに、子供たちが再びざわつきます。

それは、そうでしょう。現在、魔法というのは非常に身近な存在で、生活とは切っても切れない関係なのですからね。

そしてメリドルは、更に続けます。

「あぁ。今言った”誰も”というのは、ヴォルノースの森の住人だけではなくて、外の世界を含む全ての人々の事ですから、間違えないようにね」

先ほどのジャブに、未だざわつきが収まらない子供たちですが、更に刺激的なワンツーパンチが彼らにもたらされました。

子供たちが、というよりも、現在、ヴォルノースの森に住んでいる人々は、誰も森の外の世界を知りません。森の周りは非常に険しいカクリン山脈帯が、城壁のように森を囲んでいますし、その外側には忘却の草原が存在します。
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