ヴォルノースの森の なんてことない毎日 《第二部》 (オムニバス短編集)

藻ノかたり

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ニールの目ざめ (22) 神々の恩賜 その5

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「残った神様たちの居場所が、今のヴォルノースの森だったというわけですか」

ニールが、今度は呟くように言いました。

「その通り。ほんと、冴えてるね」

メリドルとしては、自分の見せ場を持って行かれた形になりましたが、残念というよりも、ニールの聡明さに感心する気持ちの方が勝ります。

皆の羨望の目が、ニールに注がれました。ニールは気恥ずかしさと共に、ちょっと言い過ぎたかなと後悔します。と同時に、ある疑問が彼の頭に浮かびました。

”待てよ。今までの話は、神様の間の話だろう? それを何で、神様じゃない人たち、つまりボクたちのご先祖様が知ってるんだろうか……”

もっともな不審です。ニールはそれを問いただしたい衝動にかられましたが、さすがに続けて発言するのはやめました。普段からホランショが、ニールに対抗心を燃やしている事は知っていましたしね。

「それでヴォルノースの森に来た神様たちは、どうなったんですか」

今度は、好奇心がはち切れんばかりになったマリアが質問します。

「そうですね。残った神、七人ばかりいたのですが、彼らは現在のヴォルノースの森や、内海のあちこちに住まいを見つけました。

その名残は、今でも観光スポットとして存在します」

メリドルは次々と、いくつかの場所をあげました。知っている名前が出てくるたびに、子供たちからは”おーっ”という声が上がります。

「あれっ。でも、おかしいぞ。今、神様なんて、いないじゃん」

誰かが、素朴な疑問を口にしました。

「そうですね。その通り。実は、ここからが”神々の恩賜”最大の山場なんです」

意図せずとはいえ、生徒に第二のクライマックスのスターターピストルを撃たれたメリドルが、ペースを取り戻そうと意気込みます。

「神々の争いが終り、世界に平穏が訪れ、やがて人々にもあちこちと旅行をする余裕が生まれてきます。そうする内に、自然と”とある地方の森に神様がいる”という噂も広がっていったのです。

こうなると、どんな事態になると思いますか?」

メリドルが、ニヤリとしながら生徒たちを見回しました。

「神様目当てに、大勢の人達が押しかけると思います」

ホランショが、すかさず答えます。ニールになんて、負けていられません。

「そうですね。特に他の世界へ去った神様は、人々とは余り交わらなかったのですが、ヴォルノースの森に残った神様の殆どは、人懐っこく、普段から多くの民と交わり、歌い、語り合いました。

いま私たちが神様の事情を良く知っているのも、この時、神様たちから話を聞いたからなんですね」

先ほどのニールの疑問は、これで解決です。彼は誰はばかる事なく、その場で深くうなずきました。

そしてメリドルは、大きく息を吸い込み、本当のクライマックスへ向けて始動します。

「みなさん、いいですか。ここからがこの話の肝心なところですから、聞き逃さないで下さいね。

ドッジ、そろそろ眠くなってきたかも知れないけれど、しっかり聞いておくように」

「ね、眠ったりしないよ、先生!」

本当に少し眠くなりかけていたガキ大将が、図星を指されてドギマギします。緊張した場面にリラックスを促すような笑い声が立ち、彼と同じく睡魔に誘惑されていた何人かの生徒たちも、シャッキリと背筋を伸ばしました。

それを見て取ったメリドルは、

「でね。最初の内は、森の民たちも観光客相手に良い商売が出来たので暮らしは潤いましたが、やがて外の者たちから不満が出始めたのです。

”何故この森だけが、神様を独占するのか?”

そんな不満です」

と、話を先に進めます。

なるほど、それはそうだろうなぁ。

ニールは、思いました。

これまで多くの神様たちは人々と余り親しく交わらなかったのに、突然、一地方の民たちと懇意にし始めたのですから、嫉妬や不公平感が生まれても仕方ありません。それだけ、ヴォルノースに残った神様たちはフレンドリーだったのです。
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