ヴォルノースの森の なんてことない毎日 《第二部》 (オムニバス短編集)

藻ノかたり

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ニールの目ざめ (25) 神々の恩賜 その8

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「神様と余りに近くなった人々は、それぞれ贔屓の神様を担ぎ上げて、争いを始めるようになりました。”自分たちこそが、この森で一番偉いのだ”と……。森の民は七つの勢力に分かれ、いがみ合いました」

メリドルが、子供たちの顔を確かめます。ニールやマリアはもちろんの事、ドッジとその悪友たちでさえ、その表情は、講釈師の発言を只の一つも聞き逃すまいと真剣そのものでした。

「最初のうち、神様たちは民を諫めましたが、既に”友達感覚”になっていた神の言葉に耳を傾ける者は、殆どいなくなっていました」

メリドルは一呼吸おき、最後にして最大のクライマックスの幕をあげます。

「大いに嘆いた神様たちは、内海の中心にある島、今の”真んなか島”で、長い長い会議をしました。そして、ようやく結論に到ります。

神様たちは不安げな様子の民を前にして、とても悲しい決意を彼らに伝えました」

生徒の視線を一身に受けたメリドルが、少しだけ語気を強めます。

「神様たちは、言いました。

”やはり先の神々と一緒に、我々も他の世界へ行くべきだった。残った事が間違いだったのだ。我々は今から、別の世界へ旅立ち、二度と戻る事はない”

神々の言葉を聞き、人々は自らの愚かさを、ひしひしと感じました。

そして神様たちに懺悔をし、思いなおすよう懇願しましたが、神様たちの決意は変わりません。

たとえ一時的に改心したとしても、長い年月の内には、再び同じ事が起こると考えたからです」

「神様たちは、本当に森の人たちを見捨てて、どこかへ行ってしまったんですか?」

この前の騒ぎでは、大活躍をしたククドゥルが、悲痛な面持ちで尋ねました。

「えぇ、神様たちは去ってしまいました。

でも、彼らはこれまでの友情の証として、素敵な置き土産を残していったのです。

それが……」

「魔法!」

ニールとマリア、そしてなんとドッジが揃って声をあげます。

結果として、三人はこの授業最大の見せ場をメリドルから”かっさらって”しまった事になりますが、彼の表情は驚きと共に、とても満足げでした。

話の成り行きから、三人が自ら考え、答えを導き出したわけですからね。ある意味、教師冥利に尽きる結果となったのです。

「三人とも、よくわかったね。そうなんだ。神様は”魔法”を、森の人達に残していったんだよ」

彼らの答えを補完するように、メリドルが言いました。

「置き土産って、それはどういう事でしょうか」

今一つ理解の出来ていないホランショが、食ってかかるように質問します。三人に、それもドッジにすら先を越された事態を受けて、よほど承服できなかったのでしょう。

「それはね。こういう事なんだ。

森が閉ざされてしまった経緯は、既に話したね。そんな環境でも人々が暮らしに困らなかったのは、神様たちの魔法があったおかげなんだよ。

だから彼らが去った後、普通なら森の民は暮らしに困る状況に陥る。それを神様たちは心配したんだね」

メリドルは、穏やかな声で説明していきました。

「もちろん、カクリン山脈帯を元の姿に戻せば、森は前の通り他の土地とつながるわけだけど、七人の内の、風の神様が世界中を飛び回って調べたところでは、森へ攻め込んだ国々は、完全に諦めたわけではなさそうだとわかったんだ。

だから、もし元のようにしてしまったら、森は一ぺんに攻め滅ぼされてしまうだろう。前のいきさつを考えれば”神様たちは、もういない”と言ったところで、信じてはもらえないだろうからね」

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