ヴォルノースの森の なんてことない毎日 《第二部》 (オムニバス短編集)

藻ノかたり

文字の大きさ
29 / 102

ニールの目ざめ (28) ニールの異変

しおりを挟む
さて、ここで皆さん、ちょっと疑問に思っている事はありませんか?

”学校で神様がどうこうなんて話を、現実の延長として生徒に話すなんて”

とかね。

ヴォルノースの森というのは、地方もある程度はそうですが、特に東西南北の森の中心にある「決め事の都市」ともなれば、かなり近代的な大都市です。そんな都市が統べる世界で、単に宗教学の一片としてならばともかく、神様云々という話を大々的に学校で教えるなんて普通なら問題でしょう。

でも、それには理由があるのです。

ヴォルノースの森では魔法が普通の事として存在しますが、実は魔法自体、未だ科学では殆ど解明できていなのですね。そして必要は発明の母とは良く言ったもので、そもそも全ての人が魔法を使える関係上、科学的な思考自体が他の分野と比べて余り発展していないのでした。

つまりは”魔法で大抵の事が解決するのだから、別にそれでいいじゃん”となってしまうのです。

よって魔法に関する事柄も、科学的に解明しようというアプローチよりは、考古学上、信頼のおける古文書に頼る傾向が強いのですね。

実際、ある特定の時代から前には神々に関する魔法の他は、魔法の記述が殆ど存在せず「ある時点から、急に全ての人々が魔法を使えるようになった」事は、間違いないようですし……。

はなはだイビツな形に見えますが、ヴォルノースの科学と魔法の関係は、そのようなものなのでした。

さて、一方こちらは校門をくぐったばかりのニール、マリア、ドッジの仲良し三人組。

「神々の恩賜の話、良かったわよね。私、今日の夜、ちゃんと眠れるか心配だわ」

授業の余韻を色濃く残しているマリアが、興奮気味に言いました。

「なんで?」

ドッジが、不思議そうに尋ねます。

「はぁ? あんた、あれだけの話を聞いて、何も感じないの? ベッドで目をつぶったら、その頃の情景とか色々浮かんで、ちゃんとテンションが抑えられるかどうか、心配って事よ」

マリアが、呆れたように言い返しました。

「俺は、ぐっすり眠れると思うな。まぁ、夜更かしして、明日、寝坊しないようにな、ハハハッ」

遅刻の常連が、あっけらかんと笑います。

「なんですって!?」

マリアの顔が、一気に紅潮しました

ニールは、いつも通りの二人の掛け合いを聞きながら、

魔法が封じ込まれた光の粒かぁ……。さっきの話じゃ、赤ん坊の頃に既に体に入っているらしいけど、ちゃんとボクの中にもあるのかなぁ。

彼は自分の体を見下ろしながら、そう思います。本当は、光の粒が見える魔法を使える人に、今すぐにでも確認してほしい心持ちでした。

あっ……。

ニールが心の中で、声をあげます。色々な事を考えている内に、例の公園のすぐ前まで来てしまっていたのです。朝は遠回りをしてきたので、変な感覚に襲われないで済みましたが、再び公園を通ったら……。

ドッジやマリアと一緒に帰ればこうなる事は分かっていたものの、彼は対策を考えていませんでした。もっとも彼らに”遠回りして帰ろう”なんて言う、都合のよい口実なんて、あるわけがないんですけどね。

なるようになれ。

ニールは意を決して、公園の入り口を通ります。歩くスピードは他の二人と合わせながらも、彼はおっかなびっくりと園内を進みました。

……大丈夫みたいだ……。

何事もなく、公園の中ほどまで来たニールが一安心します。

「ニール、なんだい。なんかあるのか?」

昨日の事もあってか、友人のおかしな態度に気のついたドッジが声を掛けました。マリアもその言葉に、ニールの方を振り返ります。

「え? いや、特に……」

ニールが、そう言いかけた時でした。

突然、襲ってきたのです。あの感覚が!

ニールは思わず周りを見回します。今日は昨日より時間が遅い事もあり、彼らに比べ、かなり小さい子供を連れた大人たちもまばらに見えました。ですが、彼らが原因でないのはわかっています。昨日は、誰もいないのに、この変な感覚に襲われたのですからね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

「強くてニューゲーム」で異世界無限レベリング ~美少女勇者(3,077歳)、王子様に溺愛されながらレベリングし続けて魔王討伐を目指します!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
 作家志望くずれの孫請けゲームプログラマ喪女26歳。デスマーチ明けの昼下がり、道路に飛び出した子供をかばってトラックに轢かれ、異世界転生することになった。  課せられた使命は魔王討伐!? 女神様から与えられたチートは、赤ちゃんから何度でもやり直せる「強くてニューゲーム!?」  強敵・災害・謀略・謀殺なんのその! 勝つまでレベリングすれば必ず勝つ!  やり直し系女勇者の長い永い戦いが、今始まる!!  本作の数千年後のお話、『アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~』を連載中です!!  何卒御覧下さいませ!!

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

処理中です...