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ニールの目ざめ (29) 木陰にて
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「ニール、どうしたの?」
様子がおかしい友人に、マリアも急に不安を覚えます。
「あぁ、いや、ほんとに……」
その時、いきなり嫌な感覚が増しました。しかもそれは。頭痛という具体的な痛みとなって彼を襲います。
ニールはとてもその場に立っていられなくなり、遂には片膝をついてしまいました。
「ニール!」
ドッジとマリアが、同時に声を挙げます。
「や……、やめて!」
ニールが、絞る出すように小さく叫びました。
彼より大きく、ガッチリとした体形のドッジが、同じく片膝をついて友人の肩を両手でつかみます。
「どうした? 大丈夫か?」
すると、どうでしょう。親友の声が耳に届いた瞬間、頭が割れそうだった痛みは、忽然と消え去りました!
「ニール!」
ドッジが再び、彼の名を呼びます。
ニールは片膝をついたまま、辺りを見回しました。しかしそこでは、何一つ変わった事態は起こっておらず、周りの親子たちも、この変事にはまだ気がついていないようです。
「だ、大丈夫。もう大丈夫」
そう答えるニールの額には、あぶら汗がにじんでおりました。
「ドッジ、あっちの木の下に!」
マリアが、砂場の少し奥に生えている木を指さします。
「おう!」
普段なら”命令すんな”と反発すること必至のガキ大将も、マリアに大人しく従いました。彼女の指示が正しいと、即座に判断したからです。そういう所は、お互いに認め合っているドッジとマリアでした。
もしかしたらこの二人、典型的な”喧嘩するほど仲がいい”なのかも知れませんね。
ドッジはニールに肩を貸し、マリアはニールの腕を抱えて、十数メートル先の目標を目指して歩き出します。そしてとても大きな樹木の根元に、彼をゆっくりと座らせました。ニールは半ば放心したように、その幹に背中を預けます。
「誰かに、助けを……」
マリアが周りを見回します。辺りには数人の大人がいますので、彼女はその誰かに、助力を請おうとしました。
「マリア、大丈夫。本当に、もう大丈夫だよ」
立ち上がろうとするマリアの腕を、ニールがつかみます。
「おい、本当に大丈夫なのか。お前、昨日も何かおかしかったろう?」
ドッジが、ニールの目を見据えました。ガキ大将の瞳に、普段は落ち着いて慌てふためいたりはしない、しっかり者のニールが映ります。であるからこそ、彼の不調はドッジにとって、予期せぬ事態となりました。
「あぁ、問題ないよ」
そう言うニールの言葉に、ウソはありませんでした。先ほどまでは、あれほど感じた激痛も、今はそれが夢であったかのように霧散しています。
ニールはスックと立ち上がって、ピョンピョンと飛び跳ねてみせました。つい何分か前までは息も絶え絶えだった彼の変貌ぶりに、ドッジとマリアは口をポカンとするしかありません。
「何だったんだ、今のは?」
あぐらをかいたドッジが、少し呆れた口調で尋ねます。
「う~ん、ご免。多分、片頭痛かなんかかなぁ……」
ニールは、咄嗟にウソをつきました。
もしここで「変な感覚」の話を詳しくしたら、それは彼らを不用意に心配させるだけになってしまいます。なぜならその正体を、ニール本人ですら全く説明できないのですからね。
「本当? まぁ、片頭痛は寝不足でも起こるって言うから、そうかも知れないけど」
マリアが、心配しながらも博識な所を披露しました。
「寝不足で頭痛? ほんとに、そんな事あるんかいな」
ドッジが、疑いの眼差しでマリアを見ます。
「あるんです! まぁ、暇さえあれば寝ているあんたには、一生縁のない病気でしょうけどね」
自分の知識を否定されたかのように感じたマリアが、ツンと口をとがらせ毒づきました。
様子がおかしい友人に、マリアも急に不安を覚えます。
「あぁ、いや、ほんとに……」
その時、いきなり嫌な感覚が増しました。しかもそれは。頭痛という具体的な痛みとなって彼を襲います。
ニールはとてもその場に立っていられなくなり、遂には片膝をついてしまいました。
「ニール!」
ドッジとマリアが、同時に声を挙げます。
「や……、やめて!」
ニールが、絞る出すように小さく叫びました。
彼より大きく、ガッチリとした体形のドッジが、同じく片膝をついて友人の肩を両手でつかみます。
「どうした? 大丈夫か?」
すると、どうでしょう。親友の声が耳に届いた瞬間、頭が割れそうだった痛みは、忽然と消え去りました!
「ニール!」
ドッジが再び、彼の名を呼びます。
ニールは片膝をついたまま、辺りを見回しました。しかしそこでは、何一つ変わった事態は起こっておらず、周りの親子たちも、この変事にはまだ気がついていないようです。
「だ、大丈夫。もう大丈夫」
そう答えるニールの額には、あぶら汗がにじんでおりました。
「ドッジ、あっちの木の下に!」
マリアが、砂場の少し奥に生えている木を指さします。
「おう!」
普段なら”命令すんな”と反発すること必至のガキ大将も、マリアに大人しく従いました。彼女の指示が正しいと、即座に判断したからです。そういう所は、お互いに認め合っているドッジとマリアでした。
もしかしたらこの二人、典型的な”喧嘩するほど仲がいい”なのかも知れませんね。
ドッジはニールに肩を貸し、マリアはニールの腕を抱えて、十数メートル先の目標を目指して歩き出します。そしてとても大きな樹木の根元に、彼をゆっくりと座らせました。ニールは半ば放心したように、その幹に背中を預けます。
「誰かに、助けを……」
マリアが周りを見回します。辺りには数人の大人がいますので、彼女はその誰かに、助力を請おうとしました。
「マリア、大丈夫。本当に、もう大丈夫だよ」
立ち上がろうとするマリアの腕を、ニールがつかみます。
「おい、本当に大丈夫なのか。お前、昨日も何かおかしかったろう?」
ドッジが、ニールの目を見据えました。ガキ大将の瞳に、普段は落ち着いて慌てふためいたりはしない、しっかり者のニールが映ります。であるからこそ、彼の不調はドッジにとって、予期せぬ事態となりました。
「あぁ、問題ないよ」
そう言うニールの言葉に、ウソはありませんでした。先ほどまでは、あれほど感じた激痛も、今はそれが夢であったかのように霧散しています。
ニールはスックと立ち上がって、ピョンピョンと飛び跳ねてみせました。つい何分か前までは息も絶え絶えだった彼の変貌ぶりに、ドッジとマリアは口をポカンとするしかありません。
「何だったんだ、今のは?」
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「う~ん、ご免。多分、片頭痛かなんかかなぁ……」
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もしここで「変な感覚」の話を詳しくしたら、それは彼らを不用意に心配させるだけになってしまいます。なぜならその正体を、ニール本人ですら全く説明できないのですからね。
「本当? まぁ、片頭痛は寝不足でも起こるって言うから、そうかも知れないけど」
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「寝不足で頭痛? ほんとに、そんな事あるんかいな」
ドッジが、疑いの眼差しでマリアを見ます。
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