ヴォルノースの森の なんてことない毎日 《第二部》 (オムニバス短編集)

藻ノかたり

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ニールの目ざめ (45) ママの驚き

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「ただいま」

それほど遅い時間ではないものの、ママに何か聞かれるのではないかと、ニールはドキドキします。でもママは、これといって問いただす事もなく、遅めのおやつを出してくれました。ニールはそのクッキーを、少し後ろめたい気持ちで頬張ります。

そしてパパはと言いますと、夕方の早い時刻には帰宅して、ママのご機嫌取りにいそしみました。

もしボクが、ゼペックさんとあんな話をしたとわかったら、パパはどんな顔をするだろう。

他の人には喋らないと約束はしたものの、ニールは心の中で想像して楽しみます。

さて、パパとママに隠しごとをして、少しフワフワとした緊張感を満喫しているニールですが、夜も更けてきたのでベッドにそそくさと入りました。

今日は、グッスリ眠れそうだ。

彼は心の中で呟き、小さい明かりの灯った天井を見つめます。そしてその明かりが少しずつボンヤリして来たかと思うと、予想通り、ニールは深い眠りの淵へと落ちて行きました。

コケコッコー。

元気なニワトリが、ひときわ高く鳴き上げます。

運命の日。今日は朝から快晴でした。

トントントン。

鼻歌交じりのママが、キッチンで包丁を奏でていると、

「おはよう」

と、ニールが二階から降りてきます。

ママは、少し驚きました。

このところ寝坊の多い息子が、こんなにも早い時間に起き出してきた事もそうですが、”おはよう”の声の響きに、どこか今までとは違うものを感じたからです。

思えば昨日、帰って来た時から何か変だったわよね。まぁ、いい意味でだけど……。

ママは、昨夕の事を思い出します。

子供は日々変化する……。とは言うものの、今度の変化はいつもと違うのではないかとママは直感しました。恐るべきは、母親の洞察力……と言ったところでしょうか。

もっとも、彼女が忌み嫌う、あの”ガラクタ屋”で、ニールが大きく成長したと知ったら、どんな顔をするのか見ものですけどね。

「おぉ、ニール早いな」

続いてパパも、寝室から出てきます。ただ打って変わって、今日は彼の方が寝ぼけまなこをこすっていました。昨日は、エンシャント・ケイブに行けなかったものですから”ひょっとして、最新の掘り出し物があったんじゃないか”なんて考えている内に、気がついたら丑三つ時になっていたんですね。

動作がノッソリとしたパパを尻目に、ニールはテキパキと朝食を済ませます。そして一度自分の部屋へ戻った後、学校の支度を整えたニールが、再び食堂へと戻って来ました。

そして出掛けぎわ、

「ねぇ、パパ」

と、やっと朝食を終えたパパに、少し戸惑いながら声を掛けます。

「……ん、なんだい?」

未だに頭のハッキリしていないパパが、さもダルそうに応じました。

「ボク、パパの魔法、とっても素敵だと思うよ」

「え……? あぁ……ありがとう」

パパは、何が起こったのか理解できないまま、呆気に取られて適当な返事をします。恐るべきは、父親の鈍感さ……と言ったところでしょうか。

しかし何より驚いたのは、むしろママの方でした。洗っていたお皿を、思わずシンクの中へ取り落としてしまいます。危なくお気に入りの品を、割ってしまうところでした。

というのも、神の恩賜の話があったとはいえ、あれほどピリピリしていた状況だったにも関わらず、突然ニールの方から核心に触れるような発言があったわけです。ママが仰天したのも、無理はありません。

彼女の中で、先ほどの予感が確信に変わりました。でも、我が子の成長を嬉しく思う反面、その理由が全く分からない事に戸惑いも感じます。

「じゃぁ、行ってきまーす」

自分が一皮むけた事を少しでもアピールするため、勇気を持って発言したニールでしたが、その後、少し気恥ずかしくなってしまい、急いで家を後にします。

でもその興奮が徐々に収まって来ると、彼の中に、何か誇らしげな感覚が芽生えてきました。

もう、大丈夫。たとえどんな魔法を授かろうと、ボクはボクだもの。

ニールは、そう自分の心に繰り返し言いながら、学校への道を進んでいきます。

一つの山を乗り超えたニール。でも次なる山が、すぐに彼の眼前へと立ちはだかりました。

例の公園です。

さて、どうしたものか。

ニールは公園の入り口に、一人たたずみました。
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