ヴォルノースの森の なんてことない毎日 《第二部》 (オムニバス短編集)

藻ノかたり

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ニールの目ざめ (56) 金切り声

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「ちょっと、おじさんたち。いつまでニールを、とっ捕まえてるんだよ! こいつがいなけりゃどうなってたか、もうわかってるだろう!」

きかん坊の本領発揮とばかりに、ドッジが目の前の大人たちに物申します。

「あ、あぁ……」

頼りない返答をする二人の男性。理屈ではわかっているものの、未だに事態を掌握しきれておりません。

「だから! そいつの腕を離して下さいよ。俺とこいつは、ベリドント小学校の二年十二組、ドッジとニール。

この期に及んで、逃げも隠れもしねぇ!」

威勢のいい啖呵を切るドッジを見て、ニールはちょっと格好いいなと思いました。

「そうですよ。もっと冷静に考えて下さい。あ、私は同じくマリア。私も、逃げも隠れも致しません」

ようやっと駆けつけたマリアが、ドッジの後押しをするように続けて抗議をします。普段ならあり得ないタッグに、今度は面白いなと思うニールでした。

さて、二人の男性。小学二年生の女の子に諭され、やっとニールの戒めを解きました。

「立てるか、ニール」

腰をついている友人に、ドッジが右手を差し伸べます。

ニールが親友とガッチリ握手をする形になると、ドッジはニールをそのまま引っ張り上げて立たせました。

その時の、力強かった事! 

ニールはとてもありがたく、頼りがいのある友人がいる幸せに感謝しました。

「ミリナにファリナ。あなたたちは、引き上げた方がいいわ」

マリアが、ニールの両肩に腰掛けている二人の精霊に、耳打ちをします。

「どうしてだよ」

それを聞いたドッジが”二人の主人は俺だ”と言わんばかりに、口をはさみました。

「周りを見て」

マリアが、小声で話します。

ニールとドッジが辺りを伺うと、先ほどより人の数がだいぶ増えておりました。巨木が倒れた轟音を聞きつけて、周りの住人たちがチラホラと表に出てきているのです。

「多分、しばらくここは、相当混乱すると思う。そんな所に街じゃ珍しいあなたたちがいたら、別の意味で騒ぎになっちゃうかも知れない」

なるほど。近所に住んでいれば、誰でも知っている巨木がいきなり倒れたのです。救出作戦の件がなかったとしても、早晩、野次馬やら警察やら消防やらが駆けつけて来るのは、火を見るより明らかでした。

「そうね。わかったわ」
「そうね。わかったわ」

ミリナとファリナは、マリアの意見に納得します。

「ミリナ、ファリナ、本当にありがとう。もし君たちがいなかったら、動いたのがボクたちだけだったら、どうなっていたかわからない」

ニールは、懸命な協力をしてくれた二人にお礼を言います。

一方ドッジはといえば、自分の魔法で呼び出した二人なのに、自分をさしおいて色々と話が進んでいる事を、ちょっと不満に思っていました。

あ、そうそう。ドッジの魔法は二人を呼び出す事は出来ても、戻す事は出来ないんですね。一度召喚したら、ドッジの魔力が切れるか、彼女たちが自主的に退場しなければ元には戻りません。

「うん。二人とも良くやった」

ドッジが、召喚主の面目を躍如しようと二人をねぎらいます。

「ふふっ。ドッジ、素直でよろしい」
「ふふっ。ドッジ、素直でよろしい」

二人が笑うと、ドッジは、

「お前ら、一言多いんだよ」

と、少し照れくさそうに言いました。

精霊たちは光の球になったかと思うと、現れた時とは逆の手順で、小さな光の粒に戻り消えて行きました。

二人を見送り、取りあえず一段落したその時です。

「ちょっと、あなたたち! どういうことなの!?」

聞き覚えのある金切り声が、ホッとしかけた空気を切り裂きます。
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