ヴォルノースの森の なんてことない毎日 《第二部》 (オムニバス短編集)

藻ノかたり

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ニールの目ざめ (64) 真実 その1

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なぜ音楽室なのかって?

それは、音楽室には防音の魔法を使える装置が設置されていて、中からの音はもちろん、外からの音も遮断できるのです。これなら万が一にでも、中での話を盗み聞きされる恐れはないですし、何より階下でのテンヤワンヤの騒ぎも全く気になりません。

教室に入って、内側から鍵をかけたメリドル。その上で、防音の魔法を有効にするスイッチを作動させました。これまでドアを閉めても聞こえていた階下の喧騒が、スーッと消え失せます。

一方、教室内は、メリドルの指示で、机と椅子の配置が変更されました。少しずつ離れて、皆が円のように向かい合う形となっています。ちなみにミリナとファリナは、ドッジの席の、机の前の端にチョコンと腰掛けました。

「さぁ、準備は整った。じゃぁ、ニール。一体何があったのか、話してくれ」

メリドルが、努めて穏やかに尋ねます。

ニールは、困りました。

もちろん、全てを話すつもりでここへ来たわけですが、いったい何から話して良いやらわかりません。そもそも彼自身、本当は自分の身に何が起こったのか、ハッキリと理解しているわけではないのです。

「ニール。まだ、混乱しているようだね。じゃぁ、わかりやすいところから行こう。

君は砂場の子供たちを、そこから出来るだけ遠ざけようとした。そして結果として、そのあと巨木が砂場へ倒れて来た。

そうだね?」

喋ろうとはしているものの、口ごもるニールを見て、メリドルが助け舟を出しました。

「そう、そう」

ドッジが、脇から答えます。

「ちょっと、あんたが答えてどうするのよ」

マリアが、即座にツッコミを入れました。

「あっ、すまん」

ガキ大将が、頭をかきます。ミリナとファリナも振り向いて”何やってんの?”とでも言いたげな顔をしました。

「どうなの? ニール」

今度はポッテルが、重ねて尋ねます。でもそれは詰問するような言い方では決してなく、保健室を利用する子供の具合の悪いところを聞き出すような、とても優しい口調でした。

「は、はい。そうです」

保険医の言葉に、少し安心感を得たニールの緊張が、少しずつほぐれていきます。

「つまり、君にはあの巨木が倒れると分かっていた。だから小さな子供たちを、助けなければいけないと考えたんだね?」

メリドルが真相に迫ろうと、話を進めました。

「はい」

話の筋道をメリドルに整えてもらったニールは、彼の期待に応えようと自らも頭の中を整理します。

「では、いきなりで済まないが、核心の部分を聞くよ」

メリドルの言葉の意味は、その場にいる全員がすぐに理解しました。

「君は”どうして”木が倒れると分かったんだい?」

メリドルは自らが宣言した通り、正に核心中の核心の部分を問い正します。これは公園にいたあの中年女性ですら、ニールたちにぶつけた疑問でした。

ドッジとマリアも、ニールを信じて行動したものの、やはりこの部分が一番気になるところです。

「教えてもらったからです」

キッパリと宣言をする彼の答えに、皆が少なからず驚きました。

皆はニールが大木が倒れる事を”予知”していたと考えていたからです。つまり、彼は未来を見通す魔法を得たのだと。

「教えてもらった?」

メリドルが、思わずニールの言葉を繰り返しました。

「いや、ちょっと待てニール。教えてもらったって言うけどさ。俺たち公園に入る前からずっと一緒にいただろう? 誰もお前に、何か教えた奴なんていなかったぞ?」

訳の分からなくなったドッジが、さっきのマリアの注意も忘れて問いただします。
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