ヴォルノースの森の なんてことない毎日 《第二部》 (オムニバス短編集)

藻ノかたり

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ニールの目ざめ (63) 音楽室へ

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メリドルは少しの間、腕組みをして考えていましたが、事情を知る友人たちと一緒にいた方が、ニールも話しやすいのではないかと思い、彼らの同行を許しました。

「あ、それから出来れば、ミリナとファリナにも……」

ニールが、遠慮がちに願い出ます。

「ミリナ、ファリナ? それは誰?」

聞いた事がない名前に、メリドルがキョトンとしました(魔法局から学校に知らされている情報には、精霊の名前までは記されていませんでしたので)。

「ドッジが呼び出せる精霊です」

マリアが、ニールとドッジに先んじて報告します。

「お、おい、余計な事言うなよ」

ドッジが、途端に取り乱しました。あの”可愛らしい魔法”は、絶対に学校では使いたくないのです。誰が見てるか、わかりませんからね。校内に知れ渡っては、ガキ大将のコケンに関わります。

「ドッジ、今回の事は、彼女たちにも大いに協力してもらったんだから、ボクの魔法……、多分魔法……の話を聞く権利はあると思うんだ」

ニールが、熱弁を振るいました。

「まぁ、ここまで来たら、何人でも大して変わらんか」

ニールの熱意に負けたのか、メリドルはこれも受け入れます。

「あ、じゃぁ精霊たちを、今ここで呼び出してちょうだいな」

後から、ポッテルが口をはさみました。

「えぇ~? ここでですかぁ……」

ドッジが顔をしかめて、ボソッと漏らします。

「そうだね。ここで精霊たちにも事情を話してから、話を聞く音楽室の方へ行くとしよう。

じゃぁ、ドッジ。二人を出して」

メリドルが、有無を言わさぬ低音ボイスで、ドッジに命じます。

教師二人の下知には、流石のガキ大将も従わざるを得ません。ドッジは、ため息をつきながら、渋々と呪文を唱えました。

その様子をポッテルは、まるで幼い少女のように頬を紅潮させながら見守ります。

実はポッテル先生、無類の”可愛いもの好き”なのです。自宅には、そのてのぬいぐるみやらフィギュアやら、もう所せましとひしめいているんですね。

先ほどもお話したように、生徒がどんな魔法を使えるかを教師は知っておりますが、まさか自分の趣味のため、ドッジに魔法を使わせるわけにもいきません。ポッテルは、この千載一遇のチャンスを神に感謝しました。

「はじめまして、私はミリナ」

「はじめまして、私はファリナ」

現れた精霊二人が、初対面のメリドルとポッテルに挨拶をします。メリドルはいつも通りのダンディな挨拶を返しましたが、ポッテルの挨拶には、抑えても抑えきれないほどの悦びがにじみ出ておりました。それを眺めるドッジが、非常に不満げな顔をしたのは言うまでもありません。

さて、教師一人、保険医一人、生徒三人に精霊が二人。そんな奇妙な行列が、音楽室へと向かい行進します。一方、廊下ではメリドルの報告を受けた先生方が、慌ただしく動いておりました。

公園は多くの生徒たちが、通学路の一部として使っています。明日までに巨木の撤去は無理でしょうから、危険がないよう別のルートで登校するように、皆で手分けをして生徒のお家へ連絡します。

といっても、ヴォルノースの森には電話がありません。そこで足の速い魔法を使える先生は直接生徒の家を訪ねたり、ククドゥルのように声を飛ばせる先生は、その能力を駆使したり、あと親が商売を営んでいる生徒の家には、魔法電信装置(ファックスのような魔法の道具)が設置されている場合もありますので、学校の同じ装置を使って連絡したりと、突然の大きな出来事に皆キリキリ舞いをしておりました。

そんな教師たちを尻目に、奇妙な行列は二階の音楽室へと辿り着きます。
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