ヴォルノースの森の なんてことない毎日 《第二部》 (オムニバス短編集)

藻ノかたり

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ニールの目ざめ (66) メリドルの憂鬱

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それは”レガシーマジック”と呼ばれ、神々が行使していたのと同じレベルの魔法です。中には、非常に危険な魔法もあります。但し、そういったものはレガシーマジックの中でも更に稀であり、殆ど伝説上の話となっていました。

それに比べてニールが授かった「読心樹の魔法」は、それ自体にこれといった危険性はありませんが、ヴォルノースの森の多くの地域が樹木で構成されている事を考えれば、これは大変貴重な魔法と言えるでしょう。

「メリドル先生、これってもしかしたら”読心樹の魔法”なんじゃ!」

勉強熱心で博識なマリアが、興奮した声をあげました。それがどれだけ貴重な魔法かは知っていましたし、おまけにそれを親友のニールが得たとなれば、彼女の高揚した気持も理解できます。

「い、いや。それは、魔法管理局の認定を待たないと……」

メリドルは、言葉を濁しました。彼がチラリと隣を見ると、ポッテルも彼と同じ心もちである事がうかがえます。

というのは、レガシーマジックの使い手は、良くも悪くも大変注目されます。その魔法で素晴らしい人生を送れる者もいれば、逆に災難へ巻き込まれる者もいるのです。

レガシーマジックの持ち主は、現在ヴォルノースの森では三十人程度が登録されていました。皆、それぞれ別の種類の魔法でありますが、読心樹の魔法の持ち主はおりません。百年近く前の記録に、一人そのような者がいたとあるだけでした。

「おい、マリア。”ドクシンジュ”って何だ?」

ドッジが、キョトンとした顔で尋ねました。まぁこれが、普通の小学二年生の反応でしょうね。

「木……っていうか、植物全般と心を通じ合わせて、時には会話も出来る凄い魔法よ」

マリアの興奮は収まりません。

「ふーん……。でもよ、そんなのより、予知の魔法だったほうが、凄くなかったか?」

ドッジは、今一つピンと来ないようでした。

「バカね。全然違うわよ。なんといってもこっちは、レガシーマジックなんだから!」

マリアが、呆れたように言い返します。

確かに予知の魔法というと、卓越した魔法に聞こえますが、その魔法を得ている者は結構多いのです。まぁ”虫の予感”に、毛が生えた程度のものが多いのですけどね。

ただ、何かが起こる前に、それが吉事か凶事かを判断でき”自分が何をすべきか”が分かる者も中にはいます。しかしその感覚は直前にしか閃きませんし、具体的に何が起こるのかはわからないので、余り貴重な魔法とは言えないのでした。

「ふ、二人とも。今、メリドル先生が仰ったように、それは魔法管理局が認定してからの話なのよ。先走らないで」

勝手に話を進める二人を戒めるように、ポッテルが釘を刺します。

両先生は、真実が不確かな内に、彼らがこの話を周りに広めてしまうのではないかと、心配しているのですね。

レガシーマジックを得たなどという噂が広まれば、ニールは学校内ではもちろんの事、ヴォルオース中から注目を集めてしまいます。そうなれば、ニールや彼の家族の生活は大きく変わってしまうでしょう。

それは出来るだけ、避けねばなりません。

「ニール、話を先に進めよう。

君は、公園の巨木の声を聞いたと言った。つまりあの木自身が”自分は倒れる”と言ったという事かな」

メリドルは、はしゃぐマリアに睨みを効かせつつ、真相を明らかにしようとしています。

「……はい」

ニールが、少しだけ不安げな声で答えました。彼、読心樹の魔法の事は知らなかったものの、レガシーマジックについては知っておりました。他人事なら”凄い”で済む話ですが、我が身の事となると話は別です
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