ヴォルノースの森の なんてことない毎日 《第二部》 (オムニバス短編集)

藻ノかたり

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ニールの目ざめ (68) 目ざめ その2

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そうなのです。実は公園の主の言う通り、ニールを悩ませていた”変な感じ”は、巨木が話しかけているのを、そう受け取っていたわけなのですね。ただその時、ニールの魔法はまだ発現しかけたばかりなので、言葉ではなくノイズに聞こえていたというわけです。

「だけど、その内とても頭が痛くなって、それから後は、さっきまで何も感じなかったよ」

ニールが、積み上がっていた疑問をぶつけます。あぁ、問答を始めたという事は、どうやら、声の主を公園の巨木だと認めたようですね。これも読心樹の魔法の、なせる業なのでしょう。

”うむ、お前が反応してくれたのは良かったのじゃが、なかなか上手く伝わらない。そこでワシは、ある時とにかく大きな声で叫んでみたのじゃよ。

そうするとお前は、酷い頭痛になってしまった。ワシの声がお前を苦しめていると分かり、これはいかんと思って、話しかけるのをやめておったんじゃ”

なるほど。

老木の語りに、ニールは合点がいきました。

「じゃぁ、何で今はまた、大声で話しかけてきたの? ボク、頭が割れそうで、死んじゃうかも知れないと思ったよ。

あと……、なんでボクの名前を知っているの?」

ニールが、新たな疑問を投げかけます。

”そりゃぁ、知っているさ。お前が赤ん坊の頃から知っておる。よくお前は両親のセドリックやジェシカと、この公園に来てたじゃないか”

……あぁ、確かにそうなんだろうな。

公園の主は、ここに来る人たち、いや、公園が出来るずっと前からここにいて、ボクたちを見守っていてくれたんだ。

ニールは、妙に納得しました。

「それじゃぁ、また急に話しかけてきたのは?」

ニールが、話を本題に戻します。

”それについては、本当にすまないと思っておる。しかしな、事態は急を要するんじゃ。どうしても、伝えなければならない話がある”

公園の主の声が、一段低くなりました。

「急な話? いったい、何があったの?」

巨木が決して、意地悪をしてニールを苦しめていたわけではないと分かりましたが、小さな子供を悩ませてまで告げなければいけない事って、何なんでしょうか?

”ワシは、もうすぐ天に召される”

巨木が、落ち着いた声で言いました。

「天に召される? 死んじゃうって事?」

突然の告白に、ニールは驚きます。

先ほどの話の通り、公園の主は、この施設が出来る何百年も前から周辺地域を見守ってきた、ここに住む人達にとっては、先祖代々、親しんできた巨木です。

ニールにしたって、物心ついてから最初に見た一番大きなものと言えば、この木だったのです。他の子供たちにしても、きっと同じに違いありません。

その”あって当たり前”の、とても大切な木がもうすぐ死ぬのです。ニールが驚くのも無理はないでしょう。

二の句の告げないニールに、巨木は続けて話しかけます。

”あぁ、そうじゃ。ただな。死ぬのが悲しかったり、恐ろしかったりするわけじゃない。ワシは、もう十分に生きた。

恐ろしい嵐に見舞われて、倒れそうになった事だって一度や二度じゃない。じゃが無事に、この年まで生きる事が出来た。

それにワシの周りへ集まる人々や子供たちの楽しい笑い声に包まれて、とても幸せな生涯だったと思っておるよ”

巨木はどこか、懐かしそうに言いました。

”お前も知っておろうが、普通樹木は急に死ぬものじゃない。少しずつ朽ち果てていくものだ。だからそれまでに、人々は木の死を予感して切り倒す”

「うん。ボクも、切り倒される木を見た事があるよ」

ニールは巨木に、理解を示します。

”じゃがな、ワシはもうあと数分で、完全に死ぬんじゃよ”

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