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幽霊と宝の塔 (14) 問答
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魔法の灯りに照らされたブレスレットを、パーパスはしげしげと見つめました。
そして、
「ア、トラトゥーヤ、ハサン、コレサン……」
と、意味不明の言葉を発します。
でもアトリオには、どこか懐かしい響きがありました。
なんだろう……。いつかどこかで聞いたような……。
「あっ」
彼は驚きを、思わず口に出してしまいます。
それは他ならぬ、アトリオがつけているブレスレットに刻印された、象形文字の音読でした。刻まれている文字は古代の言葉で、幸運を呼ぶと言い伝えられる文言であり、彼の親友ホンドレックが自らの作であるブレスレットに刻み込んだものです。
アトリオは、古代文字などには全く興味がないので、読む事は出来ませんでしたが、ホンドレックが声に出して読み、内容を教えてくれた事を思い出しました。
でも、なんでそれをこの魔法使いが……。
「なぁ、幽霊の魔法使いさんよ。こちらが名乗ったんだから、そっちも身分を明かしてくれないかい?」
様々な謎を秘めた状況に、アトリオは相手の正体を確かめようとします。
「幽霊? 幽霊とな。そういえば、先ほどの勇ましい兵士もそんな事を言っておったような……。なるほど、おぬし、いや、おぬしたちには、ワシらがそう見えているわけか」
パーパスが、あご髭をさすりながら言いました。
「いや、名乗り遅れて申し訳ない。ワシはな、王宮で主席魔法使いを務めるパーパスという者じゃ」
「えっ?」
パーパスの素性と、自分たちをあたかも幽霊ではないと言いたげな、彼の主張を聞かされたアトリオが困惑します。しかしその一方で、彼は”しめた”とも思いました。
「魔法使いの爺さん、嘘をついちゃいけないよ。俺が下っ端の兵士だからって、馬鹿にしちゃいけない。
曲がりなりにも、俺は王宮から、ここへ遣わされて来た身だ。王宮の最高位魔法使いが誰かくらいは知っているし、遠目ながらその顔を見た事もある」
アトリオは、真実を語らぬ相手をやり込めようと話を続けます。
「俺の知っている主席魔法使いは、アムサレック様という金髪の御仁だよ。老齢ながら、あんたとは似ても似つかぬいい男だ」
彼は、自分の知る真実を突きつけました。しかしそのアトリオの言葉に、彼が想像もしなかった反応が返ってきます。パーパスの周りにいる幽霊たちが、クスクスと笑い出したのです。
「こらっ、何を笑っとるか。
そりゃ、アムサレック導師に比べれば、ワシの美貌は少しは劣るかも知れんがの……。そもそも、王宮の壁に掛かっている導師の肖像画。ありゃ、かなり美化したもんじゃぞ。
実際に会っているワシが言うのだから、間違いない」
パーパスが、幽霊たちを叱りつけました。
王宮の壁?
アトレオが、鋭く反応します。
確かに王宮の壁には、国に貢献した将軍やら僧侶やら魔法使いやらの肖像画が掛けられています。でもそれは、鬼籍に入った後の話。つまりは故人にならなければ、肖像画に描かれる事はありません。
「ちょっと……、それも嘘だよな。王宮の壁の肖像画は、みんな死んだ人たちだ。確かにアムサレック様は高齢だけど、もし亡くなったのなら、この宝物砦にも知らせが来るはずだよ。
でも、俺がここへ来てから五年の間、そんな知らせは来ていない」
アトリオは相手にボロを出させたと、得意になって詰め寄ります。
「そうか……」
若造にやり込められ、怒りだすかと思いきや、パーパスはその瞳に悲しみの色を浮かべました。
「のぉ、アトリオよ。おぬしは真実を知る勇気があるか?」
これまで穏やかであったパーパスが、威厳に満ちた声で兵士に語りかけます。
「真実?」
眼前に立つ老人の豹変ぶりに、アトリオは圧倒されました。先ほどまで心を満たしていた得意げな気持など、既に微塵もありません。
そして、
「ア、トラトゥーヤ、ハサン、コレサン……」
と、意味不明の言葉を発します。
でもアトリオには、どこか懐かしい響きがありました。
なんだろう……。いつかどこかで聞いたような……。
「あっ」
彼は驚きを、思わず口に出してしまいます。
それは他ならぬ、アトリオがつけているブレスレットに刻印された、象形文字の音読でした。刻まれている文字は古代の言葉で、幸運を呼ぶと言い伝えられる文言であり、彼の親友ホンドレックが自らの作であるブレスレットに刻み込んだものです。
アトリオは、古代文字などには全く興味がないので、読む事は出来ませんでしたが、ホンドレックが声に出して読み、内容を教えてくれた事を思い出しました。
でも、なんでそれをこの魔法使いが……。
「なぁ、幽霊の魔法使いさんよ。こちらが名乗ったんだから、そっちも身分を明かしてくれないかい?」
様々な謎を秘めた状況に、アトリオは相手の正体を確かめようとします。
「幽霊? 幽霊とな。そういえば、先ほどの勇ましい兵士もそんな事を言っておったような……。なるほど、おぬし、いや、おぬしたちには、ワシらがそう見えているわけか」
パーパスが、あご髭をさすりながら言いました。
「いや、名乗り遅れて申し訳ない。ワシはな、王宮で主席魔法使いを務めるパーパスという者じゃ」
「えっ?」
パーパスの素性と、自分たちをあたかも幽霊ではないと言いたげな、彼の主張を聞かされたアトリオが困惑します。しかしその一方で、彼は”しめた”とも思いました。
「魔法使いの爺さん、嘘をついちゃいけないよ。俺が下っ端の兵士だからって、馬鹿にしちゃいけない。
曲がりなりにも、俺は王宮から、ここへ遣わされて来た身だ。王宮の最高位魔法使いが誰かくらいは知っているし、遠目ながらその顔を見た事もある」
アトリオは、真実を語らぬ相手をやり込めようと話を続けます。
「俺の知っている主席魔法使いは、アムサレック様という金髪の御仁だよ。老齢ながら、あんたとは似ても似つかぬいい男だ」
彼は、自分の知る真実を突きつけました。しかしそのアトリオの言葉に、彼が想像もしなかった反応が返ってきます。パーパスの周りにいる幽霊たちが、クスクスと笑い出したのです。
「こらっ、何を笑っとるか。
そりゃ、アムサレック導師に比べれば、ワシの美貌は少しは劣るかも知れんがの……。そもそも、王宮の壁に掛かっている導師の肖像画。ありゃ、かなり美化したもんじゃぞ。
実際に会っているワシが言うのだから、間違いない」
パーパスが、幽霊たちを叱りつけました。
王宮の壁?
アトレオが、鋭く反応します。
確かに王宮の壁には、国に貢献した将軍やら僧侶やら魔法使いやらの肖像画が掛けられています。でもそれは、鬼籍に入った後の話。つまりは故人にならなければ、肖像画に描かれる事はありません。
「ちょっと……、それも嘘だよな。王宮の壁の肖像画は、みんな死んだ人たちだ。確かにアムサレック様は高齢だけど、もし亡くなったのなら、この宝物砦にも知らせが来るはずだよ。
でも、俺がここへ来てから五年の間、そんな知らせは来ていない」
アトリオは相手にボロを出させたと、得意になって詰め寄ります。
「そうか……」
若造にやり込められ、怒りだすかと思いきや、パーパスはその瞳に悲しみの色を浮かべました。
「のぉ、アトリオよ。おぬしは真実を知る勇気があるか?」
これまで穏やかであったパーパスが、威厳に満ちた声で兵士に語りかけます。
「真実?」
眼前に立つ老人の豹変ぶりに、アトリオは圧倒されました。先ほどまで心を満たしていた得意げな気持など、既に微塵もありません。
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