92 / 102
幽霊と宝の塔 (15) 茂みの奥
しおりを挟む
「あぁ、そうだ。”真実”だ。ワシはお前が納得できるよう、それを話す事が出来る。恐らくじゃが、おぬしがここ数日の間に感じていたであろう疑問は、全て氷解するじゃろう。
しかしそれはおぬしに取って、幸せとは限らぬぞ」
パーパスは、変わらず威厳のある声を発しました。
真実……。そうだ。確かに俺は、ここ何日か、様々な疑問に悩まされて来た。この男がそれを知っているのは不可思議だが、その謎も解いてくれるのだろうか。
アトリオの心は、揺れ動きます。
「おぬしの仲間は、青紫の炎に包まれ消えていった。そうだな? そしておぬしも、ほどなくそうなるだろう。残念じゃが、避ける事は出来ぬ。
何も知らないまま旅立った方が、幸せという場合もあり得るがどうじゃ?」
パーパスの言葉は、威厳から憂いに変わっていきました。
真実……、真実。
アトリオの頭の中で、この言葉が教会の鐘の音のように響きます。彼は、再び目の前の男を見つめました。
もう、賭けてみるしかあるまい。この男がもうすぐ消え去る俺を騙して、何か得をするとは思えない。それに俺がつきつけた矛盾にも、この男は全く動じなかった。それも、不思議といえば不思議だ。
「知りたい。俺は、真実を知りたいよ。なぜ自分が、いや仲間たちもそうだが、青紫の炎に包まれて消えてしまうのか知りたい。それがあんたの言う、幸せではない結果をもたらしたとしてもだ」
アトリオは、凛として答えます。
「……そうか。おぬしは、あやつが言った通りの男だの。好奇心旺盛で、まっすぐで、そして強い。おぬしなら、真実を受け止められるに違いないじゃろう」
パーパスの表情が、少し緩みました。
”あやつが言った通りの男”……。という事は、この幽霊魔法使いと俺との間に、共通の知り合いがいるという事なのか? この男がさっき口にした”お前が納得できるよう、それを話す事が出来る。”とは、そういう意味なのか?
アトリオは、そう考えます。
「では、アトリオよ。おぬしが青紫の炎に包まれるのを、僅かに遅く出来る魔法をかけるぞ。よいな? そうすれば、おぬしが事情を理解する時間くらいは稼げるだろう」
パーパスが、念を押しました。
「やってくれ」
その言葉を受け、パーパスが呪文を唱えます。黄色と赤のまじりあったような光が、アトリオを包み込みました。
「さてと……。では、説明を始めるとしようか。だがな。その前に、おぬしには是非とも会ってほしい人物がおる」
術を掛け終えたパーパスが、森の暗がりに目をやります。
「あぁ、あんたがさっき”あやつ”と言っていた者の事か。茂みの奥にいるんだな。 察するに、それは俺の知り合いだろう?」
アトリオが、機先を制しました。
「うむ。おぬしは、頭の回りも早いようじゃ。ならばワシ、いやワシたちの言う事も理解できるだろうて」
パーパスがそう言うと、アトリオは、
手回しが良いと言えば良い話だが、激しい戦闘が行わなわれると知っていて、こんな場所まで出向くとは、一体どんな奴なんだろう。
と、いぶかります。
「少し、待っていてくれ」
魔法使いはアトリオに背を向け、森の暗がりへと歩いていきました。そして誰かに話しかけます。
「向こうでの話はついた。念を押すようだが、覚悟は良いか。ここから見える様子と間近で見るのとでは、雲泥の差があるぞ」
パーパスが、またもや真剣な表情を見せました。
彼の相手は、一瞬ためらったものの、すぐに力強く頷きます。
「そうか。では、まいろうか」
魔法使いはそう言うと、一人の男を連れ立って暗がりから戻って来ました。この男が誰なのか。皆さんには、既に見当がついておいででしょう。
乾いた草を踏みしめる音が、月光さす森に響きます。白く光る幽霊たちは、二人のために体をよけ、一本の道を作りました。
しかしそれはおぬしに取って、幸せとは限らぬぞ」
パーパスは、変わらず威厳のある声を発しました。
真実……。そうだ。確かに俺は、ここ何日か、様々な疑問に悩まされて来た。この男がそれを知っているのは不可思議だが、その謎も解いてくれるのだろうか。
アトリオの心は、揺れ動きます。
「おぬしの仲間は、青紫の炎に包まれ消えていった。そうだな? そしておぬしも、ほどなくそうなるだろう。残念じゃが、避ける事は出来ぬ。
何も知らないまま旅立った方が、幸せという場合もあり得るがどうじゃ?」
パーパスの言葉は、威厳から憂いに変わっていきました。
真実……、真実。
アトリオの頭の中で、この言葉が教会の鐘の音のように響きます。彼は、再び目の前の男を見つめました。
もう、賭けてみるしかあるまい。この男がもうすぐ消え去る俺を騙して、何か得をするとは思えない。それに俺がつきつけた矛盾にも、この男は全く動じなかった。それも、不思議といえば不思議だ。
「知りたい。俺は、真実を知りたいよ。なぜ自分が、いや仲間たちもそうだが、青紫の炎に包まれて消えてしまうのか知りたい。それがあんたの言う、幸せではない結果をもたらしたとしてもだ」
アトリオは、凛として答えます。
「……そうか。おぬしは、あやつが言った通りの男だの。好奇心旺盛で、まっすぐで、そして強い。おぬしなら、真実を受け止められるに違いないじゃろう」
パーパスの表情が、少し緩みました。
”あやつが言った通りの男”……。という事は、この幽霊魔法使いと俺との間に、共通の知り合いがいるという事なのか? この男がさっき口にした”お前が納得できるよう、それを話す事が出来る。”とは、そういう意味なのか?
アトリオは、そう考えます。
「では、アトリオよ。おぬしが青紫の炎に包まれるのを、僅かに遅く出来る魔法をかけるぞ。よいな? そうすれば、おぬしが事情を理解する時間くらいは稼げるだろう」
パーパスが、念を押しました。
「やってくれ」
その言葉を受け、パーパスが呪文を唱えます。黄色と赤のまじりあったような光が、アトリオを包み込みました。
「さてと……。では、説明を始めるとしようか。だがな。その前に、おぬしには是非とも会ってほしい人物がおる」
術を掛け終えたパーパスが、森の暗がりに目をやります。
「あぁ、あんたがさっき”あやつ”と言っていた者の事か。茂みの奥にいるんだな。 察するに、それは俺の知り合いだろう?」
アトリオが、機先を制しました。
「うむ。おぬしは、頭の回りも早いようじゃ。ならばワシ、いやワシたちの言う事も理解できるだろうて」
パーパスがそう言うと、アトリオは、
手回しが良いと言えば良い話だが、激しい戦闘が行わなわれると知っていて、こんな場所まで出向くとは、一体どんな奴なんだろう。
と、いぶかります。
「少し、待っていてくれ」
魔法使いはアトリオに背を向け、森の暗がりへと歩いていきました。そして誰かに話しかけます。
「向こうでの話はついた。念を押すようだが、覚悟は良いか。ここから見える様子と間近で見るのとでは、雲泥の差があるぞ」
パーパスが、またもや真剣な表情を見せました。
彼の相手は、一瞬ためらったものの、すぐに力強く頷きます。
「そうか。では、まいろうか」
魔法使いはそう言うと、一人の男を連れ立って暗がりから戻って来ました。この男が誰なのか。皆さんには、既に見当がついておいででしょう。
乾いた草を踏みしめる音が、月光さす森に響きます。白く光る幽霊たちは、二人のために体をよけ、一本の道を作りました。
0
あなたにおすすめの小説
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
「強くてニューゲーム」で異世界無限レベリング ~美少女勇者(3,077歳)、王子様に溺愛されながらレベリングし続けて魔王討伐を目指します!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
作家志望くずれの孫請けゲームプログラマ喪女26歳。デスマーチ明けの昼下がり、道路に飛び出した子供をかばってトラックに轢かれ、異世界転生することになった。
課せられた使命は魔王討伐!? 女神様から与えられたチートは、赤ちゃんから何度でもやり直せる「強くてニューゲーム!?」
強敵・災害・謀略・謀殺なんのその! 勝つまでレベリングすれば必ず勝つ!
やり直し系女勇者の長い永い戦いが、今始まる!!
本作の数千年後のお話、『アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~』を連載中です!!
何卒御覧下さいませ!!
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる