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王都新迷宮攻略
第39話 晦日
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12月29日。毎年この時期は某イベントに行っていたんだが、今年はいけないのが悲しい。…時差があるので今日じゃないかもしれないし。ま、アクアミネスに12月31日は存在しないんだけどね。
あ。夏のイベントの時は意識もできなかったよ。異世界に来て目が回っていたもんな。
今日はとりあえず訓練は休み。明日から明後日にかけてのイベントの準備で、俺達は座学の教室に集まっている。俺は明日は一日アーリアの護衛任務に就くから一緒にはいられない。
「えー、何で俺がここで説明しているのか、はなはだ疑問なんだが。」
ちらっとカディスを見やると視線を逸らされた。
そもそもこの部屋、カディス以外日本人しかいねえ。どういうことだ。
「とりあえず、俺の説明のあと正装の衣装合わせがある。明日の夕方から明後日の明け方にかけて、王城の一部が解放される。下層から一般市民、下位貴族、上位貴族、と上に行くほど、身分が上がるらしい。そこで、祝日の祝いの宴が催されるそうだ。日付が変わる頃王族の挨拶があり、そこから新年パーティになって夜通し騒いで初日の出を皆で拝んで女神に祈りを捧げるらしい。それでイベントはおしまい。あとは寝るか、追加で騒ぐかで過ごしてるらしいぞ。で、で、祝日3日目の朝に迷宮訓練への出発式がある。そのまま先の10人はバーダットに向かう。」
出発式ってなんだよ、と俺も聞いた時は突っ込んだが。やっぱりというかなんというか、騒然となった。
「ええ? なにそれ!」
「俺達の迷宮デビューには、何の励ましもなかったぞ!」
「過保護!!」
と口々に文句を言う。
「あー待て。わかる。わかるぞ。でもな、この出発式には、皆も出るんだ。」
一瞬の沈黙。
「「ええええええ!?」」
皆が一斉に叫んだ。まあ、俺も叫んだよ。聞いた時はなあ……。
「決定事項だから観念するように。王族、騎士団、魔術師団、貴族勢ぞろいらしいぞ~」
やだーとか、行きたくねえ、とか悲鳴が聞こえる。ほんと俺もそう思う。
「あ、俺はアーリア王女様のそばで気配消してるからよろしく。」
あ、みんな黙った。
「ずるーい!!」
仕方ないじゃん。俺の今の仕事はアーリアの護衛だから。
「まあ、本来祝日は何もしないらしいんだけどね。祝日中は、大勢の貴族が王都に来ているらしくて、紹介するいい機会だってことらしいぞ。」
もう伝聞以外の何物でもないかららしいとしか言えない。
ぶーぶーとブーイングの中、衣装合わせの時間だと、知らせが来た。
男性はこの部屋で、女性は隣の部屋で衣装合わせをするとのこと。
俺もこっちだ。
正装は軍服に似ている。色は白。なんでも都市ごとにカラーが決まっていて出身地のカラーを着るらしい。王都は白だそうだ。だから俺達が着る正装の色も白。
マントと、ダブルボタンの上着、燕尾のように後ろの布が少し長い。白いシャツにスラックス、革靴まで白かった。この半年で伸びていた髪を後ろで束ねられた。前髪も顎くらいまで伸びていたのでそれを両サイドに垂らす。
まあ、当日はこれに銀髪の鬘と目の色を変えるんだけれども。
「………」
着付けをしていた女性が、呆けたように俺を見ていた。
どうしたんだ?
他のメンバーも着替えを終えた。お―馬子にも衣装。中々かっこよくないか?
「ラビちゃん先輩、馬子にも衣装ですね!」
ハジメ、お前、しばかれたいのか。
「白だから汚さないか怖いな。お、女子も戻ってきた。……ドレスか。」
ガッキ―がまともなことを言ってくれた。おい、顔赤いぞ。
女子4人がそれぞれの個性に合わせたドレスを着ていた。
皆容姿は綺麗なので、着飾れば美人だ。いや、いつも美人だ。なんだろう、心を見透かされた気がする。
あ、女性陣の視線が痛い。
「ラビちゃん先輩、なんていうか、その……」
ん?
「あらあ……意外と……」
意外となんだ?
あれ? カディスがいつの間にかいない。
あ、いた。入口で手招きをしている。首を傾げつつ入口に行く。
「何して……あ、アーリア……様」
カディスの後ろから現れたのはアーリアだった。
赤い顔で言葉がない。何故か固まっている。
「アーリア様?」
あ、起動した。
「あ、アキラ様……大変よくお似合いです。ほんとにすごくお似合いで……」
アーリアが両手を頬にあてて困った顔をしていた。
なので、俺は手を差し出して中へ入ってもらおうとした。
「ありがとう。ここで立ち話もアーリア様には失礼と思いますのでどうぞ中に……」
とちょっとカッコつけてみた。アーリアが手を乗せるとその手を導くように教室に招き入れた。
教室にいた男どもがざわついた。何故か黄色い悲鳴も聞こえた。
「宇佐見殿、騎士のようですね。男前ですよ。」
田村さんの声が後ろから聞こえた。田村さんも正装だった。
アーリアが教室の中に入るとそっと手を外した。
「あ、ありがとうございます……」
アーリアに真っ赤な顔で見上げられた。その顔を見ていたら俺の頬も少し熱くなった。
ひゅーひゅーとはやし立てる声が聞こえて、俺はとりあえずそいつらを叩きのめした。
しばらく教室の中は笑いに包まれた。
衣装合わせは問題なくすみ、解散となった。明日は午後にこの教室に集合だった。
「アキラ様は朝食が済み次第、私の執務室にお願いします。正装でお願いします。」
明日は朝から護衛任務ということか。俺が頷くとアーリアはカディスとともに帰っていった。
城はバタバタと忙しく立ち働く人々が行き交う。俺は少し身体を動かそうと思って訓練所に来た。
ストレッチをしてランニングをする。身体があったまったら剣の素振りだ。
体術も型稽古をする。タツト君が見せた体術だ。あれは古武道の一派だった。俺は流派はよくわからないけれど。多分、向こうにいたころ通っていたんだろうな。
しばらく汗を流しているとなぜだか皆集まってきた。自主錬だ。こういうとここいつらも偉いよな。
多分ブートキャンプが染み付いちゃって俺もそうだけど、少し休むと落ち着かないんだろうな。
最後は模擬戦と魔法制御の訓練をして解散した。
イベント当日、俺はアーリアの後ろに立っていた。
謁見の間のみ護衛の場所はサイドだったが。なるべく気配を消して索敵をした。
謁見に現れた者はみんな”視た”が、特に問題はなかった。
昼食は軽いものをアーリアの執務室で食べた。
「あの、アキラ様……これを……」
アーリアは細長い箱を差し出した。俺は反射的に受け取った。
「プレゼントです。気に入ってもらえたら嬉しいのですが。」
俺はちょっと驚いた顔をして箱を見た。
「開けていいか?」
頷くのに俺は箱を開けた。白の地に銀糸の刺繍の入ったリボンだった。
「髪を結ぶのに使ってもらえたらと……」
俺は頷くとリボンを後ろでくくっている紐の上に付けた。
「鬘だけど、護衛の間は許してくれよ。ちゃんと、普段はつけるから。ありがとう。とっても嬉しいよ。」
アーリアは俺の背後を覗き込んで嬉しそうに微笑んだ。
「はい! お似合いです。よかった……」
短い昼食の時間を終えるとアーリアは公務に戻った。夕方から始まる城の解放までは謁見をこなした。
そして市民の待ちに待った時間がやってきた。
城を取り囲む群衆の熱気やざわめきが奥まで届いていた。まず身分の低いものから入場していき、上位の者は最後の方にゆっくりと馬車で現れた。
アーリアたち王族もそれぞれの場所で待つ。入場だけで相当な時間がかかった。
入場が終わると飲み物が配られて、料理も運び込まれていく。料理人は大変だっただろうと思われる。
すっかりと陽が落ち、一段と寒さが増した中で、王城だけが熱気に包まれているようなそんな気がした。
間もなく年が明ける。10分前を知らせる鐘が鳴り響いた。
あ。夏のイベントの時は意識もできなかったよ。異世界に来て目が回っていたもんな。
今日はとりあえず訓練は休み。明日から明後日にかけてのイベントの準備で、俺達は座学の教室に集まっている。俺は明日は一日アーリアの護衛任務に就くから一緒にはいられない。
「えー、何で俺がここで説明しているのか、はなはだ疑問なんだが。」
ちらっとカディスを見やると視線を逸らされた。
そもそもこの部屋、カディス以外日本人しかいねえ。どういうことだ。
「とりあえず、俺の説明のあと正装の衣装合わせがある。明日の夕方から明後日の明け方にかけて、王城の一部が解放される。下層から一般市民、下位貴族、上位貴族、と上に行くほど、身分が上がるらしい。そこで、祝日の祝いの宴が催されるそうだ。日付が変わる頃王族の挨拶があり、そこから新年パーティになって夜通し騒いで初日の出を皆で拝んで女神に祈りを捧げるらしい。それでイベントはおしまい。あとは寝るか、追加で騒ぐかで過ごしてるらしいぞ。で、で、祝日3日目の朝に迷宮訓練への出発式がある。そのまま先の10人はバーダットに向かう。」
出発式ってなんだよ、と俺も聞いた時は突っ込んだが。やっぱりというかなんというか、騒然となった。
「ええ? なにそれ!」
「俺達の迷宮デビューには、何の励ましもなかったぞ!」
「過保護!!」
と口々に文句を言う。
「あー待て。わかる。わかるぞ。でもな、この出発式には、皆も出るんだ。」
一瞬の沈黙。
「「ええええええ!?」」
皆が一斉に叫んだ。まあ、俺も叫んだよ。聞いた時はなあ……。
「決定事項だから観念するように。王族、騎士団、魔術師団、貴族勢ぞろいらしいぞ~」
やだーとか、行きたくねえ、とか悲鳴が聞こえる。ほんと俺もそう思う。
「あ、俺はアーリア王女様のそばで気配消してるからよろしく。」
あ、みんな黙った。
「ずるーい!!」
仕方ないじゃん。俺の今の仕事はアーリアの護衛だから。
「まあ、本来祝日は何もしないらしいんだけどね。祝日中は、大勢の貴族が王都に来ているらしくて、紹介するいい機会だってことらしいぞ。」
もう伝聞以外の何物でもないかららしいとしか言えない。
ぶーぶーとブーイングの中、衣装合わせの時間だと、知らせが来た。
男性はこの部屋で、女性は隣の部屋で衣装合わせをするとのこと。
俺もこっちだ。
正装は軍服に似ている。色は白。なんでも都市ごとにカラーが決まっていて出身地のカラーを着るらしい。王都は白だそうだ。だから俺達が着る正装の色も白。
マントと、ダブルボタンの上着、燕尾のように後ろの布が少し長い。白いシャツにスラックス、革靴まで白かった。この半年で伸びていた髪を後ろで束ねられた。前髪も顎くらいまで伸びていたのでそれを両サイドに垂らす。
まあ、当日はこれに銀髪の鬘と目の色を変えるんだけれども。
「………」
着付けをしていた女性が、呆けたように俺を見ていた。
どうしたんだ?
他のメンバーも着替えを終えた。お―馬子にも衣装。中々かっこよくないか?
「ラビちゃん先輩、馬子にも衣装ですね!」
ハジメ、お前、しばかれたいのか。
「白だから汚さないか怖いな。お、女子も戻ってきた。……ドレスか。」
ガッキ―がまともなことを言ってくれた。おい、顔赤いぞ。
女子4人がそれぞれの個性に合わせたドレスを着ていた。
皆容姿は綺麗なので、着飾れば美人だ。いや、いつも美人だ。なんだろう、心を見透かされた気がする。
あ、女性陣の視線が痛い。
「ラビちゃん先輩、なんていうか、その……」
ん?
「あらあ……意外と……」
意外となんだ?
あれ? カディスがいつの間にかいない。
あ、いた。入口で手招きをしている。首を傾げつつ入口に行く。
「何して……あ、アーリア……様」
カディスの後ろから現れたのはアーリアだった。
赤い顔で言葉がない。何故か固まっている。
「アーリア様?」
あ、起動した。
「あ、アキラ様……大変よくお似合いです。ほんとにすごくお似合いで……」
アーリアが両手を頬にあてて困った顔をしていた。
なので、俺は手を差し出して中へ入ってもらおうとした。
「ありがとう。ここで立ち話もアーリア様には失礼と思いますのでどうぞ中に……」
とちょっとカッコつけてみた。アーリアが手を乗せるとその手を導くように教室に招き入れた。
教室にいた男どもがざわついた。何故か黄色い悲鳴も聞こえた。
「宇佐見殿、騎士のようですね。男前ですよ。」
田村さんの声が後ろから聞こえた。田村さんも正装だった。
アーリアが教室の中に入るとそっと手を外した。
「あ、ありがとうございます……」
アーリアに真っ赤な顔で見上げられた。その顔を見ていたら俺の頬も少し熱くなった。
ひゅーひゅーとはやし立てる声が聞こえて、俺はとりあえずそいつらを叩きのめした。
しばらく教室の中は笑いに包まれた。
衣装合わせは問題なくすみ、解散となった。明日は午後にこの教室に集合だった。
「アキラ様は朝食が済み次第、私の執務室にお願いします。正装でお願いします。」
明日は朝から護衛任務ということか。俺が頷くとアーリアはカディスとともに帰っていった。
城はバタバタと忙しく立ち働く人々が行き交う。俺は少し身体を動かそうと思って訓練所に来た。
ストレッチをしてランニングをする。身体があったまったら剣の素振りだ。
体術も型稽古をする。タツト君が見せた体術だ。あれは古武道の一派だった。俺は流派はよくわからないけれど。多分、向こうにいたころ通っていたんだろうな。
しばらく汗を流しているとなぜだか皆集まってきた。自主錬だ。こういうとここいつらも偉いよな。
多分ブートキャンプが染み付いちゃって俺もそうだけど、少し休むと落ち着かないんだろうな。
最後は模擬戦と魔法制御の訓練をして解散した。
イベント当日、俺はアーリアの後ろに立っていた。
謁見の間のみ護衛の場所はサイドだったが。なるべく気配を消して索敵をした。
謁見に現れた者はみんな”視た”が、特に問題はなかった。
昼食は軽いものをアーリアの執務室で食べた。
「あの、アキラ様……これを……」
アーリアは細長い箱を差し出した。俺は反射的に受け取った。
「プレゼントです。気に入ってもらえたら嬉しいのですが。」
俺はちょっと驚いた顔をして箱を見た。
「開けていいか?」
頷くのに俺は箱を開けた。白の地に銀糸の刺繍の入ったリボンだった。
「髪を結ぶのに使ってもらえたらと……」
俺は頷くとリボンを後ろでくくっている紐の上に付けた。
「鬘だけど、護衛の間は許してくれよ。ちゃんと、普段はつけるから。ありがとう。とっても嬉しいよ。」
アーリアは俺の背後を覗き込んで嬉しそうに微笑んだ。
「はい! お似合いです。よかった……」
短い昼食の時間を終えるとアーリアは公務に戻った。夕方から始まる城の解放までは謁見をこなした。
そして市民の待ちに待った時間がやってきた。
城を取り囲む群衆の熱気やざわめきが奥まで届いていた。まず身分の低いものから入場していき、上位の者は最後の方にゆっくりと馬車で現れた。
アーリアたち王族もそれぞれの場所で待つ。入場だけで相当な時間がかかった。
入場が終わると飲み物が配られて、料理も運び込まれていく。料理人は大変だっただろうと思われる。
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