アーリウムの大賢者

佐倉真稀

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王都アルデ(ヒューSIDE)

カフェと観光

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 甘い香りの店内に入ると、店員から声がかかる。パンケーキの甘い香りが店内に満ちていて、フィメルの客が多い。
 店内に何人か並んでいて、順番に籍に案内するようだった。前に人がいなくなって、壁際の席に案内された。
 メルトがさりげなく周りに視線を走らせた。壁にあるメニューを見て首を傾げる。
「想像がつかないから、ヒューに任せる」
 俺はくすりと笑って呼び寄せた店員に注文をする。
「この、鳥のローストとプレーン三枚。それとベーコンとオムレツにプレーン三枚。紅茶二つ」
 店員は頷くと去っていった。メルトはますます首を傾げた。可愛い。
 俺は視線で隣のテーブルを示すと、メルトもテーブルを見た。
「あれって確か、甘いシロップをかけていた気がするけど。食事なんだろう?」
 俺が作った時はおやつとして出したからね。
「パン代わりにパンケーキを食べるんだよ」
 メルトが驚いた顔をする。俺は可愛さに感動して、思わずまじまじと見てしまった。

 しばらくすると注文の品が運ばれてきて、メルトの顔に喜色が浮かんだ。
「ああ、でも美味しそう」
「うん。いただきます」
「なあ、そのいただきますっていうの、ヒューの国の習慣か?俺も真似ていいか?」
 無意識に言っていた、前世の食べる前の習慣。
「え、あ、く、口癖だけど、特に俺の国ってわけじゃないよ?」
「そうなのか?」
 俺は首を傾げた。
「うん。食べる前の挨拶というか、そんな感じ」
「まあ、俺とヒューはその、伴侶というか、家族になるから俺もヒューに合わせようかと思うんだが……その、いただきます?」
 メルト! なんて嬉しいことを言ってくれるんだ!
 俺の顔に自然と笑みが浮かぶ。ああ、メルトが好きだ。
 それから美味しく料理をいただいて、物足りなそうな顔のメルトにパンケーキやら何やらを少しお裾分けした。
「ごちそうさま」
 俺がそういうとメルトも習ったように「ごちそうさま」と言った。
 なんだかすごくくすぐったい。

 こっそり足りたか聞くと、メルトにとっては前菜のようなものだった。
 じゃあ、ということで市場の屋台に誘った。デートだな。顔を寄せ合って話していると他のテーブルからの視線を感じた。
 メルトは俺のだからね。
 テーブルでの支払いを済ませて立ち上がると、メルトの席の椅子をそっと引く。
 エスコートだ。
 手を差し出すと赤くなったメルトがそっと俺の手に手を乗せた。
 俺はにっこりとメルトに微笑んだ。
 そのまま店を出て恋人繋ぎで歩き始めた。
「市場って、ここから遠いのか?」
「ここからは近いよ。ほら、城が見えてきた。城を中心に広場があって、その近くなんだ」
 道の先に城が見えた。城壁に囲まれ、一段高いところ建てられている。そのまま城の方向に向かうと広場に出た。

 あ、ここ、俺の黒歴史が……と思い出しているとメルトが、噴水が珍しいのか、ため池かと聞いてきた。
 噴水だと説明すると、今度はその周りに人が群がっているのに興味を持った。
 噴水の側の、7つの彫像。
 俺がアルデリアで活動してた頃の、英雄を称える彫像だ。
 年若い剣士、タンク役のドワーフ、弓術士のエルフ、回復術士、斥候役のシーフ、戦士に、フードを被った魔術師。
 魔術師は俺だ。ちなみにドワーフはボルドールで、エルフはミハーラ。他の仲間はヒューマンだったので、もういない。
 なんで、彫像とか作ったんだよ? 伝説でいいじゃないか。
 あの時は若かったからいろいろ拗らせてたんだよ。
 手を引っ張られた! メルトが興味を持っちゃったよ!

「あの彫像はなにか有名な作家によるものか?」
「ああ、まあ、有名といえば有名かな。当時の王室お抱え芸術家だったから」
 顔を出すなと思いっきり釘を刺したからな!
「へえ。確かに今にも動き出しそうだな」
 しみじみとメルトはその彫像を眺めている。早くここから去りたい。
「あの7人の像、だれかモデルがいるのか?」
 来た―――!
「ああ、この国の英雄の勇者パーティーの像なんだ。観光名所ってやつだな」
「へえ。あの魔術師の恰好、いつものヒューに似ているな」
 ぎくりと俺は硬直した。
 顔出してないのに!
 思わず顔を手で覆う。ああ、熱い。真っ赤になってる気がする!
「……んだ」
「聞こえなかった。もう一度」
「あの魔術師、俺なんだ」
 もう耐えられない。さっさとここを出よう。市場より先に冒険者ギルドで用事を済ませよう。
その後で市場デートだ!

「ギルドでミハーラが待っているから早く行こう」
「誰?」
 あ、そういえばメルトは知らないな。
「あー、あのエルフ、ね? で今は冒険者ギルドの統括」
 広場のエルフの弓術士の銅像を指すと足早にメルトを引っ張って冒険者ギルドに向かう。 
「俺はよくわからんが、ヒューが英雄なのか?」
「あー……」
 どういえばいいのか。
「すごいな。自慢しようか? 俺の恋人は英雄だって」
「あー、もう、メルト、やめて。恥ずかしくて死にそう」
 いいんだよ? やったことは事実だから!
 でも、彫像はやめて! 俺、まだ生きてるんだから!

 足早に冒険者ギルドにやってきた。
 そして、5階にある統括ギルド長の部屋に案内された。
 そこには彫像とほぼ容姿が変わっていない、ハイエルフのミハーラが待ち構えていた。
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