アーリウムの大賢者

佐倉真稀

文字の大きさ
114 / 115
王都アルデ(ヒューSIDE)

騎竜部隊の砦への道中

 カレーは大好評だった。メルトも喜んでくれた。よかった。

 それとメルトに作った青い革の小さな巾着袋。中にはいつでもメルトが摘まめるようにお菓子や軽食を入れた。それを渡すとメルトはそれを覗き込む。
「それは時間停止機能が付いた、おやつ袋。ほら、王都で食事に入ったけど、メルト満足できなかったでしょ? 小腹が空いたときに摘まんでもらえばいいと思って。時間停止機能は物によってしない状態とする状態が選べるから。とりあえずサンドイッチと焼き菓子を入れておいたよ。そのうち中身を増やしていくから食べたいものあったら言ってね?」
 メルトががばっと抱き着いてきた。
「ありがとう! ヒュー!」
 メルトからの気持ちが伝わってくる。こんなに喜んでくれるならもっといろいろやろう!
「メルト。これくらい朝飯前だからね! もっといろいろできるから!」
「ありがとう。でもこれで十分だ。中に入れる料理をいっぱい補充してもらえたらそれでいい」
「わかった! いっぱい美味しいの作るね!」
 袋より中身なのか! よしもっと胃袋掴むよう、新しいレシピを開発せねば。

「騎乗具は順調に作れているのか? 俺の用事で時間を取らせてしまったみたいだけど……」
「順調だよ。一週間もすれば作れるかな。メルト、依頼も大事だけど、俺の優先順位はメルトだからな?」
 メルトは真面目だから、きっと仕事を優先して欲しいと思うんだろう。
「嬉しい。でもちゃんとお仕事はしてほしい。俺は待っていることは苦にはならないぞ? ヒューが作っているのを見るのも楽しいと思う。討伐依頼なら一緒にできると思うが、こればかりはな」
 やっぱり。ぎゅっと抱きしめる。
「メルト。ありがとう。メルトの傍にいたいのは俺の我儘だから、許してくれると嬉しい」
 メルトの顔を覗き込む。愛しいメルトが最優先。仕事なんて、しなくたっていい。
「え? 俺だってヒューの傍にいたい。お互いそうなら問題はないんじゃないか?」
 首を傾げるメルトが可愛くてチュッとキスする。
「ありがとうメルト。そんなメルトが大好き」
 キス魔な俺はまたチュッとキスを落とす。
「お、俺も、ヒューが好き……」
 メルトが照れてる。可愛すぎる! だめだ! メルトを目いっぱい愛したい。
「やばい、メルト、俺、凄くしたくなってきた。ベッドに行こう?」
 頷いたメルトを横抱きに抱え、ベッドへ運んだ。鏡の前でしたら、メルトが恥ずかしがって可愛かった。

 それから毎晩メルトとスキンシップを取りながら、俺は騎乗具の製作、メルトは剣の稽古やハディーと結婚式について話し合ったり、マナーやダンスのレッスンなど、いろいろしていた。
 そしてついに騎乗具ができた。それを納めた後、ラーンのメルトの実家に向かうことにした。

「え、直接騎竜部隊の砦に持っていけって?」
「第一騎士団長のご希望だそうだ」
「……あー……」
 顔に手を当てて唸る。あの子はな。なんでか苦手だ。赤い髪は遥か昔に面倒を見たあの子と似ているのに。
「そう嫌な顔するな。馬車は向こう持ちで手配した」
「え、いつ来るかわかんないのに?」
「どうせ、ヒューはぎりぎりに納品するだろうって踏んでだ」
 くそう。俺の性格をわかっている!

 王都アルデで買い物をしてメルトのご両親へのお土産も買いつつ、俺とメルトは馬車で騎竜部隊の砦へと向かった。

「三日かかるのか?」
「そう。ちょっと遠いからね」
 メルトは頷いたが、ずっと馬車に揺られているのにだんだんテンションが落ちていった。もぞもぞと座り直したりしていたからな。
 野営で、やっと馬車から降りる。
「ずっと座りっぱなしだったから、参ったな。鍛えてたはずなのに」
「お尻痛くなった?」
 赤くなって頷くメルトが可愛い!
 思わずふふっと笑ってしまった。
「ヒール」
「あ」
「どう?」
「あ、ありがとう」
 テントを出して、御者と馬車を結界で覆った。朝まで持つはず。
「襲撃があったらテントから出て対応するから、馬車の中で寝ていて大丈夫だよ」
「ありがとうございます」
 御者は御者で色々済ませるだろう。

 俺とメルトはいつものテントに入った。
「なんだかほっとする」
「そう?」
「お風呂入りたいな」
「じゃあ、先にお風呂にしよう。出てからご飯だね」
 久しぶりのテントのお風呂。
「気持いい」
「メルトはすっかりお風呂好きになったね」
「水がもったいないと思わなくなってきた」
「アーリウムは水が豊富だしね。全然気にしなかったよ」
「そこは国の違いだな」
 メルトの白い肌が赤く染まって綺麗だ。
「そろそろ上がろう。ご飯食べる前にベッド直行になりそう」
「え、あ……」
 メルトが真っ赤になった。
「ご飯は何にする? 作り置きのカレーもあるよ」
「カレーがいい!!」
「わかった」
 すっかりメルトもカレーの虜になったんだな。
 メルトは二杯お代わりしていた。
 さすがに俺は一杯だけだった。
感想 24

あなたにおすすめの小説

贖罪公爵長男とのんきな俺

侑希
BL
異世界転生したら子爵家に生まれたけれど自分以外一家全滅という惨事に見舞われたレオン。 貴族生活に恐れ慄いたレオンは自分を死んだことにして平民のリオとして生きることにした。 一方公爵家の長男であるフレドリックは当時流行っていた児童小説の影響で、公爵家に身を寄せていたレオンにひどい言葉をぶつけてしまう。その後すぐにレオンが死んだと知らされたフレドリックは、以降十年、ひたすらそのことを悔いて生活していた。 そして十年後、二人はフレドリックとリオとして再会することになる。   ・フレドリック視点は重め、レオン及びリオ視点は軽め ・異世界転生がちょいちょい発生する世界。色々な世界の色々な時代からの転生者の影響で文明が若干ちぐはぐ。 ・世界観ふんわり 細かいことは気にしないで読んでください。 ・CP固定・ご都合主義・ハピエン ・他サイト掲載予定あり

その捕虜は牢屋から離れたくない

さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。 というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

病み墜ちした騎士を救う方法

無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。 死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。 死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。 どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……? ※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です

【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。

村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました! ありがとうございました!! いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い <あらすじ> 魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。 見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。 いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。 ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。 親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。 ※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。 └性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って? いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!