蒼銀の竜騎士

佐倉真稀

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終章

エピローグ※

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「では、誓いの儀を。」
 王が掠れた声で宣言する。
「次代の王はこのヒュー・クレムと守護龍と契約を結んで初めて、アルデリアの王となる。勇者召喚の儀を永劫放棄することを、この国の王族の末まで守ること、破られた場合、私と龍がこの国を滅ぼす。ヴァンサン王の子、クエンティン、誓約するか、否か。」
「私、ヴァンサン王の子、クエンティン、勇者召喚の儀を永劫放棄することを、誓います。」
 私の身体が光り、左手に龍の刻印が刻まれた。
『誓いが破られない限り、私はそなたらを世界の理に背かぬ程度に守ってやろう。』
「ありがとうございます。」
 私は、跪いた。龍は神龍だ。大魔導士は長命種のハイヒューマンだった。
 ああ、勇者の悲しそうな顔が納得できてしまった。

 短命種と長命種の恋は長命種を悲しませる。

 でも、それを覚悟して二人は笑い合っていたのだ。そういうことだ。ならそれは彼らの選んだ道で、私が何も言うことも思うこともない。

「では、私と龍はこれで失礼する。」

 大魔導士は、瞬時に消え、飛び去る龍の背に、はためくマントと人影が見えた。

 沈黙が落ちる室内で、ぽつりと呟く。

「我が王家が背負う罪ということか。」

 それなのに、二人は王族の私をかわいがってくれた。子供たちも。
 では、私はそれに応えなければ。

「ダッド、これからのことは私が決めてよいですね。」
「ああ。もう、この国の王はそなただ。」

 それからは目まぐるしかった。

 戴冠式、住まいの引っ越し。体制変更や、公務の引継ぎ。
 兄たちには目いっぱい、働いてもらうこととなった。

 子供たちは王子となってしまって、少し窮屈な生活に変わった。
 ただ、ハディーはまだ若く、全面的に引き受けてくれたので安心している。
 兄たちの子供たちと交流も持たせて、仲良くするよう配慮した。
 何故なら私の子供たちが王になるとは限らない。
 王争奪戦など、これからはあり得ない。彼のお眼鏡に適うものが王だから。

 王は全て終わったのを見計らったようにひっそりと身罷られた。
 国民は悲しみに暮れた。
 国民にはいい王だった。それが大魔道士の監視ありきだったとは国民には知られなくていい事実だった。

 勇者と大魔導士も、相変わらず騎士団と魔術師団を鍛えてくれている。
 もちろん、冒険者ギルドを通じて依頼をしている。

 竜騎士団の団長職は兼任だ。実際の指揮はドナートに任せた。
 忙しすぎて昼間はすれ違いが多い。
 それでも必ず、夜は一緒に過ごす。

「……ん……」
 ドナートの手が胸を彷徨う。
「あ、そこ……」
「久しぶりだからか、堪え性がなくなってるな……」
 胸の尖りをキュッと摘まみながら言うドナートは相変わらず意地悪だ。
「あっ……そこ、弱い……」
 ダイレクトに股間に快感が伝わって腰が跳ねた。
「可愛いな。クエン……」
 愛しそうに見つめるドナートの瞳に欲情の色が映りこむ。

「も、もう、可愛いっていう年でも、ない……」
 チュ、チュッと突起を口に含みつつドナートが囁く。息がかかって、それも快感を煽る。
「そんなことない。魔力が多い俺達は老化が遅い。20歳台に見られてるぞ。」
 あちこちにつけられる所有印は薄くなるたびに上書きされて、ずっと、赤いままだ。
「まさか、もう、40歳に近いのに……」
 自分の顔はよくわからない。でもそういえばドナートはあんまり変わってない気がする。少し渋みが加わって、ますますかっこよくなっているけれど。

「相変わらずモテモテだぞ、クエンは……」
 足の付け根にキスされてビクリと腰が震える。股間の昂りはもう、硬く張りつめていた。
「絶対ドナートのほうがモテてる。」
「そうか? でも、俺はクエン一筋だからな。」
 かあっと頬が熱くなる。ドナートはいつも、私をいたたまれない気持ちにさせる。
「あ、ありがとう?」
 首を傾げた私に、ドナートは不満げに起き上がってじっと見つめる。

「……ドナート?」
「クエンは言ってくれないのか?」
 こういうところが、ドナートの可愛いところだ。
「僕も、ドナートだけ。好きだよ。ドナート……」
 尖った唇に私も起き上がってキスをした。

「早く、奥に入れて。中をドナートで、いっぱいにして欲しい。」
 首に手を回して腰に跨って昂りをドナートの肌に押し付けて腰を揺らして強請る。
 奥はもう、ドナートの愛撫でぐしょぐしょになっている。
 昔はこんな風にはならなかったが、発情期を超えてから奥が濡れるようになった。
 多分、これは発情期を迎えないとならないのではないかと思う。
 そうでないと、集中できないだろうな、と想像する。
 私はこっちの立場にしかなっていないから、実感はないけれど。

「わかった。クエン。」
 私を呼ぶ声が甘くて、体の芯が熱くなる。後孔に熱い昂ぶりがあてられてぐっと中に突き込まれる。自分からも腰を落として奥へと導いた。
「あっ……中、ドナートで、いっぱい……気持ち、イイ……」
「ああ、クエンの中は熱くて、最高に気持ちがいい……俺だけが知っている、クエン、だな……」
 チュッと唇にキスしてから、ドナートは腰を動かした。

「……あっ……奥、奥に……あっ……あっ……」
 激しく突き上げられてドナートに縋った。お互いの腹の間で、私のモノは擦れてもうはち切れそうだ。
「クエン……好きだ。愛してる……」
「ドナート……好き……愛、してる……あっ……あッ……ああっ……ああああぁーーーッ……」
 激しく揺さぶられ最奥を突き上げられて、私はあっけなく果てた。中が、きつく絞り上げるようにドナートを締め付けた。
 奥に感じる、熱いモノ。注がれるドナートの魔力が私を快感の渦に落とし込む。

「……はッ……はあ……はあ……」
 ぎゅっと抱きこまれて背をなだめるように擦られる。
「……んっ……」
 どちらともなく唇を重ねて、何度も味わう。
「……ふ……」
 そのうちに、舌を絡める深いものになって、奥に再び火がともる。
「……クエン……」
 今度はベッドに押し倒されて腰を抱えあげられて激しく打ち付けられた。
「あん……あっ……」
 前立腺をきつく抉る様にされて目の前がちかちかする。はきださないまま、何度も達した。
 衰えない快感に泣きが入る頃、ドナートが達して、強烈な魔力の奔流が体中を巡って、私は耐え切れず、意識を失った。

 私とドナートは相性が良すぎて過ぎる快感に耐え切れずに私が意識を飛ばして終わることが多い。
 そうして朝、ドナートの入れる紅茶の香りで目を覚ますのだ。

 帝国は何度か、戦争を仕掛けてきた。
 その度に追い返し、国境が広がる。

 竜騎士団の噂は遠くドワーフやエルフの国、聖皇国や南の商業国まで届いた。
 私は比較的早く譲位して、結局ルディンが王になった。
 ルディンに任せると私は竜騎士団の顧問になった。

 私とドナートが聞いた、勇者たちの武勇伝を本にしたら、渋々世間に出すことを勇者と大魔導士に許してもらった。写本が出回って、それが吟遊詩人たちに歌われ、さまざまに脚色されていった。

 私とドナートは幸せな人生を送ったと思う。
 のちに、英雄王とか、竜騎士王とか呼ばれたらしい。

 アルデリア王国は少しずつザラド帝国に代わって大国の道を歩み、そしていつかは滅ぶだろう。
 精霊湖は私が没した後は、精霊の住む禁足地として人の出入りを禁じるようにした。
 それもまた、時が移り行けば忘れられてしまうだろうか。

 願わくば、守護龍と大魔導士に見限られないような、人々に優しい国であらんことを。

 END
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