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神のみぞ知る
しおりを挟む「ここが重罰刑を受けた者たちが今なお地の底深く生きていると言われています」
目の前に広がる何も育たない不毛の地。
そのところどころに番号の書かれた看板がたっている。
草の生えたところ、生えないところ。
草の生えたところには何もない。
草の生えないところの地下に、今でも罰を受けている者たちがいるという。
番号は地下の罪人の名前だ。
手元の資料に目を落とすと番号の横に犯した罪と地下に落とされた年月日も記載されている。
「彼らは神に許されるその日まで地下で生き続けます」
「この十三番と十四番ってアレでしょ? 罪を認めなかった息子と罰を与えなかった国王。それで国が滅びたって」
「自分が傷付けて車椅子の生活にした女の子を侮辱する手紙を送ったんだよな。その子の父親っつーのが当時の王様の従弟で、その手紙が原因で滅ぼされたって」
「その女の子は王子様と結婚して幸せになれたのよね。『公女シリーズ』は私の好きな話よ」
「健気よねー。だから周りも彼女を献身に支えて」
「王子様って全部投げ出して彼女のために生きたのよ」
「でも、それが国の福祉政策の発展になったのよね」
きゃいきゃいと自由に話す少年少女たち。
今日は歴史見学。
身近にある教育の場に一番相応しい『生き地獄』と呼ばれる自然牢。
地下深くは磁場の関係で死ねないらしい。
試しに一番目の罪人の牢が作られた。
何もない無機質な牢。
部屋の中央の天井から吊り下げられた鎖がここが牢だと示している。
そこに入れられた一番は、悪政で国民を苦しめてきた国の独裁者だった。
一番はまだ生きている。
当時も簡単に死なないと分かったため、その後も重罰刑の罪人を地下牢に幽閉した。
「罪を償い、神により死を与えられた牢は地面が陥没します。罪人が奪った生命ひとりにつき百年の罰が与えられているとみられています」
「十三番と十四番は国を滅ぼして何百人もの王族を死なせたよね」
「じゃあまだまだ死ねないんじゃない? 八百年前だからまだ八人しか贖罪できていないもん」
「死ななくていいよ。こんな犯罪者の生まれ変わりなんて一緒に生きたくない」
「生まれ変わっても人にはなれません。木々となり、人々の生活を見守り、自分たちが犯した罪と向き合うのです」
「じゃあ、生まれ変わっても許されないの?」
「許されなくていいよ。こんな穢れた魂なんか」
あきた少年少女たちは隣の丘へと移動を始めていた。
そこにある公園にはレストランが併設されている。
ここは植物園がメインで『生き地獄』はオマケのようなもの。
そしてレストランの食事が終われば楽しい自由時間。
すでに興味はレストランでなにを食べるかに向いていた。
地の底深くで朧気に会話を聞いていた罪人二人は最後に届いたはっきりした声に過去の記憶を揺さぶられた。
王族でもない少女が処刑される前に二人に向けた言葉。
「神は穢れた魂の転生を認めない!」
彼女が向けた強い目。
邂逅した言葉。
罪深い自分たち。
すでに時間の概念はない。
世界から切り離された彼らは、何かを奪われ続けるだけの存在。
それが世界の浄化と隣の植物園に、そして平和に使われていることは神のみぞ知る。
(了)
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