オレの世界史ー冒険者を甘く見てはいけません-

アーエル

文字の大きさ
4 / 5

きっとすぐには気付きもしないだろう

しおりを挟む


冒険者ギルドもむごい罰則を与えるもんだな。
いつもそう思うが、正式な罰の発動方法は冒険者学校で習う。
オレもそれを身につけたからギルドの規則に従順だし、規則を破ろうとも思わない。

冒険者ギルドに登録すればすぐに冒険者として活動できる。
しかし冒険者ギルドに登録する前に学校で学ぶことで、罰の起動など冒険者の基礎知識を得ることが出来る。
さらに初歩魔法から武術の基礎もひととおり習える。
何より魔導具の使い方を教わってから学校を卒業する。
授業で実際に使っていた魔導具はそのまま与えられるだけでなく、成績によっては卒業の際に貴重な魔導具を与えられることもある。

もちろんオレ以外にも卒業生はいる。
しかし卒業後は世界各国に散らばるため、滅多に会うことはない。
ただ、会えばなんとなくわかる。
卒業と同時に与えられる魔導具が共鳴するからだ。
……残念ながら一度も会ったことはないけど。
そして学校を卒業してからもいくつか試練がある。

『クランに一定期間所属すること』

それも試練のひとつだ。
ソロのオレがクランに加わっていたのもそれが理由だ。
すでにそれも既定の日数は超えたため試練はクリアしている。
同時に『製造部門を修練する』もクリアした。
これで卒業後の試練は全部クリアできた。
ただ、この冒険者ギルドから報告するのが嫌で、別の町に行くことにした。
卒業後の試練を全部クリアすることで報酬が届く。
ここのギルドで受け取ったりしたら、カルトリアに情報を漏らされそうで嫌なのだ。
歴史の浅いギルドがクランの顔色を窺い、ご機嫌伺いをしている日和見気質なのはどこでも同じことだろう。
そして、大罪を犯してもギルドの権限を振り翳して揉み消す可能性もある。
学校に認められた卒業生は、学校から与えられた権限で自らの手で罰を与えることができる。
それを使えるのは、自分が巻き込まれた場合のみ。
そして今回はオレが被害者のため、オレ自身で罰を与えたのだ。
これはギルドとは別の罰だ。
ただ、ギルドから受ける罰はオレから罰を受けたことで軽くなる。
オレのクラン追放に加担した者たちからの慰謝料は、確認していないがすでに支払われた頃だろう。
罪が明らかになった時点で、当人の所持金や所有物から被害者へ自動で支払われる。
たとえ罰で魔物になったとしても討伐されたとしても、逃げ得や死に得にはならない。
所属しているギルドやクランからも慰謝料が支払われるが……慰謝料の総額が足りなければ、クランやギルドが肩代わりすることになる。
運命共同体である以上、仲間の尻拭いで身を滅ぼすことも借金を背負うこともあるのだ。

「アキュート。君たちには救いになるオレからの罰は与えない。その分、この数日以内に支払う慰謝料は今のクランで保有しているほぼすべてを失うほどの額になる」

カルトリアの表クラン『カトレア』は解散して、残されたのはアキュートたち裏クランの冒険者だけだ。
ひと月前に、カトレアに所属していた冒険者たちは別の町に移るためクランを抜けた。
アキュートたちは気づかなかったのか、全員が抜けたとは思わなかったのか。
……たぶん後者だろう。
冒険者としてダンジョンに送り込んでで働かせて、アキュートたちは屋敷アジトで女性と快楽にふける。
そんなリーダーたちに誰がついて行くというのか。
ルルドというあの町がアキュートたちの悪事の温床になっているのであれば、ルルドから離れるのが一番いい手だろう。

カルトリアがオレを追放したことで支払う額は相当のものだ。
残るのはクランの屋敷アジトと3日で尽きる僅かな食糧、地下にある水で薄めたたっぷりのワイン、そして馬のいない簡素な荷馬車が1台くらいだ。
所持金も武器も買い漁った宝石も。
所有権がオレに移されて残っていないことも……きっとすぐには気付きもしないだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...