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中編:1
しおりを挟む「ここは、どこだ?」
ライナスが目を覚ましたのは乾燥した風が吹く道の端。
大地も建物も乾いた土でできたこの場所にライナスは見覚えがない。
そんな彼の視界に牛刀が入った。
驚いて顔を上げたライナスに彼らはわからない言葉を繰り返す。
「xxx! xxxxx、xxx 」
「ま、待ってくれ。何を言っているのか……」
ライナスに彼らが何を言っているのかわからない。
ただ軽く左右に首を振ったら、言葉が通じないと分かったようだ。
屈強な男たちがライナスの両腕を左右から掴んで立ち上がらせた。
牛刀を持つ男が大きく腕を回した姿を見て、来いという意味だと気付いた。
しかし、それは半分しかあっていなかった。
両腕を掴む男たちは腕を離さず、ライナスの歩幅を気にもせず。
引きずるように引っ張っていった。
大きな宮殿、最初にそう思ったのはこの国の神殿だった。
私は少しづつ思い出していた。
ここがどこかわからない。
しかし、ここが神々が言っていた世界なのだと理解はできた。
〈自分たちも経験すればいいわ〉
私から愛しい人を奪った女神が私に、いや私たちにそう言った。
違う世界で帰ることのできない苦しみを抱えて生きていけばいい、と。
そんなことが許されるはずがない。
私たちのその言葉は、もうひとりの神の言葉が遮った。
〈君たちがこの世界に残れば世界を破壊させることになる。この世界のために快く出ていってくれ〉
私はその言葉に全身を震わせていた。
『この世界のため』
何度その言葉を繰り返してきたのか。
『それができない役立たずなら、今すぐ処刑するぞ』
何度そう脅して剣を床に突き刺したか。
『手足を失えば、お前は性処理の道具になるだけだ』
そう言って、長かった髪を掴んで切り落とそうとして……現れた膜で失敗した。
あの神殿にいた中で全身が転移の光に包まれなかったのは、神官長たち神殿で生活する『神の存在を信じている連中』くらいだった。
あの頃は、すぐに戻れる……長くても数年で元の世界に帰れると信じていた。
しかし私は二十年たってもこの神殿に飼われている。
私の髪の色はこの国では珍しいらしい。
逃げられないように両足の腱を切られた私は檻の中に閉じ込められて見世物にされている。
この二十年、私は全裸にちかい衣装を着せられムチを打たれて、夜には男たちの相手をさせられている。
私は不老でも不死でもない。
……そのはずなのに私は老けない。
何故か、打たれたムチの傷も二時間で消えてしまう。
それでも切り傷は治らないようで、足の腱は回復していない。
そのため、私は動物たちのように四つん這いで移動するしかなかった。
檻の外ではロープのついた首輪をして移動する。
動物たちの相手すらさせられている。
今日も誰か……人か動物かわからないが、相手をさせられるために見世物の舞台に向かっているところだ。
ここにきてようやく自分が、このようなことを召喚した少女にしようとしていたのだと気付いた。
私が脅した言葉をすべて実践していたら、いま私自身が受けている行為すべてを行なっていたのだ。
こんなこと謝って許されることではない。
それに気付いた今は、神に謝罪を繰り返す。
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