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後編:2
しおりを挟む「おい、こいつか? 『バケモノ姫』と呼ばれる女は」
そんな声が眠っていた私のそばで聞こえた。
『ああ、またか』と思った。
私が老いず、死なず。
すでに百年は生きている。
その物珍しさから、私は何度も主人に飼われては飽きられ売られてきた。
「言葉は失われていますが声は残っています」
「それは面白い。店主、このモノを買おう」
「はい、毎度あり」
私は目を疑った。
そこにいたのは……私の婚約者だった王子にそっくりだった人。
彼はあの優しい顔と声で私に命じた。
「目の前でその奴隷たちに抱かれて俺を楽しませろ」
私は彼に似た男の前で、奴隷たちの褒美として抱かれ続けた。
そんな私を嘲笑いながら、彼はほかの綺麗な女性たちを私の前で抱く。
彼は私の愛した婚約者ではない。
でも、あの優しい顔も声も……すべて覚えている。
婚前交渉が許されていなかったけど、私たちは何度も愛を重ねた。
そんな彼はあのとき一緒にいなかった。
彼は私という次期女王の王配。
でも婚姻前ということで同席が許されなかった。
隣国で『愛のない誓い』を実行しているであろう時間、私は嫉妬していた。
そのため、腕輪をつけた彼女を奴隷の褒美に与えるつもりだった。
『愛しい人と飼ってあげる』のだから、私を愉しませるのは当然ではないか。
彼女にさせるつもりだったことを私がさせられている。
なぜ……?
私はあなたに抱かれながらその様子を嘲笑うはずだったのに。
ここは私たちの愛し合った世界ではない。
そっくりなのに……彼のすべてを私の身体は覚えているのに……彼は私の婚約者ではない。
「ああ、かわいいよ。こんな顔が見られる僕はなんて幸せなんだ」
いつも一人称は俺なのに、抱き合って囁いているときは僕になるクセ。
彼は違うのに……そんなところまで愛した人と同じだなんて。
彼の周りにいるのは私と婚約者を奪い合った女たちによく似た連中だった。
彼に抱かれる女たちに嫉妬し、彼女たちにかけられる声を、言葉を、目を閉じて私への言葉に置き換える。
それでも神は残酷だ。
彼は年老いて死んでしまった。
女たちは彼との子を成して、幸せそうに笑っていた。
そんな彼女たちも死んでいった。
ただ、私はその後も『奴隷たちの褒美』として当主の前で毎日抱かれるバケモノ姫として生きていた。
そして再び転生の輪が絡み合う。
婚約者にそっくりな彼が私の前に現れた。
しかしまた、私が蹴落とした女たちを伴って。
私は彼を楽しませる道具。
彼の愛は私に向けられない。
遊びで抱かれることもない。
彼から与えられるのはムチと嘲笑い。
愛情が残っているからこそ、私は彼がこの世界に生きていることを憎むようになってしまった。
せめて私が彼を忘れられたらよかったのに……
彼は私を……二度と愛してくれない。
そして何度目かの彼は、目の前で奴隷たちの褒美として身体を差し出す私をみて今日も嘲笑う。
(完)
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