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第一章
第11話
「ハーイ!はうあーゆー?」
超をいくつもつけて花をあしらってBGMにクラッカーを何発も鳴らしたくらいに相手をバカにした口調で、昨日の部屋へと姿を現した。
昨日のドアが現れた時点で分かっていたのだろう。
ニコニコ笑顔で出迎えてくれたドリトスとセルヴァン。
対してたった1日で数十年は経ったかのようなレイソル、マクニカ、アストラム。
神々の抗議・・・というか『脅迫』に精神が負けたんだろう。
この世界に『精神科』ってあるんかな?
『専門に分かれていませんよ』
『治療は『治療師』が回復魔法で治しますから』
おやおや。アリスティアラ以外の神様もチャット参加開始ですか。
じゃあ質問。
それだとオツム関係も治る?
『連中を見たとおり『『『無理』です!』』』
気持ちいいくらいズバリと言い切ったね~。
最後は見事にハモったし。
『オツムが治るくらいなら性格も簡単に治せます』
そりゃそうだ。
「そこの連中は何してるの?生きてるの?死んでるの?ゾンビ化してるの?アストラムは腰に剣を差してるから『死霊騎士』もどき?」
私の指摘にも反応が鈍い3人に苦笑するドリトス。
セルヴァンは昨日の気後れが嘘のように、私を抱え込んで肘掛けイスに移動。
今は昨日同様『膝だっこ』状態。
『頭ナデナデ』のオプション付き。
夢心地で胸のモフモフに顔をスリスリしつつ、それでも『本日の用件』は忘れていない。
エラいぞ私!
ドリトスとセルヴァンの話だと、昨日の一件で神殿に沢山の神々から抗議や苦情が殺到したらしい。
中には『魚が一匹も取れないようにしてやるぞ』という脅迫めいたものもあったらしい。
『なーに。魚を大陸の周囲の海流から隣の海流に移してやるだけさ』
『私は動物がオスしか生まれないようにするって言ったわ』
それには『この世界で生きている種族すべて』も含まれている気がしますが?
『や~ね~。この大陸だけよ。他の大陸には影響ないわ。ここの大陸は一度滅びに瀕した方が良いに決まってるじゃない』
まあ・・・このアリステイド大陸の人たちは、他に大陸があるって知らないから、この大陸が滅びたら『この世界の終わり』なんて思いこむわね。
『途中に『魔族の住む大陸』がありますからね。近付こうとしませんよ。もちろんその先へ行こうとも思いません』
『冒険』や『夢』とか見ない連中だな。
某アニメの主役みたいに、夢を持って大海を小舟で・・・
『無謀ですね』
『無茶な奴だな』
そりゃあマンガでアニメですから。
『雲や濃度のある霧で太陽光を塞いで作物を実らせないようにしたら、何年で滅ぶかな~』
・・・それ、伝えたんですか?
『モチロン』
なんて返事するのかな?
『とりあえず今日からこの国は曇天続きにしている』
・・・だから青ざめているのね。
じゃあ、私からも。『浄化対象外』!
3人には浄化がされない魔法をかけてあげた。
気が向いたら解除してあげる。
忘れても『一代限り』にしてあげたから、他の人には影響ないわ。
・・・アラアラ?
3人とも顔色がさらに悪くなった気がするけど?
うん。気のせいだよね。
神様の罰のせいだよね。
《・・・助ケテ 》
え?誰?
不意に聞こえた小さくかすかな声に周りを見回す。
でもここには年上しかいない。
「どうした?」
私の様子にセルヴァンが心配そうに声をかけてきた。
ドリトスも固い表情で周りを見回している。
《・・・助ケテ・・・・・・ボクタチヲ・・・助ケテ》
また聞こえた。
『どうしました?』
アリスティアラが私を心配している声がする。
今は、またここに飛び出さないように、他の神々と共にいる。
さっきの声よりさらに小さくかすかな声がいくつも聞こえる。
そのどれもが助けを求めてる・・・
「声、が・・・助けを求める声が・・・」
どこから?
外?外から?
ねぇ。君たちはダレ?
ドコにいるの?
私でも助けられる?
ポンッと現れたハンドくんたちが10対20人。
白手袋のハンドくんたちに連れられて、大きな窓の前へ進む。
他のハンドくんたちが窓を全開にする。
柔らかな風が私の身体を包む。
『大丈夫?』
風を司る女神が風を使って私を抱きしめる。
それはなんとなく気配で分かった。
・・・でも。
ずっと感じてる。かすかな気配が近付いてくる空を見上げる。
ふわっと白く丸い『わたぼうし』が目の前に落ちてきた。
「魔物!」
「離れて!」
後ろからセルヴァンの緊張した声が聞こえた。
でも私の意識は目の前の『わたぼうし』に集中している。
両手を差し出すと『わたぼうし』は手のひらにフワリと着地した。
「もしかして・・・『ケセラン・パサラン』?」
私の世界では『UMAの一つ』と呼ばれている生命体に似ている。
この世界から私の世界に迷い込んだのが『ケセラン・パサラン』じゃないのだろうか?
「ねえ。さっきの声はキミたち?どうしたの?」
《ボクタチヲ、助ケテ》
《モウ、疲レタンダ》
「どうしたらいいの?」
《ボクタチヲ『魔石』ニ戻シテ》
「・・・魔石に戻したらどうなるの?」
もしかして死んじゃうの?
『いや。この魔物たちは元々『鉱石』だ。それに瘴気が蓄積したものが『魔石』。魔石がさらに瘴気を溜め込んで『魔物』となる』
『魔石が力を無くして鉱石に戻っても、またゆっくりと瘴気を溜め込んで魔石となり魔物になっていく』
創造神が説明してくれる。
・・・でも『この子たち』が『いなくなる』ことに違いはないよ。
《ボクタチハ、大丈夫》
《死ナナイ。タダ魔石ノ中デ眠ルダケ》
《コノ世界ヲ、アチコチ見テ回ッタ》
《ソノ時ノ事ヲ『夢』ニ見テ眠ッテルダケ》
「もう・・・いいの?」
《ウン》
《ボクタチヲ、助ケテクレル?》
『彼らはこのまま疲れを蓄積したら、自我を無くして『人を襲う魔物』となってしまいます』
《ボクタチハ、コノ世界ノ『綺麗ナモノ』ヲ一杯見タンダ》
《コノ綺麗ナ世界ヲ、ボクタチノ手デ壊シタクナイ》
彼らの言葉とともに、私の頭の中には『きれいな夕日』や『雨上がりの虹』『色とりどりの花が咲いた花畑』『森の中の木洩れ日』など、彼らが見たであろう綺麗な風景が映し出された。
「本当に綺麗だね」
・・・・・・どうしたらこの子たちの『願い』を叶えてあげられる?
『手に光を意識して。それが『浄化』だよ』
窓の外では沢山の気配を感じる。
床に胡座をかいて、手のひらに乗っているケセラン・パサランに「いいの?」と確認する。
《ウン。オ願イ》
手のひらに意識を向けると気が流れて光が集中する。
それと同時にケセラン・パサランが少しずつ光の粒子となって『青紫色』の魔石が手のひらに残される。
それもすぐにアイテムボックスに自動で収納される。
メニューには『魔石を貴重品ボックスに収納しました』と表示された。
次の子が手のひらにストンと入ってきた。
「楽しかった?」と聞いたら頷くように全身を上下に揺らし《ミンナト一緒ダッタカラ》と楽しそうに返事をした。
手のひらに光を集めると《アリガトウ。マタ会オウネ》とお礼を言って魔石に戻っていった。
どのくらい続けていただろう。
窓の外は夕日も沈み星空が見えている。
一体ずつに話をしてから魔石に戻しているので、時間が掛かっている。
でも『機械的』に淡々と、仕事のように『魔石に戻す』なんて私には出来なかった。
私の背中には何時からか、セルヴァンが背もたれのように私の身体を支えてくれている。
ドリトスも横に立って私を見守っている。
《今マデアリガトウ。ボクガ最後ダヨ》
手のひらに乗ったケセラン・パサランが、私にお礼を言って自分が最後だと教えてくれた。
《ボクタチヲ使ッテネ。ソウシタラ、マタ魔石ニナッテ、魔物ニ生マレタラ、ミンナデ『マダ見テイナイ綺麗ナモノ』ヲ一杯見ルンダ》
「うん。分かった。その時は、また綺麗な景色を私にも見せてくれる?」
《イイヨ。見セテアゲル》
「ありがとう」
最後の子が魔石に戻ったところで、私は意識を手放した。
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