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第十章

第239話

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「さ・・・ヒナルク様。
次のダンジョンにはヒナルク様は留守番をお願いしてもよろしいでしょうか?」

「それは一体・・・何をするつもり?」

次のダンジョンをどこにするか話し合おうとした時に、ロンドベルから提案された。

「『スイッチ』の練習と私たち3人の動きの確認です。
今はついていけていると思っているのですが、自惚うぬぼれが強いような気がします」

〖 それは『あの二人』ですね 〗

「・・・ええ。
それまでの戦い方と実力の差があることは聞いています。
ですが、最後のダンジョンで私たち3人で戦った時です。
『二手』ですから30体の半分、15体が受け持ちだったはずです。
ですが・・・私が倒したのは22体」

「・・・ハンドくん。
スゥが言った通りだったね」

〖 はい。・・・スゥが来ました 〗

ハンドくんの言葉に合わせて廊下に続くドアが開かれた。

「ご主人。作戦会議中に申し訳ございません」

「いや。ちょうど良かったよ。
『例の話』が出たところだ」

「スゥ。いまヒナルク様から聞いたところだったんだが。
気付いていたって?」

「ダンジョンでウルフの討伐数がおかしかったことでしょうか?」

「そうです」

「私だけでなく、シーナとルーナも気付いています」

そう言うとスゥは「私のせいです。申し訳ございません」と頭を下げて謝罪する。

「待ってください。
何故頭を下げるのですか?」

〖 スゥが中央にいる時、あの二人の魔物をいくらか肩代わりしています。
それが、ロンドベルと二手に分かれて討伐した時に数が違った理由です 〗

「そうだったんですか。
スゥ。頭を上げてください。
これはスゥのせいではありません」

「違うよ、ベルくん。
残念だけどこれはスゥの責任。
スゥ。以前『優しさは相手のためにならない』と話したよね?」

「はい。その通りです。
私がご主人の言葉を忘れ、『共闘のルール』を破ってしまったことが原因です」

ずっと頭を下げ続けるスゥ。
ロンドベルがさくらに目を向けるが、さくらは何も言う気はないようで、黙ってスゥを見ている。

〖 スゥ。この失態はどう挽回する気ですか? 〗

「はい。お許し頂けるのであれば、ご主人にはこちらでお休みいただき、私たちだけで以前入った『軽めのダンジョン』に入って来たいと思っています」

「それはどこ?」

「はい。ウルフとベアのダンジョンです」

「ハンドくん。どう?」

〖 スゥを指導しているハンドくん仲間たちが対応出来るでしょう。
ですが、今の状態ならちょっとした『気のゆるみ』で大怪我をするでしょう。
今回のように戦闘を見直す場合には許可出来ません。
そうですね。『ウルフと一角ウサギ』なら許可しましょう 〗

「あの岩陰のダンジョンのこと?」

〖 はい。その通りです。
あそこは階層も10階までと浅く、ウルフのレベルはあの2人でも十分倒せる範囲内です。
スゥ。戦闘を見直す場合は『想像以上に低いランク』を選びなさい。
実力を確認したい場合は『自分が十分倒せるランク』を選びなさい。
ご主人を同行させないならリーダーはスゥあなたです。
自惚れや自意識過剰は全滅を意味します 〗

「はい。分かりました。
『ウルフと一角ウサギ』のダンジョンに入ります」

スゥは『ツバサ』では第二位の強さを持っている。
だからこそ『さくらの代わり』が出来るようにならなくてはならない。

「ベルくんもそれでいい?」

「はい。スゥ。厳しい指導をお願いします。
それは巡り巡って私たちのためになることです」

「はい。私の甘さでご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」

「と言うことで、今後の予定は白紙。
でも『しっかり休憩』はしなくちゃね」

〖 5日間の休憩は個別で過ごしましょう。
スゥ。その間に反省しておきなさい。
ロンドベルやジョシュアたちを見る度に後悔して謝罪をしていては、誰のためにもなりません 〗

「はい。同じあやまちを二度と繰り返しません」

「うん。無理せず頑張って」

「はい。ありがとうございます」

部屋に入って来た時に暗かったスゥの目が、部屋を出る時には真っ直ぐな目に戻っていた。
『さくらの代わり』はスゥにとって何より大切な任務だ。
その責任感があるからこそ、立ち直ることが出来たのだろう。

「と言うことで!
お昼寝ターイム!」

ポーンッとベッドに飛び込むさくら。
しかし、空中でハンドくんたちに掴まれて、ベッドに着地出来なかった。

「やーん。お昼寝する~」

〖 おや?
『10時のおやつ』はいりませんでしたか? 〗

「いる!食べる!」

〖 じゃあ、テーブルに戻りましょう。
ロンドベル。
ジョシュアたちに説明してもらえますか?〗

「隣にいないの?」

〖 はい。ここで作戦会議をしているのを知っているはずですが。
屋台に出かけていますね。
彼女たちは料理をしないため、食事をアイテムボックスに詰め込みたいのは分かりますが 〗

「『共闘解除』はダメだよ。
たぶん『後宮生活』で一般常識が欠けているんじゃない?」

「それとなくうながしてみます」

「ハンドくんが暴走する前に大人しくさせてね。
ハンドくん。『紙のハリセン』以外はダメだよ」

〖 大丈夫です。
死体は見つからないように・・・ 〗

「ダメだよ」

「ヒナルク様。
必ず心を入れ替えるようにしつけます」

ロンドベルはハンドくんが振る、武器のハリセンの威力を知っている。
もちろん紙のハリセンの脅威も。
だからこそ、2人を止めようと心に誓った。
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