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「………………すまない」
しおりを挟むガンッと頭部に衝撃が走った。
足下に落ちているのはヒックスの握りこぶしほどの大きさの石。
ヒックスの頭に石が投げつけられたのだ。
振り向いた彼の視界に入ったのは涙をこらえた少年の姿。
「死ねよ、クズ!」
「坊ちゃん、ダメです」
「コイツらが僕らの家を奪ったんだ!」
その言葉でヒックスは理解した。
確か国は『領地ふたつ分』に減らされた、と。
彼は領地を取り上げられた領主の子。
さっきまで聞こえていた話から、王たちは王城から逃げ出してここに辿り着いた。
そして領主たちを屋敷から追い出した。
王たちが逃げ出さなければ、ここは慰謝料として接収されていたのだろう。
周りの目も憎しみを含んでいる。
今までたいした援助もなく特筆する協力もしてこなかった王家が、突然乗り込んできたのだから……
「………………すまない」
ヒックスの口からこぼれ落ちた謝罪。
それはその場にいた一部のみに届いた。
この痛みは彼らの痛み。
ヒックスは痛みを表に出さず、王子として前を向いて歩いた。
自分の犯した罪の痛さと周囲から罵られる言葉を受けながら。
「貴様、よくも堂々と私の前に立つことができたな」
自身が過去に犯した罪を忘却の河に流した国王が、家具ごとぶん捕った屋敷で踏ん反り返っていた。
「父上と王太子が何をしたか教えていただきましたが?」
そう返したヒックスの言葉で、国王専用の忘却の河が逆流し、一瞬で過去の罪が手元へ戻ってきた。
それを今度は遠いお空へ投げ飛ばすついでにヒックスを突き飛ばす。
そうすることで、今まで自分の都合の悪いことを目の前から片付けてきた。
「お前がこの原因を作った自覚はないのか!」
無抵抗のヒックスは後ろへ倒れて後頭部を強打した。
ここは王城ではない。
床に絨毯は張られていなかった。
サロンの石畳……に、ヒックスは後頭部を打ちつけたのだ。
「ヒックス……?」
目を開いたヒックスは、兄の声にぴくりとも動かない。
「何してるの? 早く起きなさい」
王妃の言葉に返事がない。
「ヒックス殿下?」
ヒックスに近付いた宰相は、彼の身体から魂が抜けているのに気づいた。
国王の手による死。
それが国民に知られると、国民は手に武器とはいえない物を手に蜂起した。
あるものはフライパンを。
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