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長い眠りから二人はほぼ同時に目を覚ました。
視界に広がるのは、自分たちが住む屋敷の天井ではなく無機質な白い天井。
『ここはどこだ?』
そう声をだそうとして失敗した。
声がでなかったのだ。
それもそうだ。
二人は長く眠っていたため全身の機能が衰退して動かない。
さらに、無意識に全身を引っ掻くため治療行為の一環として拘束具を着せられていた。
そのことを二人は理解していない。
布団がかけられていると勘違いしていた。
二人の間にはカーテンで目隠しされており、隣に誰かがいると気配でわかるもののそれが誰かもわからない。
もしお互いを見ることができたら、相手の姿が自分にも起きているとわかっただろう。
……わかったところで声も出ないし身動きもできないが。
「先生! 二人が目を覚ましています!」
足元の方から女性の声がしてそちらへ顔を向けると、開いた扉から複数の看護師の姿が見えていた。
「まあ、聞きたいことがあるだろう。しかし、声がだせない以上、何を知りたいかわからぬ。そのため、こちらから話をさせてもらう」
そう前置きした治療院の院長は、様々なチェックと検査を受けた二人を見やる。
今は拘束具の上から布団をかけてお互いの姿がわからないようにされて、カーテンを開かれている。
治療と称して鎮静剤を打たれた二人に意思はあれど反論などない。
二人はわずかに動かせる頭を小さく縦に振った。
「では、あなたたちの顔に描かれているものだが……それは『召喚獣さまのお絵かき』とよばれるもの。悪事に加担したり、人を害する計画を実行に移せば全身に様々な罰を受ける。今ではその絵に理由があるといわれている」
召喚獣たちがこのことを聞いたら否定する。
実際にはそんなものはないのだ。
召喚獣たちは始めたら思いの外面白くて、世話役をいじめる人たちを中心にお絵かきを始めただけ。
そして、その傑作が消されないように固定させた。
その代わりに害意を受けないよう保護しているだけだ。
保護する理由も『死んだらせっかくの傑作が失われてしまうから』ということを知っているのは召喚師のみ。
なんにでも意味を求める人間たちに真実は必要がない。
求める結果が出るまで失敗を繰り返す。
院長の言葉は、そんな彼らが求めた仮定である。
「あなたたちは皮膚を掻きむしり、患部から出た膿を指に付けた状態で身体のありとあらゆる場所に触れた。よって患部を広げてしまった。血が滲んだ場所もあった。……一時期重篤な状態に陥っていたが無事に回復できたようで何よりだ」
『どの口がいっている』
院長の言葉を誰かが聞いていたら陰でそう突っ込んだだろう。
薬の作用で昏睡していた二人を『召喚獣のお絵かき』の研究材料として差し出す代わりに多大な協力費を受け取っていた。
二人が目を覚ますと同時に薄まりはじめた顔のペインティング。
今はうっすらとしか残っていない。
治療と称した投薬をしたのは前日。
昏睡して目覚めないはずの量が中和されていた。
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