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第一章
7.陰ながら感謝されているかもしれない
しおりを挟むカバンの中に入れた建物は、それだけでフォルダがつくられていた。
フォルダ【統括ギルド】
建物
・宿
・酒場
・売店
・冒険者ギルド
・職人ギルド
・商人ギルド
Etc…
統括ギルドで国内のギルドが集まっていたことから、ギルドごとでブロックに分けられていた。
その中はさらに細分化されていて、ギルドの倉庫やギルドに設置されていた備品がわかりやすくリストアップされて見やすくなった。
・酒場
丸テーブル1卓と椅子4脚セット/190(中古15)
正方形テーブル1卓と椅子4脚セット/190(中古13)
長方形テーブル1卓と椅子6脚セット/200(中古29)
カウンターテーブル/10(中古1)
カウンターチェアー/173(中古16)
etc…
酒場では喧嘩が多く、壊れたり壊されたりしやすい。
そのせいか、交換用と思しき大量の在庫が揃っている。
ゴブレットの500個はともかく、未使用の皿の枚数がどの大きさも数千枚となっていたのには驚きしかなかった。
そして酒や食材は種類や本数、個数などで管理されている。
ありがたいのは、酒場には冷却保管室が設置されているため傷む心配がない点だ。
だからこの先何年も食材を購入しなくてすみそうだ。
僕はひと通り自炊できる。
外食より自炊の方が無駄遣いしなくて済むからだ。
そして、子どもだとの理由で夕食時に酒場へ入れない。
宿屋や食堂と併設なら入れるけど、たとえ食事のみの利用でもダメなのだ。
主に酔っ払いの絡みが原因らしい。
そんなの酒にのまれる連中が悪いとも思うが、問題を回避するのも店にしてみれば当然らしい。
そうなると、屋台で買って帰るか自分で作るしかない。
とはいえ、宿に泊まっていたら厨房を借りるということもできない。
そんな事情から、根無草の僕たちは宿ではなく一軒家を購入する。
短期の滞在だったり、祭事で地方から遊びに来た旅行者でアパルトマンを借りる人もいる。
そうなると前に借りた人の起こしたトラブルに巻き込まれたり、部屋を間違えた人……特に酔っ払いが非常識な時間に訪問する。
日付も変わった時間に訪問されてもドアを開ける人はいない。
そのため何故か自分の部屋に入れないと思い込んだ酔っ払いが部屋の外で騒ぎを起こす。
近所迷惑並みにドアを叩き、喚き、騒いで暴れる程度なら可愛いものだ。
酔っ払いになるとドアを蹴破ったり、得物でドアと壁を壊したり、部屋を住人ごと燃やしたり、近隣の建物と寝ている住人を巻き込んで焼き滅ぼしたりという事件に発展する。
これまでも、事件で生命を落とした商人や冒険者もいれば、殺人事件として絞首刑や斬首刑、車裂き刑で処刑された人もいる。
事件が大きければ、連座で処刑される人も出てくる。
そのほとんどが『一緒に呑んでいた人』だ。
「前後不覚になるまで呑ませた」
誰だって、そんな理由で一緒に処刑なんてされたくないだろう。
……そんな事件に発展する前に、大抵は警ら隊に取り押さえられて牢屋で3日前後の宿泊になる。
解放されるには、突撃された部屋の人と建物の所有者に迷惑料を支払い、身元保証人を用意して滞在保証金として大金貨1枚(1億ジレット)を支払ったら牢屋から出られる。
身元保証人が用意できなければ、滞在保証金は大金貨2枚(2億ジレット)を支払う。
それができなければ、裁判を受けて命じられた支払額を奴隷商から借金して身を売る。
いわゆる『身売り奴隷』と呼ばれるもので、裁判を受けて身売り奴隷になった犯罪者は奴隷でも最下層の強制奴隷として重労働が科せられる。
強制奴隷は最低限の衣食住は与えられるが、賃金は借金の返済として全額が奴隷商に渡される。
首につけられた首輪は頑丈で簡単には壊れないが、完済したら自動で外れる魔導具らしい。
期限はなく、奴隷商から自分を買い戻すことで自由になれるというものだ。
仕事は港に着岸する貨物船の荷役夫から、魔物の凶化で壊れた街道や砦の改修工事と山や森の倒木撤去に保全活動。
重労働だからこそ賃金は良いため、手っ取り早く稼ぎたい労働者も多く働いている。
そんな労働者は3ヶ月の短期契約が多く、奴隷から解放された人も短期契約で稼いでから町へ向かう。
やる気があれば、どんな人でも再起は可能なのだ。
そんな事件に巻き込まれたくないのは誰も同じこと。
そのため戸建てを購入……賃貸業が扱う商品には戸建てが含まれていないため、安全を買う意味でも購入して、町を去るときに建物を売却する。
さすがに戸建てを間違える酔っ払いはいない。
僕の場合は戸建てに結界を張っているため、知らないうちに消滅していることもあるようだ。
「悪意を持っていなければ結界は反応しないんだけどなぁ」
そう、消滅した連中は夜盗や強盗などを生業にしていたようだ。
うわさ話は放っておいても耳にする。
そのほとんどは「悪事がバレそうになって町から逃げ出した」というものだ。
そう噂されるだけあって、『悪名高き』という言葉が相応しい連中だった。
そんな連中がいなくなっても誰も探そうとしない。
ただ、連中の身内や家族が慰謝料や迷惑料の肩代わりをさせられて人生を壊される人が二度と出なくなる点では、陰ながら感謝されているかもしれない。
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