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第一章
10.僕以外に存在しない
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「最近すごいよな」
「ああ、オークションだろ?」
「何処かのギルドから情報が漏れたらしいじゃないか」
「けっこう高値で取り引きされているらしいな。あ~あ、俺も金があれば争奪戦に参加できるのにな」
毎週開催されるオークション。
ここ十週間、内容に気がついたらしいオークション開催者が『何処かから漏れた情報』という特別枠で僕の出品アイテムをまとめた。
これまでに3度、僕の出品アイテムがギルドたちの目から落ちた。
再度の出品で値段が跳ね上がるというトラブルも起こっている。
吊り上げ行為だ。
ただ、僕が吊り上げ行為をしているわけではないことは開催者側は分かっているようで、出品停止になったことはない。
特別枠が作られた経緯として案内が発表されていた。
『出品タイトルから重要な案件に関係するものと判断し統括ギルドに確認をとりました。
統括ギルドからの回答は以下のとおり。
《出品者と思われる相手は事前に交渉のため当ギルドへ直接来られました。
ですが当方側が大変失礼な態度を繰り返したことで、せっかく設けていただいた交渉の場を壊してしまいました。
ですがオークションという形での交渉を継続していただけることになりました。
出品者は誠実な方で出品アイテムに間違いや不正なものは一切ございませんことをここに証言いたします》
上記の事情とここ数回の出品でほかのアイテムの中に埋もれて散見しているアイテムがあったことを鑑みて、特別枠をつくることとしました。
この特別枠に出品されているアイテムに関しても通常どおり入札が可能です。
なお、こちらにまとめた特別枠は同一出品者によるアイテムの中から書類のみを取り扱っております。
出品者本人には確認もご連絡もせずにこのような特別措置をとったことをお詫びいたします。
なお出品者の詳細や書類以外の出品アイテム、落札者に関する質問にはお答えしかねます』
このオークションは商人ギルドから独立した組織だ。
それでも商人ギルドに融通を働くこともなく中立を保っている。
それが今回、その中立を破ったことで一時期は騒ぎになった。
ただし、特別枠で出品されているアイテムの数々が流出した書類だと暗に認めたことで、入札者があふれて入札額も膨れあがった。
特に小金貨10枚(1千万ジレット)で出品した名簿、それが大金貨3枚(3億ジレット)にまであがった。
落札者は「支払えない」などと言えず、落札決定と同時に所持金から3億ジレットが僕に支払われていた。
高いのは、王家の名前があったから。
王妃か貴妃か僕は知らないが、名前の後に『妃』と付いていた。
その後ろには『大金貨1枚』などと硬貨と枚数が書かれていた。
たぶん商人ギルドの業務の一環、貸し付けの書類だろう。
誰が購入したのか、気にはなるが調べる方法がない。
悪用されたら困るとは思わない。
だって僕には関係がないから。
そして僕はいま『世界最大のダンジョン』と呼ばれるダンジョンに入ってマッピングづくり。
ここは今まで一度も攻略されたことはない、未踏破の巨大ダンジョンだ。
ワンフロアを歩いて回るのに1週間以上はかかるし、どこにどんな魔物が現れるかも調査して完全となる。
僕はどんな魔物にも倒されない結界師。
完全なマッピングを完成させられるのは僕だけだろう。
ダンジョンの魔物は魔素溜まり、瘴気溜まりと言われる場所から湧いてでる。
前者は澱んだ空気が溜まったもので、その周囲には弱い魔物や植物系の魔物が棲息している。
後者は魔物が吐き出す瘴気はくぼ地や広場という風の宿りに流されて溜まりやすい。
瘴気が濃くなれば強い魔物が生まれやすく、強い魔物が吐き出した瘴気が溜まればさらに強い魔物が誕生する。
倒せば瘴気を吐き出す強い魔物が減るため攻略しやすくなる。
たまに下の階の魔物が階段を上がってくる。
階段の高さや幅があるため、基本的に強さと大きさが比例する魔物を篩にかけて弱い魔物だけが上がってくる。
言い方を変えれば、下の階層に行けばいくほど強い魔物が待っている。
名声を求めて魔物を避けながら進むことを優先するのではなく、魔物と戦って強さを確認することも生還するために必要だ、と理解されていない。
国によっては冒険者ギルドが推奨という形で指導しているが、ぜんぜん浸透していない。
そして全滅していく。
「注意を促しているということは、それが最善だからだ。って、なんでわかんないのかなー? 『自分だけは大丈夫』とか『自分たちは平気だ』って、その自信はどこからくるんだろう」
昔っから「バカは死ななきゃ治らない」っていうけど……
「バカは死んでも治らない」ともいうよね。
死んだ後で後悔してももう遅いのに。
生前で犯した罪を償っていなければ徳を失い、次は人としてのランクを落として生まれながらの奴隷の子になれればまだマシ。
人間界から落とされて畜生界の家畜……悪事を繰り返していれば畜生界の最下層にあたる魔物に生まれかわる。
そうなったときに後悔しても……二度と人間として生まれることはない。
それは神殿の教えだけど、それはウソではないことを冒険者は知っている。
通常の魔物のドロップアイテムは魔石や鉱石、鉱物や宝石のカケラがほとんどだ。
前世が人間だった魔物の場合、『人間用の装備やアイテム』がドロップアイテムに含まれている。
それは完全体だったり錆びていたり、状態はまちまちだけど。
中には昔に失われた国宝が見つかることも。
例えば僕が死んだら、持ってるアイテムも装備もそのままステータスの中に仕舞われ、生まれ変わったらそれをふたたび使える。
そのため、次の世で食生活で困らないよう食べ物をメインで入れている人や、ドロップアイテムで手に入れた宝石を売らない人もいる。
それで新しい人生をランクアップさせる人もいる。
……僕も、そうして新しい人生を謳歌しているひとりだ。
死んで、疲れた魂を癒したら生まれ変わる。
この世界はそうして巡っている。
前世の記憶はないけど、魔法も覚えていないけど。
徳を積んで神から贈られるスキルだけは『神の天恵』として今後も使える。
そして、歴代の結界師はすべて前世の僕だ。
過去も現在も……結界師は僕以外に存在しない。
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