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第一章
14.恥の上塗りも目論んで
しおりを挟むそんな姉は数年前に僕がいた王都が魔物の凶禍に襲われたとき……神にケンカを売った。
僕がいるのを知っていて魔物の凶禍を引き起こしたことによる抗議だった。
神は姉を通して謝罪してきた。
その前に世界に混乱を起こしたけど……
「『結界があるから大丈夫だと思った』ですって! 『結界があっても魔物に襲われたのよ。人間にだって何十人にも襲われたわ』って訴えたらそんなこと言ったのよ!」
もう信じらんない! と怒った姉は、50日間のストライキを決行。
10日目で自然が自浄できる限度を超えたと精霊たちが慌て出し、15日目に人間界の聖女が「浄化が追いつかない」と泣き出し、18日目に自然界に不具合が起き始め、翌日には小さな異変に気付いた人々が神殿に詰めかけた。
20日目に精霊たちが姉に嘆願し、21日目に四神が姉に打診して失敗。
「いい加減機嫌を直してくれ、ですって⁉︎ 誰が悪いのよ!」
ということで、姉のストライキは継続。
そこで精霊たちは原因が四神だと分かり、いっせいに神界へ突撃。
口々に間違いを指摘されて自分たちの考え方の誤りに気付き、姉のストライキの原因と理由をようやく理解した。
災害が大きくなり出した25日目に、姉に心からの謝罪をした。
「残り25日あります。今度なにか仕出かしたら、今回の分も追加してゆっくり休ませていただきます。……地上に降りてきてもいいかしら? 兄弟姉妹を訪ねてきてもいいわね」
「…………二度としないと誓う。だから仕事に戻ってほしい」
四神が揃って頭を下げる。
神が頭を下げる姿はこれまでにも見られてきた。
神は人間界の常識を知らない。
だからこそ人間界で仕出かしたことが悪いと判断されると、こうして相手に頭を下げる。
しかし、創造神まで頭を下げる姿は今回が初めてだった。
姉が誰よりも立ち位置が高いのは、浄化のスキルを持つ人がいないから。
自分で浄化も出来るが、自然界の必要な場所に浄化を強化させるのが姉のスキルの使い方。
道筋をつくり、強さを加減する。
これが姉の浄化の仕方。
「人間界の聖女みたいに祈れば、その周辺が浄化されるなんて簡単なもんじゃないのよ」
僕たちの国は人間界と神界の間、空の上に僕たちの国がある。
人間界からは『天空の国』と呼ばれていて、地上の様子は湖や噴水を使って水鏡でみることができる。
そのため、空からみて浄化する場所をチェックしているそうだ。
「僕のこと、みえる?」
「はっきりとは見えないわ。でも兄弟姉妹の魔力で分かるのよ」
地上に降りた僕たちは互いの場所が分からないけど、姉たちが気づいて教えてくれる。
兄姉たちが僕に会いに来てくれるのは嬉しい。
嬉しいんだけどね……?
「私の前で弟に因縁つけて、生かしてもらえると思ってるんでしょうねえ?」
僕に因縁つけて、自分を連れて行こうとした破落戸たちを素手で地に埋めた姉は、連中を生き地獄に突き落とした。
「え、と……。罪名は、いったい」
「婦女暴行だよ、婦・女・暴・行。まさか返り討ちにあわせたのだから罪に問わないなんて……言わねえよな?」
「は、はい! すぐに手続きをさせていただきます!」
そのときの姉がしたのは、指1本で国の大臣を呼び寄せたことだった。
「この子、私たちの一番可愛い末っ子」
その言葉ひとつで大臣が青ざめて、姉に倒された破落戸たちは罪名を付けられた。
実際に婦女暴行は犯しているし、重犯罪で裁かれる案件だ。
そして鉱山に坑夫として送られた。
「姉様……? この国で何をしたのですか?」
「実はね」
姉様はこの国の聖女が浄化を持たない偽者だったことに気づいただけでなく、瘴気が溜まって荒れた大地を回復させた。
「ベルンにこの国が荒れていることを聞いてね。ほら、ベルンは人間の聖女を毛嫌いしてるでしょ?」
ベルン姉様が行った浄化を、当時無能だった聖女を据えていた神に仕える人間たちは「聖女が起こした奇蹟」と吹聴して回った。
当然、ベルン姉様は神殿に違うと伝えたが、トップに立つ者が私欲にまみれた者だったことで国民に声と真実は届けられなかった。
それに怒ったベルン姉様はその国の浄化から手を引いた。
神殿で少しは浄化できる神官たちを集めて必死に祈っても浄化は追いつかない。
大金を積んで称号を得ただけの聖女に浄化する能力はない。
国民はようやく「神の御業を聖女が自分の功績にしたのでは?」と疑いの目を持つようになった。
「「「申し訳ございません!!!」」」
神殿に集まった国王たちが平身低頭で謝罪しても、ベルン姉様はけっして許さなかった。
「罪を犯した者をすべて晒し、処刑以外の罰をお与えなさい」
突然現れた女性に困惑の声がもれたものの咎める者はいなかった。
「あ、あなた様は……?」
「私は旅の者。立ち寄った神殿で、この国が『天空の国から浄化の恵みを与えられたにも関わらず、この神殿の聖女が自身の功績にした』と聞きました」
「…………」
ほかの国に知られてはいけない『お国事情』が漏れている。
国内で起きている瘴気騒動は、まだ自然界による浄化が効いているため周辺の国から魔物を誘き寄せてはいない。
しかしそれも長くはもたないだろう。
瘴気の影響で弱っているときに周辺国から侵攻されでもしたら…………戦わずして滅ぶ。
それに気付いて表情が固まった人たち。
しかし、女性は「安心してください」と微笑む。
「大地に溜まった瘴気は私が浄化いたします」
「……して、その代償は?」
「事実を世界に公表すること」
「いやっ、それは……!」
「残念ながら、今後も天空の国からの浄化は望めませんよ?」
良いのですか? と微笑む女性の言葉に神官長は縋った……恥も外聞もなく。
さらなる恥の上塗りをも目論んで。
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