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第七章
第218話
しおりを挟む「平に~。平に~」
そんな言葉が似合う土下座状態で地面に額をこすりつけて必死に謝罪する三組の男たち。『はやく聖魔士くずれを回収して国に帰り隊』、『聖魔士ギルドの名を騙ってバレちゃっ隊』、『聖魔士ギルドの恥の上塗りをしちゃっ隊』の面々だ。
そう、守備隊の詰め所で顔を合わせた二組は相手しか見えなかったようだ。
「マスター⁉︎ どうしてここへ……」
「……『ダンジョン都市で起きた聖魔士たちの犯罪行為』が私のところに報告がなかったな」
「‼︎ そ、それは……」
「何が起きているのか。詳細が私まで届かなかったのはなぜか。ただ言えることは、問い合わせを受けたときに何も知らなかった私は大恥をかいた」
「申し訳ございません‼︎ このような大きな事件だと思わず……。私自身が赴くことで簡単に解決できると甘くみて……」
「甘く見ていたのは私自身の存在じゃないのか?」
「いえ、そのようなことは……」
「…………アホ」
「なんだと‼︎」
二人のやりとりに呆れて呟いた私に、遅れてやってきたのに自己紹介をしない、他称ギルドマスターの男が目くじらをたてて私たちに振り向いて……固まった。
「すっごいね~。呼び出しくらって誰よりも遅れてやってきたのに、自己紹介もしないでケンカを仕掛けた上に睨んできたよ~」
「はい。ここにどんな理由で呼び出されたのか、どちらも忘れているようですね。『大バカにつける薬はない』と言いますが、『アホにもつける薬はない』ようです」
「そういえば『バカは死んでも治らない』とも言いますね。アホも同じでしょうか?」
「コイツらで試しましょうか? 放っとけば殺し合いを始めるみたいですよ」
「片や討ち死に。片や殺人罪で犯罪奴隷」
「争乱罪もお付けしましょう」
「今朝までの言動ですでに全員についていないの?」
「んー? アミュレットの鑑定では『回収し隊』についてないねぇ」
「これまでの言動を続けていれば、遅かれ早かれつきます」
私たち女性陣の、甘さが一滴も入らない会話にダイバたち男性陣が苦笑する。口を挟まないのは、口撃対象に自分が加えられるのを避けるためだ。
「昨日、到着したのが午後だったから『遠路はるばるご苦労さん』って労うつもりでこの話し合いの場を翌日にしたのに。偉そうに重役出勤で謝罪もなし。……こりゃあ、配慮は必要なかったね」
「まったくです。相手を煮るなり焼くなり罵り合うなりしたければ、昨日のうちにすればよかったことです。それを昨日は都市の中を観光したり、屋台村を巡って食べ歩きしたり。ここへは何しにきたのでしょうね」
「その際に屋台村のルールを破り、何度もゴミをポイ捨てしたと『都市部環境課』から抗議文が提出されたようです。一部のゴミは花壇の植え込みに隠すように突っ込まれていた、と。屋台村からも抗議があり、本日より利用禁止処分になっています」
「抗議が出て処分が決まったと言うことは、すでに前科者かあ。じゃあ、サッサと済ませて都市から追い出しちゃえばいいんじゃない?」
私たちの会話に、一瞬で怒りの赤色から自分たちの立場と現状と昨日の惨状を思い出して青色へと顔色を変化させた後発隊。彼らは知らない。すでに顔写真と共にゴミを捨てる場面も植え込みに突っ込まれたゴミもすべて記録されていて、情報部がニュースにしたことを。そして、住人の大半がそのことをすでに知っていることを。
現に彼らは今朝宿を出る時に部屋を引き払うように言われた。彼らは連泊するつもりだったが、前日にその旨を伝えておらず。さらに一泊分の宿泊代しか支払っていない以上、「すでに部屋の予約が入っている」と言われては従うほかない。その時になって、彼らは周囲から無遠慮に向けられる白い目に気付いた様子だったが、部屋の明け渡しに関することだと思ったのか、気にする素振りはなかったらしい。そして、素泊まりにも関わらず朝食を要求して断られた。……というのが、一時間前に届いた情報部からの続報だ。
三十分前に届いた続報では、開業前の屋台村に入ることが出来ず、店舗をもつ飲食業にも入れなかった。『犯罪者お断り』が起動したからだ。
情報部は追跡情報も最終結果もすべて責任を持って報告する。ちなみにいま流された追加情報は『呼び出された守備隊の詰め所には一時間遅れで到着。我々にひと言の謝罪もなく、聖魔士同士で口論を開始』だった。そう、こういう場面では情報部も同席している。公正を期すためだ。
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