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第九章
第393話
両性具有は血筋ではないし、何がキッカケで起きるのかわからないらしい。
「まあ、生まれた直後はわからないんだよ」
「なんで? 両性具有って『両方の性を持っている』んじゃないの? だから、おチン……むぎゅう」
「エミリア。女の子がそんな言葉を軽々しくいうんじゃない」
「むぎゅー、むぎゅー」
私の口を塞いだダイバに抗議するが、ダイバは「だーめだ」と言って手を離してくれない。
「エミリア、見かけはどっちもありなんだよ。たしかに男の子の姿が多いけどね。女の子の姿で生まれることもあるんだよ」
「ああ、私のいとこがそうだったよ。最初は女の子だと思ってたけど、胸が大きくならないなど成長すると周りと違ってきてね。……かわいそうに、その子はいつも怖がっていたよ。自分で女の子を選べると知って『女の子がいい!』っていってね。精神的な方で成長を妨げるとして、八歳だったけど長老たちが女の子にしたんだよ」
儀式は身内だけ同席が許される。しかし、八歳ということでいとこのメリッサさんも許可されたそうだ。ひと通り確認して、それから長老たちがいとこの頭に手を乗せる。
「確認といっても『決めたら変えられないよ』って内容だったね。子供で性を固定させないのは、一時的な感情で選んで後悔するようなことがないようにって理由なんだよ」
そうして、長老たちに魔力を流される。女の子を希望するなら女性の長老たちが魔力を流すことで、体内の魔力を女の性にならしていく。
「子供だったからまだ三時間で済んだよ。大人だと一日がかりさ」
「まあね。男の子の方でも中には幼い時点で選択することもある。だいたいは家族が多くて、両方のいいところも悪いところもみて育ったことが許可される理由なんだけどね」
「性を固定するには、その性の長老が魔力を流す必要があるってこと?」
「ああ、そうだねえ」
ダイバを見上げると、同じことに考えが至ったようだ。私を見たダイバが頷く。
「フレイズが望んだ性になれなかったのは男性の長老がいなかったからってことか?」
ダイバの言葉に親世代が顔を見合わせる。何か違うのだろうか?
「ダイバ、ひとつ誤解がある。……いや、知られていないということか?」
コルデさんの言葉に親世代は困った表情を見せている。
「だいたい二十歳までに性を決めて固定させる。それは知っているか?」
「ああ、それは『二十歳を迎えると性が選べないから』だろ?」
「それはどういう意味だと思う?」
「両性具有のままだから結婚は難しいし、子供ができないってことじゃないのですか?」
「アゴールたちはそういう意味にとっていたか」
「……違うのですね」
アゴールの確認にコルデさんたちは頷く。
「なあ、オヤジ。違うのはアゴールの回答であって、俺が言った『性が選べない』っていうのは当ってるんだな?」
「ああ、お前たちの考えが違うんだ」
ダイバは何か気付いたのだろう。『性が選べない』というが両性具有のままではないという。
「エミリア、アゴール。『見た目と中身の性が違う』って奴を見たことあるか?」
「あるよ、アゴール!」
ダイバの質問にそう返事すると、背後から聞こえた「ちょっとエミリアさん!」と慌てるアゴールの声をかき消すくらいの大笑いが起きて、私はまたフィムの耳にあてられている小さな手を覆った。
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