384 / 791
第九章
第397話
「はい、ダイバ。回復薬」
「さんきゅ」
疲れ切っているダイバに回復薬(小)を差し出すと、寝転がったままフタを外して口にくわえると仰臥位になる。そしてそのままゴキュゴキュと飲み干したダイバの姿に苦笑する。
「おかわり、いる?」
「何味がある?」
「どんなのがいい?」
「さっぱり系」
「じゃあ、ミント」
緑色の液体を渡すと、今度は上半身を起こして一気飲み。
「おいおい、エミリアさんの回復薬って高価だろうが」
「それをあんな風に飲みまくるなんて」
「「「う、うらやましい……」」」
別にタダで渡しているのではない。後払いだけどちゃんと対価はもらっている。
「そろそろ、いけそう?」
トータル五本目の薬瓶を空けたところでダイバに聞くと「ああ」と返事がきた。これすべて同じ容れ物で中身は別物。最初は回復薬だったけど、二本目から精神回復薬や体力強化など。
これから空魚に乗って移動すること三時間先に何もない土地がある。……訂正、ドラゴンが暴れて何もなくなった土地が広がっている。そこでドラゴンが待っているのだ。
ドラゴンが力の加減をわかっていない点が問題で……戯れたつもりでも地形が変わる。そんな危険な場所にアゴールを連れて行けない。
というのは表向きだ。竜人のことはダイバたちに聞けばいいのだが、ドラゴンたち龍や竜は違う種族になる。
「彼らの血はどうなっている?」という疑問から、「そういえば魔物の龍や竜の血がかかったらどうなるんだ?」となり、最終的に『竜人とは何ぞや』とまで行き着いた。
「考えてもわからんなら本人に直接聞いてみよう!」
つまり、丸投げしたのだ。そして今回は質問タイムにしたのだが、それをアゴールは運動不足解消タイムにしようとしていたのだ。
《 じゃあ、いっくよー 》
風の妖精たちが、空魚が待つ空の上まで運んでくれる。アゴールを置いていくため、ダンジョン都市に住み着いた妖精たちは監視役というか、見張り役というか……
《 猛獣の調教 》
「……おい」
《 暴走車のブレーキ 》
「……おい」
《 大丈夫。殺さないって約束してるから 》
「……エミリア。コイツらになんて説明した?」
「妊婦だから攻撃するな」
「ほかには?」
「例のスプレーで眠らせちゃって」
「……強力な睡眠薬のアレか」
《 とりあえず起こさないようにみんなでみてるから 》
「ああ、頼む」
アゴール、というより『アゴールの中に封じられた女神』がダンジョン都市からなんとか外に出ようとしている。
「正直な話、問題なく出ていくならいいけどね。お腹の中の子を犠牲にするとか……可能性がないわけではないから」
「ああ。我が子を喪う辛さを、親子二代にわたって味わわせたくはない」
シューメリさんは、病とはいえ生き別れた息子が亡くなったと知り、悲しみ続けた。アゴールのお腹の子を失うことがあれば、その苦しみをふたたびシューメリさんを襲う。アゴールも兄の死より我が子の死の方がショックが大きいだろう。
「生まれる前になんとか対処を考えるが……救える方法があるなら今は全力でその方法にすがる」
「うん、女神の首根っこをつかんで引き摺り出してやろうね」
「今度は俺にも殴らせろ」
…………ダイバも結構腹をたてているようで、ストレス発散は必要なようです。
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです
唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。
すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。
「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて――
一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。
今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
文句を言わない婚約者は、俺の愛する幼馴染みを許していなかった【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
幼馴染を優先しても、婚約者アウローラは何も言わない。だから、これからも幼馴染みとイチャイチャできる──
侯爵令息トリスタンは、そんな甘い幻想を信じていた。
だが婿入りした瞬間、彼の“軽んじた態度”はすべて清算される。
アウローラは冷徹に、トリスタンの傲慢と欲望を1つずつ暴き、労働と屈辱を与える。
そして最後に残ったのは、誰にも必要とされない現実だけ。
「どうして……俺は、こんなにも愚かだったんだ」
これは愛を勘違いし、身分を過信し、自分の価値を見誤った男の終焉を描くダークドラマ。
⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。過激ざまぁタグあります。
4/1「エステルに対する殺意」の内容を一部変更しました。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは