私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第九章

第438話


「しかし、なぜアゴールが選ばれた?」
「ンなの簡単じゃん」
「アゴールが竜人だからか?」
「ちっがうよ~」

私の言葉にミリィさんが「そうね」と言った。そして私を見る。

「もしかすると、一歩間違っていたら……私が狙われたのね」

ミリィさんは理解してる。だけどまだはずだ。それこそルーバーにも。だからここで言っていいのかわからず黙ってしまう。

「いいのよ、エミリアちゃん」

そう言って笑顔で私を抱きしめる。

「ミリィ?」

アルマンさんもコルデさんも男性だからわからないのだろう。ダイバは問題外……

「あ、まさか……」

一番鈍そうなダイバが一番鋭かった。

「ええ、妊娠したと思う。先月がきてないの。今月は予定では先週だったわ。それもきてない」
「マジか!」
「……エミリア?」
「うん、二ヶ月……でも今は無理したら流れちゃう」
「そうね。だからエミリアちゃんは参加させたくなかったのよね。でも心配が一番赤ちゃんに悪いから参加させてくれたのよね」

抱きしめたままの私の頭を撫でる。

「エミリアちゃんは私の一番大事な子。それは変わらないわ。そして私は、もうひとり子供ができるの。エミリアちゃんの弟か妹ね。エミリアちゃんにはダイバたちお兄ちゃんやお姉ちゃんがいるけど、下に弟妹きょうだいができるのよ」
「甥や姪じゃないのか?」
「ええ、ルーバーが昔っから言ってるでしょう? 『エミリアちゃんは俺たちの子だ』って」

そう言って私の背を撫でる。

「エミリアちゃん、ゆっくり家族になりましょう。コルデたちもダイバたちも私たちも。みんなが『エミリアちゃんの家族』なの」
「ああ、そうだな。エミリアちゃんを中心に俺たちは家族ファミリーなんだ」
「じゃあ、俺もエミリアちゃんの家族に加わっていいか?」

そう言って、向かい側で笑うアルマンさん。

「エミリアちゃんは大家族ね」
「そうだな、きっとこのダンジョン都市シティにもエミリアの家族になってるつもりの連中ばかりだぜ」
「ここに移り住んだ妖精たちもだな」
「こうなったら、エミリア家族ファミリーよりエミリア一族ファミリーだな」

みんなが笑う。私たちは家族で一族。みんなが親子で兄妹で姉妹。

「私、家族みんなを守りたい」

そう言った私の頭をダイバがガシガシと撫でた。

「私じゃなくてな」
「私たちで、家族みんなを守りたい」
「上出来だ!」

言い直した私にダイバが大きな花まるをくれた。


私たちは今まで目をそらしていた問題に向き合うことにした。

「いなくなった連中がいるよね。ノーマンとか」
「ああ、記録ではアウミと前後して出ていってるな」
「屋台村の人たちもいなくなってる」
「屋台を置いて家族を連れて」
「それって餃子屋?」
「と、隣の鉄板屋」
「どっちも今年に入ってからきたんだよね」
「ああ、外周部に入れなかった屋台が店を出してたが、そこは屋台ごといなくなった」

その人たちも含むなら、百五十人は下らない。捨て置かれた屋台は解体されて焼却処分された。というのも、屋台自体に本来あるはずの製造記録がついていないからだ。その魔導具には歴代の所有者などが残されているが、魔導具自体がないことで、危険物として処分されるのだ。

「今は小さなことでも警戒すべきです」

というのが都長ヘインジルの指示だった。

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