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第九章
第450話
背もたれのついた椅子にぐるぐる巻きで縛られて、小さくなって話すエリーさん。覚えているのは冒険者の学校に通いだした頃。
「結界石に属性ができたって話を聞いて、ひと足先に卒業した子たちの親やお兄さんが……」
「ああ、あの子たちの話か」
シズールの言葉に私たちは頷く。エリーさんは冒険者学校の帰りに……
《 ぐーすか寝てた! 》
「だから、違うって!」
「……エリーさん」
「エミリアちゃん! 違うの、違うのよ」
「寝てたとか、今はどーでもいいです!」
しつこいので怒ったら今度は泣き出した。
「「「うっとーしい!」」」
全員から叱られたエリーさんは、今度は流石に黙った。両側から触手の音が聞こえたのも原因だろうか青ざめている。
「エリーさん、その封印で魔力を使いました? 使ったのは『エルフの祝福』です」
エリーさんはしばし考えて、ミリィさんを見上げる。
「ミリィが妊娠したって報告があって。だから喜んで抱きついて、祝福をかけて……」
「それは夢で?」
「ええ、そうよ」
「繋がったわね」
「ここでも夢か」
「これは同調術か?」
「ううん、『夢のわたり』。……そうでしょ? 魅了の女神さん」
そう言ってフィムをみる。一瞬でアゴールが半狂乱になりかけて、ダイバがアゴールを抱きしめて止める。
「アゴール、落ち着け!!!」
「いや、いやあ! フィム! フィムを返してぇぇぇ!!!」
「ごめんなさい。すぐに返すから。今だけ」
「いやあ!」
「ピピン」
私の呼びかけにアゴールは、ピピンが手の平から出した癒しの水の球体を強引に口の中に突っ込まれた。触手を出すように、癒しの水を水球にして出したのだ。……私より器用じゃん。
ダイバがアゴールを離さないため逃げられない。そのまま溺れるように胃の中へと流し込まれていった。
「アゴール、落ち着いて。フィムは寝てるだけ。寝ている身体を借りて、女神が話しかけてるの。アゴールが騒ぐと、女神が伝えたいことを伝えられない。大事なことよ。だから信じて、ね?」
私が静かにそう言うとアゴールはコクコクと頷いた。
「アゴール、座ってフィムを抱いてろ。……かまわないよな」
「はい、それで落ち着いてもらえるなら」
ダイバの言葉にフィムの姿を借りた女神が頷いた。
「エミリア、あなたが気付いたことを教えて」
女神の言葉に私は頷いた。私は白虎に膝抱っこされたまま。主導権を握っているのが膝抱っこされている二人って……
「まずエリーさんのことね。最初に気付いたのは、エリーさんの過剰すぎるスキンシップがないこと。それのあとだったね、妖精たちに預けている私の農園の一画に闇ににた気を放つ部分に気付いたのは。それでおかしいと思った。『なんでエリーさんが気付かないのか』って」
「そして俺も同様だ。バラクルで食事ついでにアゴールの様子を見にくるエリーが一切来なくなった」
「それで、エリーさんがおかしい。そして嫌な気が残る場所には何かあるって考えた」
《 それで、ここにきたときに調べてほしいって言われた 》
《 本当ならエミリアが行くって言ったけど、私たちが慎重に調べた 》
「そこはアラクネの話では『私の中からでた女神がいた場所』だと聞いたわ。フルーツガーリックに近く、アウミの中にいる女神がいちばん近付けない場所。あの闇の部分って、私の中にいたときに吸い取ってくれていたものだね?」
「ええ、そうね。でもフルーツガーリックが私のまとっていた闇を剥がしてくれたわ」
小さなフィムの手で私の膝を撫でて「私たちが選んだ人たちは間違っていなかったわね」と微笑んだ。そのフィムの表情は、まるで天使のようだった。
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