私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第十章

第481話

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「エドウィン、だったはずです」

ルイ、今日立ち会っている情報管理部の部長。彼がステータスを操作して過去のデータを引き出している。

「エドウィン? って、たしかルレインの次に都長だった?」
「そうです。珍しくエミリアさんがダンジョンと家だけを行き来して庁舎に一切関わらなかったときです」
「仕方がないよ。前年は『聖魔士くずれ事件』でダンジョンに入れなかったし。やっと入れたって思ったらダンジョンを破壊したバカたちのせいで全面封鎖になったし。妖精たちの協力でダンジョンの修復をしてさ、騰蛇も手伝ってくれたから早く回復できたけど、妖精たちも休息は必要だったし」
「そのほかのダンジョンでも、崩壊の影響で魔物が凶暴化していたから討伐に参加していたな」
「元々の職業が魔法剣士だから。妖精たちを休ませても私ひとりで対応できる。それに鉄壁の防衛ディフェンスは、本国の冒険者ギルドとは冬の間だけという約束だから。ギリギリまで入ってくれたけど、冬が終わったら自国に帰るしかなかったからね」

結局そのゴタゴタは簡単には終わらなかった。ダンジョンの補修や討伐は翌年もほぼ使い、気付いたら修復は三年目の夏までかかった。

「ダンジョン番号ひとつに舞台ルートが五本以上あるから。一本に半月として完了するまで二ヶ月半以上。その代わり、人気のダンジョンを先に修復と討伐と間引きをしたでしょう?」
「ああ。その配慮があったから、冒険者たちも混乱せず協力的だった」

そう、魔物の討伐をする私と同時進行でダンジョンの修復をしていた私の聖魔たち。魔物が暴れたときに脆くなったダンジョンが半壊するのだ。もちろん、連鎖崩壊をしないように騰蛇も協力をしてくれた。特にダイバたちの方で。ダイバたちの方にも住み着いた地の妖精たちを中心にした修理部隊が、アラクネの協力でダンジョンに向かった。地の妖精以外出入りできないため、アラクネや騰蛇の協力で全妖精が手伝えたことが妖精たちに自信を与えた。アラクネが作った妖精服で、簡単に死んでしまう脆くて弱かった妖精たちが強化されたことも大きいだろう。

その経験から、今では地の妖精を隊長とした『ダンジョン救済部』なるものが結成されている。文字を覚えた妖精たちが関所ゲートの詰め所で待機していて、一部崩壊などが起きた際にすぐに知らせてくれるようになった。そのおかげで壁の内部崩壊などが事前に分かり、ダイバたち管理部から派遣された隊と同行する調査員や記録員たちと共にダンジョンに入って修復をするようになった。

それができるようになったのは、ダイバたち妖精と一緒に仕事をする隊にはドワーフ族の職人が作った魔導具で妖精たちが確認できるようになったから。ただし、起動は半径十メートル前後。回数限定で一個ずつが高価だ。ドワーフ族が妖精を見たり会話したりできるから作れたのと……妖精たちが捕まらないように回数と起動範囲が設定されている。
そんな私たちのために、当時はダンジョンを出るとみんなが屋台メシなどを持って労いにきた。

「でもさ、都長ってこなかったんだよね。協力してるんだから声だけでもかけにこない?」

だから私は会ったことがなかったのだ。


「その次はどうだ?」
「ヘインジルじゃないの?」
「その前にいるだろう、ネルミアが」
「シーズル、エミリアは『知らないし会っていない』といったんだ」

会議室の扉を開けて入ってきたのは、ダイバとコルデさんとアルマンさん。二人はキッカさんたちと連絡を取り合うためにきてくれたのだろう。休憩が終わりだと理解したのか、宝石の聖獣カーバンクルたちが涙石に戻っていく。

「エミリアだけではない。ダンジョンに入っていた俺たちもエドウィンとネルミアに会っていない」
「……ありえないだろ」

誰かのもらした言葉が全員の総意だった。
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