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第十章
第501話
しおりを挟む私たちは主に昔からある建物を回って『家族探し』をしていた。もちろん別の大陸にいるのは知っているためにみつかるはずはない。
「兵士たちがいないね」
「ああ、何か仕掛けてくるかもしれん。離れるなよ」
「うん。ダイバも結界の指輪つけてる?」
ダイバがさりげなく手をあげる。その指に見覚えのある指輪を確認すると見覚えのある兵士が前から私服でやってきた。
「そっか、今日は私服かあ」
しかし、私たちに気付いていないようでそのまま通り過ぎていくと、大きな声で男に声をかけた。
「今日はあの二人を見ていないか」
「まだ確認しておりません」
ダイバが私を連れて横道へはいる。連中の探しているのは間違いなく私たちだ。連中は私たちがテント村にいて食事は屋台で買っていると思い込んでいた。
「まだ操り水を飲んだ様子はないのか」
「はい。先日は雑貨屋で不用品を無料回収したと報告がありました。もしかすると今日はそれで何かしている可能性も」
「早くしろ。このまま町を出られてみろ、サフィールの侵攻がバレちまう可能性がある」
「しかし……あのような二人を操ってどうするのです?」
自分で考えられない下っ端らしい兵士が、城門で私たちの身分証を確認しないで入れた兵士から頭をど突かれる。
「あの動き、あの身のこなし。二人は間違いなく戦闘経験者だ。それもお前たち……いや、俺以上の強さがある」
「あの妹の方もですか。私には兄に守られているようにしか見えません」
「……だったらなぜ、毎回見失う? それはあの兄妹が兵服に付き纏われているのに気付いているからじゃないのか」
「それで兵服を脱ぐように仰ったのですか」
「……仕方がない。あと一時間テント村の見張りから報告がなければ今日は通常の任務に戻れ」
ここで御守りの記録を止めた。偉そうな男の追跡を開始したからだ。今度の記録はダイバの両胸につけた魔導具の飾りボタン。二点からの映像が魔石に登録すると立体映像になる。ダンジョン都市に住むドワーフ族の魔導具職人たちの作品だ。
「エミリアのいた世界は進化していたんだなあ」
「心は退化していったけどね。 隣人が何人住んでいるとか、下手すれば男女すら知らない人もいる。死んでも気付かれない。……数十年前までは、近所の大人たちが子供を見守っているのが当たり前だったのに。今では落とし物を拾って声をかけただけで不審者扱い」
「廃れたというか無関心になったということか」
「ここみたいに知らない人が名前を呼びかけただけで不審者。なぜ名前を知っている。どこで個人情報を手に入れた」
《 大丈夫、大丈夫。ここは私たちも一緒だから。悪~い奴は地獄に叩き落とすから大丈夫 》
《 そうそう。エミリア教の御神体に手を出すことは私たちが許さないから 》
そう言った妖精たちは、私が安心して過ごせるように守ってくれている。『エミリア教』の存在が私を守る理由になり、周囲が私に注意を向けるようになった。
その頃から、ドワーフ族の魔導具職人たちと交流がある。
私がもつ異世界の知識。そして私専用の宝箱から取り出す書物。それを読めるようになるために妖精たちから漢字を習い、私から本を借りる。日本の本は図面も何もかも公開されている……できる範囲で。その図面をもって技術改革が始まる。
「って、まずひとつ目に空間移動?」
「エイドニア王国の職人と共同研究をするんだ。この世界で魔導具研究の最高峰があそこの職人ギルドだ」
それだけではない。昨年あった世界会議で若い国王同士で息があったらしい。といっても、かたや二十代、もうひとりはもうすぐ二十代。しかし、称号で百二十歳まで生きられる国王の平均は八十代。若造だからこそ、この世界を変えられるのだろう。
「やはりここだったか」
ダイバが私を連れたままその場を通り過ぎる。私たちがついてきた男は町長の屋敷に入っていった。私は隣にいるダイバに顔を向いているため見えた。中からでてきた人が笑顔で招き入れていたのを。
「撮れたか」
「ばっちし」
私たちはその先にある木造の建物……本屋に入った。
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