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第十一章
第560話
しおりを挟む「こちらに彼らの仲間たちが入っています」
戻ってきたピピンがダイバに遺体を収納した魔導具を手渡す。私が止血だけした冒険者たちは、管理部の隊員たちによって処置を受けていた。
「止血処理のおかげで失血死は免れたようだな」
「チクショー! あの女、傷を塞ぐように言ったのに……」
「いやいや、傷は塞がっているだろ」
「これのどこが!」
「だ・か・ら、傷が塞がっているから止血されているんだろ。そうじゃなきゃ、お前たちは誰も助かってないぞ」
「まったく、傷口が塞がれていないのは、魔物から受けた傷に微量でも毒が含まれている可能性があるからだろ」
はるか昔からダンジョン管理部の隊員はそのことを知っている。簡単に傷口を塞いだ結果、体内に毒が残ってしまい、やがて死ぬ。そのため、止血処理をして傷口は開いたまま治療院に連れて行くことが推奨されている。そのことは冒険者学校でも教えているし、冒険者ギルドでもそう教えている。
いやしの水を飲ませたり傷口にかければ解毒される。しかし……
「なんで私がそんなことまでしないといけないのよ」
「貴様には人の心はないのか!」
「……だったら支払えるのか、ひと瓶10億5千万ジル」
金額を聞いて冒険者たちは誰もが口を閉ざす。暴利のように聞こえるだろう。しかし、たった30mlのひと瓶でも治療院以外ではできない解毒と止血、出血で失われた血を回復させる。さらに聖女が作ったいやしの水には、欠損した手足を蘇生させる効果もある。ティースプーンひと匙で解毒や失われた体力を回復、毒により傷ついた内臓や外傷の完全回復が可能。それを鑑みれば妥当な値段だ、と値段をつけたポンタくんから教わった。
稼ぎのいい冒険者といえど、10億ジルは結構な額だ。ちなみに国によっては100億ジルで貴族の称号、准男爵が買える。
「11億ジルで生命が助かるんだ。安いだろう?」
「そうですね。私が作り出すいやしの水は解毒効果のみですから」
ピピンは用途によって効果を変えられる。しかしそれ以上の……たとえば失った体力の回復などの効果は与えない。
「無償で提供しているのに感謝もせず、どこまで図々しいのですか。有償にして解毒効果をルーレットで選ばせて差し上げましょうか? 解毒効果0%になったら、ただの水を高額で購入したことになりますよ。ああ、エミリアが喜びそうなので今度からそうしましょうか」
「「「すいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
ピピンが緊急性のない状況で出すいやしの水には、『日頃の行いによって効果が左右される』だったり『サイコロ2個を転がした合計が偶数なら効果は倍。奇数は効果半減でゾロ目だったら体力回復のおまけ付き』など、面白いことをしている。ちなみにサイコロやルーレットは使う前にポンッと現れて、効果が決定するとポンッと消える。冒険者の中にはギャンブルが好きな人も多く、有償にも関わらずけっこう喜ばれているらしい。
「いくらに設定してるの?」
「500ジルです。冒険者以外でも生命の危機がなければやってみたくなるでしょう?」
これができるのは水を自由に操れる水属性のピピンだから。通常のいやしの水は錬金で作るためそんなことはできない。それもダンジョン都市限定。
「私が作っているのですから当然です」
ときどき地面が揺れるのは騰蛇が笑い転げているかららしい。
「いやしの水ギャンブルは騰蛇も見守っていますから」
《 エミリアと騰蛇って似てるよね。面白いことが好きで、イタズラ好きで 》
《 でも、誰よりも強くて優しくて 》
《 それを上回って 》
《 困ったイタズラ好きー!!! 》
「イタズラって……こ~んなこと?」
《 キャアアアアアアアア!!! 》
《 ヒヤアアアアアアアア!!! 》
両手に持った狗尾草で、私の近くで背を向けて笑ってる火と水の妖精2人をひと撫で。背を撫でると感覚共有で火と水の妖精たちが全身をそらす。
「勝った~~~!」
《 ううう……。負けたー 》
《 くやしー 》
「はいはい。勝ったエミリアには褒美におやつを用意しました。こちらへどうぞ」
「負けた妖精は、お仕事行ってらっしゃ~い」
…………私いつも思うんだけど、一番の勝者はピピンとリリンだと思う。
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