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最終章
第715話
しおりを挟むセイマール、昔は国で今はエイドニア国の一地方。そこの元王太子、昔は『図体は大人、頭脳は子ども』で今はただの大人サイズの赤ん坊(永遠のイヤイヤ期も発動中)だけど……
「あれって私の権限で正当化されてるけど、実際は仕返しだからね」
「なんの⁉︎」
「私を追い回した罪でしょ。私をキッカさんの恋人だと勘違いした罪でしょ」
あっ、彼氏が嫉妬した。
「キッカさんの前から消えろ、と詰め寄ってきた罪でしょ」
あっ、アルマンさんとコルデさんの目が据わった。
「私に攻撃魔法をぶっ放した罪でしょ」
ガタッと無言で立ち上がる3人。「オラ、座れっ」と周囲から肩や腕にのびた手によって強制的に座らされる。
「それでエミリアは何をしたんだ?」
「鎖を全身に巻いて静電気を一発」
「鎖? ツタではなく?」
「鋼鉄ですよ。だって廃鉱山まで追いかけてきたんですから。採掘されなかった鉱石で鎖を錬成しただけです」
《 地の魔法で相手を拘束するなら、ツタより周辺の鉱石が鎖になるよ。ただ邪魔するだけならツタでも大丈夫だけど、ツタは簡単に燃やされちゃうからね 》
ウンウンウンと頷いているのは地の妖精たち。「へええ」と感心している中、ちゃんとメモをとっている冒険者たちもいる。それを魔物に使用して足止めができるからだ。その間に、戦闘に不慣れなパーティでも離脱が出来る。
しかし、それを勘違いした若者が3人。
「拘束すれば弱い自分たちでも倒せるぞ!」
彼らはあっさり相手に倒された……強力な鼻息で。
「「「お前らはアホかぁぁぁ!!!」」」
「アホだろ」
「アホだよね~」
襲いかかった相手は神獣ジズ。
両足にツタが巻きついたことで、拘束できた! と思ったのだろう。喜んで飛びかかったものの、残念ながらジズにとっては吹けば切れるような蜘蛛の糸。そしてフフンッと鼻で笑ったその鼻息であっけなく吹き飛ばされたのだ。
見せびらかすためなのか、見せ物のつもりなのか。
ジズを先頭にベヒモスとキマイラが気絶した冒険者たちの頭を咥えて、堂々と凱旋パレードのように、ダンジョン管理部の庁舎までやってきた。楽しそうに左右に揺れながら歩く神獣たちからは鼻歌が聞こえそうだった。
妖精たちから話を聞いたダイバたち、庁舎にいた職員たちの全力の叫び。それが事情を聞いた最初の声だ。
楽しい罰則は、ジズたちに遊ばれること。ダンジョンの上の岩場で過ごすジズたちと『生命がけの追いかけっこ』。そして騰蛇の見守る地下で白虎や妖精たちと鬼ごっこ。
最後にピピンにパックンされて、生還後はおバカな言動を日々反省。毎日、陽があがる前から、ダンジョン都市の四方に安置された伽藍やお堂の周りを掃除。日中は仏像に手を合わせて自身の行いを悔いている。
「見事にエミリア教に染まったよね」
《 ピピンがのませたからね。『気持ちよくエミリア教に従いたくなる美味しいお水』を 》
「何をのませたぁぁぁ‼︎」
端で聞いていたシーズルが目を吊り上げて叫ぶ。
《 操り水じゃないから大丈夫だって 》
「おい、ピピン!」
「シーズル、黙りなさい」
「……ハイ、教主様」
「シーズルッ! お前もかぁぁぁ‼︎‼︎」
シーズルがピピンに従う。それもピピンを「教主様」と呼んでるあたり、ジズに攻撃をかました冒険者たちにのませた水と同じものだろう。
「エミリア~。私がちっくんしたのよ~」
エラい? と聞いてくるリリンとその横で微笑むピピン。
「…………このカップルは~」
シーズルが操られた理由には心当たりがある。っていうか、心当たりがいくつもある!
あきれつつも一応説明する。
「ダイバ。シーズルのバカは、仕事を理由にシエラに子育てを押し付けてんの」
「……またピピンを怒らせたのか」
しっかり、私とリリンを大切にするフェミニストに育ったピピンが、仕事を言い訳にして子育てをしないシーズルを見逃すはずがない。それはダイバも知っている。
「大丈夫です。普段は『仕事が終わったらまっすぐ直帰。帰ったら子育てをしっかりしてシエラを一番に大切にしろ』と教え込みました」
シーズルは忘れているのだろうか? シエラと一緒にいるのは息子でありながら元恋人でもあることを。ノーマンの記憶がどうなっているかわからない。残っていたら、成長したノーマンが元恋人にプロポーズしかねない。あの、すべてを吹っ飛ばして「俺をうんでくれ」と言ったノーマンなのだから。
それを妨害するには、シエラとシーズルの夫婦仲が良くなければいけないのだ。
「別にシエラとノーマンの『禁断の愛』を成就させたいんだったら構いませんよ?」
「…………今のままにしていてくれ」
操られた親友より、妹のいまの幸せの方が重かったのだろう。ダイバは苦笑しながらもあっさり継続を許可した。
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