回復魔法が不要になった最強パーティーから俺は離脱して町の治療師として世界を救う

紡識かなめ

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第14話 疫病の終息と称賛

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ルシエルが広場に描いた巨大な魔法陣は、その効果を着実に発揮し、街中に広がっていた病の勢いは、日を追うごとに弱まっていった。水源の汚染も王宮の迅速な対応によって浄化され、新たな感染者はほとんど出なくなった。

広場に集まった治療師たちは、ルシエルの指示のもと、最後まで患者たちの治療に尽力した。かつて敵対していたベリックも、今回は誰よりも熱心に治療にあたり、その姿は、下町の人々の目に深く焼き付いた。

数週間後、街はすっかり活気を取り戻し、人々の顔には笑顔が戻ってきた。あの恐ろしい疫病が嘘だったかのように、平穏な日常が再び訪れたのだ。

この未曽有の危機を救ったのは、紛れもなくルシエル・アークライトだった。彼は、迅速に病の原因を突き止め、大胆な解決策を実行し、多くの人々の命を守った。

下町の人々は、ルシエルを「英雄医師」と呼び、心からの感謝と尊敬の念を送った。診療所には、連日お礼を言う人々が訪れ、ささやかな贈り物を置いていく者も後を絶たなかった。

その功績は、瞬く間に王宮にも伝わり、国王はルシエルを改めて謁見に招いた。

「ルシエル殿、この度は、見事な手腕で国民を救ってくれた。そなたの功績は、決して忘れることはないだろう」

国王は、深々と頭を下げ、心からの感謝の言葉を述べた。

「陛下、私はただ、医者として当然のことをしたまでです」

ルシエルは、謙虚に答えた。

すると、国王は、真剣な眼差しでルシエルを見つめ、こう言った。

「ルシエル殿、そなたのような優れた医術を持つ者は、王国の宝である。つきましては、ぜひとも、王族専属の医師として、わが国のために力を尽くしていただきたい」

それは、医者として最高の栄誉と言える申し出だった。王族専属の医師となれば、地位も名誉も約束され、国中の尊敬を集めることになるだろう。

しかし、ルシエルは、少し考えた後、静かに首を横に振った。

「陛下、誠にありがたいお申し出でございます。しかし、私は、これからもこの下町で、困っている人々のために医者を続けていきたいと考えております」

国王は、驚いた表情でルシエルを見つめた。

「それは、一体どういうことであろうか?王族専属となれば、より多くの人々の役に立てるはずだ」

「確かに、王族の方々の治療も重要でしょう。しかし、この下町には、私を必要としている人々がたくさんいます。彼らは、お金がないために十分な治療を受けられないこともあります。私にとって、彼らの笑顔を見ることが、何よりも喜びなのです」

ルシエルの言葉は、力強く、そして、温かかった。彼は、地位や名誉よりも、自分の信じる道を貫きたいと願っていた。

国王は、ルシエルの固い決意を感じ取り、それ以上は何も言わなかった。

「わかった。そなたの志、しかと受け止めた。これからも、この街の人々のために、その素晴らしい医術を振るってほしい」

国王は、最後にそう言い、ルシエルに深々と敬意を表した。

王宮からの帰り道、ルシエルは、改めて自分の選択に後悔はないと感じていた。

下町には、ナミとエレナが待っている。そして、彼の治療を必要としている多くの患者たちがいる。

名声や地位ではなく、人々の笑顔こそが、彼の進むべき道を示す灯火なのだ。

診療所に戻ると、ナミとエレナが、心配そうな顔でルシエルを出迎えた。

「先生、王宮では、何か言われましたか?」

ナミが尋ねると、ルシエルは、優しく微笑んだ。

「ああ、少しね。でも、心配はいらないよ。私は、これからもここで、みんなと一緒にいるから」

その言葉に、ナミとエレナは、安堵の表情を浮かべた。

下町の小さな診療所は、これからも変わらず、ルシエルとナミ、エレナの三人を中心に、人々の健康と笑顔を守り続けていくことだろう。

英雄と呼ばれるようになったルシエルだが、彼の心は、いつもと変わらず、下町の人々への温かい想いで満たされていた。
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