回復魔法が不要になった最強パーティーから俺は離脱して町の治療師として世界を救う

紡識かなめ

文字の大きさ
21 / 25

第21話 再会と癒し

しおりを挟む
獣馬を駆り、夜通し走り続けたルシエルは、コアトルが示した場所へと辿り着いた。そこは、鬱蒼とした森の奥深く、ひっそりと隠された洞窟だった。

洞窟の入り口には、微かに魔力の痕跡が残っている。間違いなく、仲間たちはここにいる。

息を潜めて洞窟の中へと足を踏み入れたルシエルは、そこで、変わり果てた姿の仲間たちを発見した。

エルドは、巨大な光銀盾を前にして倒れ伏し、鎧には無数の傷跡が刻まれている。カインは、黒鋼の大剣を握ったまま地面に倒れ、全身には紫色に変色した毒が広がっていた。フィアナは、魔術細工の長弓を抱きしめ、苦悶の表情を浮かべている。彼女の体には、黒い呪いの紋様が浮かび上がっていた。ノアは、浮遊魔導書を手放し、意識を失っている。彼の周囲には、激しい魔法の痕跡が残っていた。そして、リリィは、傷つき倒れたフェルの傍で、力なく座り込んでいた。

「みんな!」

ルシエルは、悲痛な叫び声を上げた。最後の四天王との戦いは、想像を絶する激しさだったのだろう。

彼は、すぐに仲間の元へと駆け寄り、一人ひとりの状態を丁寧に確認した。

カインの体には、強力な猛毒が全身に回っていた。このまま放置すれば、命に関わるのは明らかだった。ルシエルは、迷うことなく掌に強い光を集め、カインの体に押し当てた。以前よりも増した回復力は、みるみるうちに毒の色を薄めていく。同時に、体内に残る微細な毒素を、丁寧に魔法で取り除いていった。

「う…ん…ルシエル…?」

カインがうっすらと目を開けた。顔色はまだ悪いが、意識を取り戻したようだ。

「カイン!大丈夫か?」

「ああ…助かったぜ…」

次に、フィアナの状態を確認した。彼女を蝕んでいるのは、悪質な呪いだった。黒い紋様は、彼女の生命力を吸い取っている。ルシエルは、聖なる力と回復魔法を組み合わせ、慎重に呪いを剥がしていく。複雑に絡み合った呪いの糸を一つ一つ解きほぐすように、丁寧に、そして確実に魔法を施していく。

「はぁ…ありがとうございます、ルシエル」

フィアナの顔から苦悶の色が消え、安堵の表情に変わった。

ノアは、魔力切れと、おそらく精神的なダメージを受けているようだった。ルシエルは、彼の頭に優しく手を当て、精神を安定させるための回復魔法を施した。穏やかな光がノアの体を包み込み、彼の表情も徐々に穏やかになっていった。

最後に、エルドとリリィの状態を確認した。エルドは、深い傷を負っているものの、持ち前の頑丈さで耐えている。リリィは、魔獣フェルを庇って傷ついたようだ。ルシエルは、二人にも手厚く回復魔法を施した。

しばらくすると、仲間たちは皆、辛うじて動ける程度まで回復した。

「ルシエル…本当にありがとう。お前がいなかったら、俺たちは…」

エルドは、感謝の言葉を述べようとしたが、言葉に詰まった。

「そんなこと言うなよ、エルド。仲間じゃないか」

ルシエルは、笑顔で答えた。

彼らの間には、言葉など必要なかった。互いの無事を喜び、再び共に戦えることを確信していた。

「ルシエル、お前は…これからどうするんだ?」

フィアナが、少し遠慮がちに尋ねた。

ルシエルは、一瞬考えた。下町での穏やかな生活も、多くの人々の笑顔も、彼にとって大切なものだった。しかし、目の前にいる、共に苦難を乗り越えてきた仲間たちの存在も、同じくらい大切だった。

「みんなと、一緒に冒険を続けたい」

ルシエルは、迷いのない瞳で言った。

その言葉に、仲間たちの顔が明るくなった。

「ルシエル!」

リリィが再びルシエルに抱きついた。

「待ってたぜ、ルシエル!」

カインは、豪快に笑った。

「あなたの決意、しかと受け止めました」

フィアナも、微笑んだ。

「これで、また6人揃ったな」

エルドは、力強く頷いた。

魔王は、既に復活を果たし、魔王軍を指揮しているという情報が入っている。世界は、再び大きな混乱と脅威に晒されていた。最後の四天王を倒し、魔王の野望を打ち砕くことが、彼らに課せられた使命だった。

ルシエルは、もう一人ではなかった。信頼できる仲間たちと共に、彼は再び、過酷な冒険の旅へと足を踏み出すことを決意した。

癒しの光を胸に、「暁の剣」は再び集結し、世界を救うための新たな戦いが、今、始まったばかりだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

無能と追放された鑑定士、実は物の情報を書き換える神スキル【神の万年筆】の持ち主だったので、辺境で楽園国家を創ります!

黒崎隼人
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――勇者パーティーの【鑑定士】リアムは、戦闘能力の低さを理由に、仲間と婚約者から無一文で追放された。全てを失い、流れ着いたのは寂れた辺境の村。そこで彼は自らのスキルの真価に気づく。物の情報を見るだけの【鑑定】は、実は万物の情報を書き換える神のスキル【神の万年筆】だったのだ! 「ただの石」を「最高品質のパン」に、「痩せた土地」を「豊穣な大地」に。奇跡の力で村を豊かにし、心優しい少女リーシャとの絆を育むリアム。やがて彼の村は一つの国家として世界に名を轟かせる。一方、リアムを失った勇者パーティーは転落の一途をたどっていた。今さら戻ってこいと泣きついても、もう遅い! 無能と蔑まれた青年が、世界を創り変える伝説の王となる、痛快成り上がりファンタジー、ここに開幕!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

処理中です...