Finale Love

卯月 桜🍒

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♪奪われる恋♪

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「煌也?」
「そうや」

煌也って誰?! まさか?!
人気ボーカリストの煌也さんじゃないよね?!
あんな有名人が私の携帯にかけてくるはずない!!!

「弥生ちゃんって俺にファンレター書いてくれたよね? 手紙に番号書いてくれたんよね?」
「はい!! 書きました?!」
「ようやく信じてもらえたみたいやなー」
「普通、かかってくるなんて想わないですよ?!」
「せやなー。なんか気になったからかけたんや」
「え・・・?!」
「よかったら普通に電話してきてや」
「はぁ?!」
「俺の番号通知されてると想うからさ」
「いんですか?! こんな私と連絡とっても?!」
「普通のファンやったらこんなことありえんけどな。
 けど、なんやろー・・・。弥生ちゃんだけにはそう感じなかった。だから電話したんやろうな」
「煌也さんー・・・」
「ほな気軽に電話してきてな。俺はまだ仕事が残とるけどな。夜中に電話して悪かった。ほなおやすみ」

電話を切った弥生はその場に呆然と立っていた。

煌也さんから電話があるなんて想わなかった。
煌也さん、少し寂しそうだった。
なんでだろう・・・?
プロになるとそうなるのかな?
なんか煌也さんのこと、ほっとけない。
私が煌也さんに出来ることは何もない。
遥も煌也さんみたいになっちゃうのかなー?
そう想うと不安になる。
遥にバレないようにしなきゃ。
口が裂けても言っちゃダメ!!
でも、鋭い遥には気づかれるも?
それでも隠し通さなきゃ。
でも、本当に気づかれたらどうしよー・・・。
その時はちゃんと遥に話さなきゃいけないよね。
それまでは絶対にバレないようにしなきゃ!!

弥生はそう心に決めながら静かに部屋に戻り遥樹の隣へ静かに入り眠りについた。
翌日の朝、弥生と遥樹は同時に目覚めた。

「遥、おはよう」
「おはよう。夜中に誰と電話で話してた?」
「えっ・・・?」
「その反応はやっぱり電話で話してたんだ?」
「うんー・・・」

遥にバレてんじゃん?!
何やってんだ?!
こんなことじゃすぐにバレる!!

「夜中にコソコソ誰と電話で話してた?」
「友達」
「友達ねー・・・」

ヤバイ。
これは遥のスイッチが入ってまう。
どーごまかそう・・・?

「弥生?」
「はい!!」
「隠し事するとあとが怖いよ」

たしかにそのとおり。
わかってらっしゃる。

「だから・・・」
「だから何?」

絶対に口が裂けても遥には話せない!!
遥が知ったら嫉妬だけじゃ収まらなくなる!!

「遥には話せない」
「なんで? 話せないことでも話してたの?」
「遥に1つだけ言う」
「何?」
「浮気とかそんなんじゃないからね」
「当たり前だろう?!」

遥のヤキモチどうにかならない?
ヤキモチやいてくれるのは嬉しいけど・・・。
時にウザくなる。

「今から出かける用事があるから留守番頼むわ」
「わかった。いってらっしゃい」

遥樹は家を出てとあるジュエリーショップに車を走らせてた。

なんでこんなに道が混んでんだ?
そういやー人気ボーカリスト煌也のコンサートが今日から始まるんだよなー。
だからこんなに混んでだなー。
はぁー・・・。
相変わらず人気があるボーカリストだよなー。
俺たちもなれるのかなー?

遥樹は渋滞にあいながらもジュエリーショップについた。

「いらっしゃいませー。何かお探しですか?」
「あっ・・・ はい」
「よければお出ししますよ」
「右側にあるリング出してもらっていいですか?」
「右側にあるリングですね?」
「はい」
「プレゼンとかなにかですか?」
「はい」
「そうですか」
「あと左から3番目のリングも出してもらえますか?」
「いいですよ」

その頃、弥生は近くのコンビ二に買いものにきていた。
何げに女子高校生の会話を耳にした弥生は驚きを隠せずにいた。

「今日だったっけ?  煌也のコンサートって」
「そうそう」
「チッケト取れなかったんだねー」
「2枚とったから一緒に行く?」
「行く行く。煌也ってエロカッコいいよねー」
「うん」

えっ?!
マジで煌也さん福岡にきてんの?!
そんなこと昨日、言ってなかった?!
何、動揺してんの?!
私には関係ないことだからいい。

弥生はすぐさま買いものをして遥樹の自宅へと帰った。
自宅についたと同時に弥生のスマホが鳴った。

こんな時に誰?!
まさか?!
煌也さんじゃないよね?
煌也さんじゃないことを祈りたい!!

弥生はスマホを手にとり画面をみた。
そこには『煌也さん  携帯』の文字があった。

マジっすか?!

弥生はしかたなく電話に出た。

「はい。もしもし?」
「 煌也やけどー」
「はい」
「弥生ちゃんって、さっきまでセブンイレブンにいた?」

煌也さんにバレてんじゃん!!

「はい。いましたよ」
「弥生ちゃんって愛知県に住んでるんじゃなかったっけ?」
「今はいろいろあって福岡に住んでます」
「そうーなんやー。1人暮らしなん?」
「友達ってゆうかー・・・なんて言うかー・・・」
「彼氏と一緒に住んでるんや」
「はい・・・。彼氏の実家で・・・」
「実家?!」
「はい・・・」
「そうーやったんやー」
「心配しないでください。煌也さんのことは誰にも言ってないですから」
「ありがとうなー」
「下手に話して煌也さんに迷惑かけたら悪いんで」
「弥生ちゃんって」
「なんですか?」
「優しいんやな」
「そうーですか?」
「うんー・・・」
「煌也さんって、ファンのみんなに愛されてますね」
「そうーなんかなー?」
「コンビ二でも女子高校が煌也さんのこと話してましたよ。煌也さんのコンサート楽しみにしてる人もいると思いますよ」
「弥生ちゃん・・・」
「なんですか?」
「ホンマにありがとうな」
「そんなことないですよ。煌也さんは煌也さんなんですから」
「せやな。俺は俺なんやな。そんなこと言ってくれるのは弥生ちゃんぐらいしかおらんわー」
「煌也さんー・・・」
「なぁー弥生ちゃん」
「なんですか?」
「俺な、弥生ちゃんに会ってみたい。会って2人で話がしたい。ダメかなー?」
「えっ?! 私は構わないですけど、煌也さんはこれからコンサートだし、忙しいと想うし、コンサート終わってから会っても煌也さん疲れてると想うし、スタッフや関係者の人との打ち合わせもあると想うし、煌也さんにムリは言えないです」
「そこまで俺のこと考えてくれてたんや」
「煌也さんは私とは違う世界で生きてる人なんですよ。それぐらい考えても普通なんじゃないんですか?」
「弥生ちゃんが言ってるとおりやなー。でも、同じ人間には変わりない。コンサート終わったら今日、弥生ちゃんが行ったセブンイレブンに迎えに行くから。ほな夜にな」

煌也さんと会う約束なんかしてよかったのかなー?
そんなことより、なんて遥に言い訳しようー?
遥に煌也さんのこと話したらどうーなるんだろうー?
言い訳やウソよりいいかー・・・。

夕方になり遥樹が自宅に帰ってきた。

「ただいま」
「おかえり。ちょっと話があるんだけど・・・」
「わりー・・・。今からちょっと哲也さんの自宅にいかなきゃいけないんだ。帰ってきてからでもいいか?」
「うんーーー」
「そろそろ下につく頃だから行くわ」
「いってらっしゃい」

遥樹は足早に家を出た。
弥生は煌也からの連絡を待っていた。
夜10時ぐらいになり煌也からの連絡が入り弥生は待ち合わせのセブンイレブンに行った。

「遅くなってごめんな」
「気にしてないからいいですよ」
「車の乗ったら?」
「あっ・・・はい」

弥生は助手席へと乗った。

「これからどなんしよなー? 弥生ちゃんってごはん食べた?」
「はい。食べましたけど・・・」
「そうーなんやー・・・」
「煌也さん、食べてないんですか?」
「打ち上げで軽く食べただけ」
「あまりお客さんがこない店でも行きますか?」
「そんな店あるん?」
「私が知ってる超穴場な店ですから」
「ほな案内して」
「いいですよ。ちょっと走りますけど、いいですか?」
「いっすよ」

走り出してから1時間が経ち山奥の川沿いを走っていた。

「こんな場所に店なんてあるん?」
「もうすぐコテージが見えます」
「小さくポツンとあるコテージのこと言ってんの?」
「はい」

駐車場についた煌也は車のエンジンをきり車からおりた。

「めっちゃ雰囲気がいい店やん。客もまったくいない感じだし」
「こんな時間にこんな山奥にくる人なんていませんからね」
「せやな。くるのは俺たちだけだろうな」
「ですね」

弥生が先に店内に入りマスターに挨拶をした。

「マスターお久しぶりです」
「弥生ちゃん久しぶり」
「こんな時間に店にきてすみません」
「弥生ちゃんから電話があった時にはビックリしたよ。なんせ、有名人連れてくるってゆうから」
「ホントすみません」
「その有名人は誰なん?」
「マスターも知ってると思いますけど、人気ボーカリストの煌也さんです」
「煌也さんねー・・・。有名人だわー・・・この時間対にきて正解」

そんな時、煌也が何げに弥生に声をかけた。

「マスターと親しいん?」
「はい」
「そうーなんや」

2人はテーブル席へと座った。
テーブルの上には小さいランプがおいてあった。
窓の外から川のせせらぎの音を耳にしながら煌也はいこごちよさそうにしてた。

「煌也さん、リラックスしてますね」
「こんなにゆっくりしたこと最近なかったからなー・・・」
「たまにはそうゆう時間作ったほうがいいと想いますよ」
「せやな。この店で美味しい食べもはなんなん?」
「オムライス」
「オムライスかー」
「はい」
「じゃーオムライス頼む」
「マスター。オムライス1つお願いします」
「はいよ」

オムライスが出来上がり煌也の目の前に出された。

「卵がふわふわで美味しそうやな」
「でしょう?」
「弥生ちゃんはなんも頼まないの?」
「マスターは私が頼まなくてもわかってるから」
「弥生ちゃんのお好きなカクテルをどうぞ」
「マスターありがと」
「いいえ」
「カクテルの色、赤ピンクでかわいいなー。オリジナルカクテルなん?」
「オリジナルといえばオリジナルかな。マスターが私をイメージして作ってくれたカクテル」
「そうーなんや」
「うん」
「俺もいただいていい?」
「マスター。同じカクテルもう1つお願いします」
「わかりました」

数分が経ち弥生と一緒のカクテルが煌也の目の前に差し出された。
オムライスを食べ終わった煌也は一息をつきカクテルをひと口飲んだ。

「このカクテル結講飲みやすいんやねー」
「でしょう? あまりにも飲みすぎるとあとで悪酔いする」
「せやな。カクテルって基本的にそうーやからなー。
弥生ちゃんの彼氏ってどんな男なん?」
「煌也さんと同じように歌を歌ってる人。インディーズですけど。地元の福岡じゃーそこそこ人気あるみたいです」
「そうーなんやー。メジャー目指してんの?」
「目指してるみたい」
「そっかー・・・」
「プロの道はそんなに甘くないのにね」
「彼氏いくつなん?」
「私より年下で今年31歳になります」
「31でインディーズかー・・・。ちっとキツイなー」
「私もそう想うんですけどね。だけど、本人はあきらめてないから」
「そうーなんやー。弥生ちゃんもなんだかんだで大変やなー」
「煌也さんと比べちゃいけないけど、まだまだ私なんて序の口です」
「俺がもし女やったら、そんな男は正直イヤやな。弥生ちゃんはイヤだと想わへんの?」
「正直、辛いなとか、イヤだなとか、なんでそうなるのって、想うことはあるけど、それを全て含めて『好き』って思えて言えることが1番大切なことだと私は想うから」
「たしかに弥生ちゃんが言ってるとおりやな。なんか、弥生ちゃんの彼氏が羨ましいわ。彼氏にヤイてまうわ」
「煌也さんが焼いてどーすんですか?」
「俺だって1人の男なんだから、そう想うときだってあるんよ」
「煌也さんには何千万人ってファンがいるじゃないですか」
「弥生ちゃんに言わしてもらうけどなー」
「なんですか?」
「たしかに何千万人ってファンはいる。でも、俺のことを本当に大切だって想ってくれる人は誰1人いない。それが今の俺の現実」
「煌也さんー・・・」
「こうやって話すのも久しぶりやな。なんか知らんけど、弥生ちゃんの前なら俺が俺らしくいられる」
「煌也さん、少し酔ってるんじゃないんですか?」
「せやな・・・」
「そろそろ行きますか? このままここにいたら煌也さん寝そうですから」
「そうーやな」

2人は車に乗り待ち合わせしたセブンイレブンに向かった。
駐車場につき弥生は車からおりた。
ちょうどその時に信号まちで哲也の車が止まっていた。

「なー遥樹」
「なんすか?」
「セブンの駐車場で立ってるのって、弥生ちゃんだよな?」
「何してんだ? アイツ」
「誰かと話してるみたいだな」
「みたいっすね」
「ちょっと離れた場所で見てみるか」
「別にいっすよ」

哲也は少し離れたセブンの駐車場に止めた。

「なー遥樹。あの運転席に座ってる男って、人気ボーカリストの煌也じゃねえ?」
「マジっすか?!」
「たしか今日って煌也のコンサートってあったよな?」
「ありました」
「やっぱあれって煌也本人だよ?! なっなんで?!
弥生ちゃんがあんな有名人と一緒にいると?! 遥樹、なんも聞いてない?!」
「なんも聞いてません」
「遥樹どーすんだよ?!」
「どーするも、こーするもないっすよ」

視線を感じた弥生は遥樹たちがいる方向に目を止め驚きを隠せなかった。
煌也はなんとなく気づいた。

「弥生ちゃん。どうしたん?」
「えーっとですねー・・・」

ここは煌也さんに言うべきか?

「もしかして、あれって、弥生ちゃんの彼氏?」
「はい・・・」
「運転席に座ってる男? それとも助手席に座ってる男?」
「助手席がわです。運転席に座ってる人はバンドのリーダーの人です」
「そうーなんや」
「はい・・・」
「あの2人にはバレテんるやろうなー」
「はい・・・」
「こっちに呼んであげたら?」
「それじゃ煌也さんがー・・・」
「俺のことは気にせんでいいから。せっかくなんやから呼んであげたら? このままだと弥生ちゃんが誤解されるんよ」
「ですよねー。煌也さんありがとうございます」
「別にいいよ。今日付き合ってもらたから」

弥生はしかたなく哲也と雄祐のもとへと行った。

「何、やってるんですか? 哲也さん」
「たまたま見かけちゃったからー」
「2人ともバレバレですよ」
「ねえー弥生ちゃん。あれって煌也本人だよね?」
「そうですけど・・・」
「なんで弥生ちゃんと煌也が一緒にいるの?!」
「今、話すと理由が長くなるんで、とにかく煌也さんのもとにきてください」
「いっていいの?!」
「煌也さんがどうぞって」
「マジで?!」
「はい」

遥樹と哲也は車をおりて煌也のもとへと行った。

「マジ、本物?!」
「哲也さん、お願いだからあまり騒がないでください」
「ごめん。弥生ちゃん」
「始めまして。煌也です」
「始めまして?!」
「弥生ちゃん。この人がバンドのリーダーの人?」
「あっはい。哲也さんです」
「哲也さんの横にいるのが弥生ちゃんの彼氏?」
「はい」

遥樹は少しムツっとしながら挨拶をした。

「始めまして。遥樹です」
「弥生ちゃんから少し話聞いてるよ」
「そうーなんですか?!」
「メジャー目指してるだってね」
「はい」
「バンド名は?」
「T.Zって言うバンド名です。よかったら動画サイトにライブの映像載せてるので時間があった時にでも見てください」
「時間があった時に見させてもらうよ」
「ありがとうございます」
「遥樹君はⅤoなんだよね?」
「はい」
「いいⅤoになれる。俺を超えられる程のボーカリストに」
「煌也さん・・・」
「弥生ちゃんを泣かせて傷つけるよなことをしたら、俺が東京からきて連れ去るからな」
「煌也さん。何、言ってるんですか?そんなことありませんよ」

煌也の目は遥樹だけを見つめた。
遥樹も同じように煌也の目を見つめた。
2人の真剣な眼差しを目の当たりにした弥生は何も言えずにいた。

「遥樹君ー・・・」
「なんですか?」
「弥生ちゃんをしっかり1人の男としてつかまとけよ。じゃなきゃー俺が連れ去るからな」
「はい・・・」

煌也は宿泊先のホテルへと戻った。
遥樹はジュースを買いに店に入った。
弥生と2人になった哲也はそれとなく言った。

「ねぇー弥生ちゃん」
「なんですか?」
「なんで煌也さんのこと、遥樹や俺に言ってくれなかったの?」
「そのことですかー・・・」
「うんー・・・」
「遥や哲也さんに言ってたらこんなことにはならなかった。でも、煌也さんのこと考えたら言えなかった」
「それは煌也さんが人気のあるボーカリストだから?」
「はい」
「そっかー・・・。でも、煌也さんは違うみたやね。煌也さんが遥樹にむけた真剣な目。弥生ちゃんにはその意味がわかるよね? あんな煌也さんの真剣な眼差し。俺も初めて見たけど、あれは煌也さんが1人の男として見せた目。遥樹は何も言わなかったけど、ちゃんと感じとってるよ」
「哲也さん」
「ん?」
「少し雄と離れようと想ってる」
「そのほうがいいだろうな。でも、遥樹はなかなか納得しない」
「わかってます」

遥樹はジュースを買い2人のもとへと戻ってきた。
哲也は自分の車に乗り自宅へと帰った。
遥樹と弥生は夜道を歩き遥樹の自宅へと帰った。
遥樹の部屋に入った2人は少し気まずいまま話始めた。

「なんで俺に一言いってくれなかった?」
「遥に話そうと想ってたけど、哲也さんの自宅に行っちゃったからー・・・」
「電話で話すことだって出来たはずだろう?」
「遥の言う通りだよ。話さなかった私が悪い」
「俺は弥生を攻めてるわけじゃない。ただ一言いってほしかった」
「遥ー・・・」
「俺は弥生を失いたくない。失うのが不安で怖い。弥生の心や想いや気持ちまでは縛ることは出来ない。たしかに俺は1人の男として、煌也さんが言うようにダメダメだよ。こんなんじゃー弥生を幸せに出来ないってわかってる。それでも俺は、弥生のそばにいたい。
こんなことで弥生を失うたっら・・・俺は歌うことをやめる」

弥生は1つの雫を頬に流しながら言った。

「なんで・・・なんで・・・そうーなるの?!」

弥生の姿を目にした遥樹は何も言えずにいた。
弥生は堪えきれず遥樹の自宅を飛び出した。
遥樹は弥生を追いかけられず1人部屋にいた。

弥生を傷つけるために言ったわけじゃない。
なのに俺は、自分の気持ちを優先した。
これじゃー前と同じ。
なんで俺はそうーなるんだよ。
こんな弱い自分自身にヘドが出る。
俺、何も変わってねえじゃん。

遥樹は自分の気持ちを奮い正し飛び出して行った弥生の姿を探しに行った。
弥生は走りながら泣き、知らぬままに煌也のコンサートが行われていた会場前についていた。

ここって、今日、煌也さんがコンサートした会場だ。
大きい会場。
こんな大きい会場のステージでスポットライトの光を浴びながら歌う遥の姿が見たかった。
でも、その夢も今は・・・もうー叶わない。
私自身が遥を壊してしまった。
こうなることはわかっていた。
いずれ遥は壊れてしまうって。
でも、それがなきゃ遥は強くなれない。
そのために私は遥と一緒に福岡に来た。
こんなに辛いことだとは想わなかった。
けど、これでよかったのかもしれない。
ここの会場って裏口あるのかな?
探してみよ。

弥生は裏口を探すため会場内の広場を歩き回っていた。
その頃、遥樹は必死に弥生の姿を探してたが見つからずにいた。

いったい、弥生のヤツ何処行ったんだよ?
これだけ家の近くを探していないってことは・・・。
この付近にはいないってこと。
まさか?! アイツ?!
煌也さんのコンサート会場じゃねえだろうな!!
とにかく会場に行ってみるか!!

遥樹は息を切らし汗ダクになりながらも会場前についた。

ようやくついた。
何処にいんだ?
探し回るしかないかー・・・。

遥樹は一通り会場の正面を探したが弥生の姿を見つけることは出来ずにいた。

正面にもいねえーってことは裏かよ。

遥樹は裏に回り隅々まで探したが弥生の姿はなかった。

ここにいねえーってことは、何処だよ?

そんな時、遥樹のスマホが鳴った。
慌てるように遥樹は電話にでた。

「もしもし?!」
「遥樹君だよね?」
「そうですけど・・・」
「煌也だけど、弥生ちゃん今ここにいる」
「えっ・・・」
「寝れなくて会場内ランニングしてら、会場の裏口玄関で泣き疲れて寝てた弥生ちゃんを見つけて、俺の宿泊先のホテルまで運んだ」
「そうーなんすかー・・・。ありがとうございます」
「遥樹君と弥生ちゃんの間で何があったか俺にはわからない。でも、弥生ちゃんを泣かすようなことがあるなら俺が連れ去るって言ったよな。これ以上、遥樹君に弥生ちゃんをまかせることは出来ない。だから、東京に一緒に連れて帰る」
「煌也さんがそこまで言うなら、弥生のこと、本気なんですね」
「ああー・・・」
「煌也さんなら、弥生を安心してまかせられます。俺、煌也さんみたいに強くなれない」
「遥樹君ー・・・」
「弥生のことよろしくお願いします」
「遥樹君」
「なんですか?」
「弥生は誰よりも何よりも遥樹君のこと、信じてるからな。弥生の想いは遥樹君の胸の中に根付いてるはずだ。遥樹君だってこうなることはわかってたよな?
だから俺に弥生を託したんだろう?」
「煌也さんはなんでも分かるんですね」
「そやー遥樹君より少しは長く生きてるからね」
「煌也さん、本当にありがとございました」

翌日の朝を迎えた雄祐はいつもと変わらずにメンバーが集まるスタジオへと向かった。

「よっ。遥樹」
「哲也さんもうー着てたんですか?」
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