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第五章 銀雷の夢
第64話 睦言1
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明日は夜明けと同時に、ここを立とうと。
そんな話をして、寝室に入ったのだが、まったく眠れなかった。
フィオリナをモデルにした魔道人形?
間違いなく、魔道院の妖怪じじいの作品だ。
それが、作られたとき、たしかフィオリナは9歳か10歳。
その当時のフィオリナの記憶と魔力と武力を兼ね備えたとてつもなく厄介な代物のはずだった。
だが、起動させなければ、それはただのよくできたお人形さんだし、起動かせれば、専門家のメンテナンスなしには、そう長時間動き続けることはできない。
それは、例えば、魔道人形の造り手自身が、そばにいて、1戦闘ごと、また
十日に一度程度は、微細な調整を行えることが稼働の前庭となる。
リウは、はたして魔道人形についての、そこまで詳細な知識をもっていただろうか。
寝返りをうったら、アデルの顔が目の前にあって、ぼくは、思わず仰け反って、後ろの壁に頭をぶつけた。
けっこう痛い。
「起きてた?」
「まあ。」
アデルは。
布団のなかに潜ってはいるが、少なくとも上はなにも身につけていなかった。
肩から腕のなめらかな筋肉は、女の子を庇護の対象にしか見ることができないタイプの男性には、逞し過ぎるように感じられるかもしれない。
「少し、話そうか。二人きりで喋るのは久しぶりだし。」
「そうだね。たぶん。」
アデルの声が小さくなった。
「喋りたいことは別々と思うので、まずルウエンのほうから。」
うん。
「“災厄”のジェインは、たぶん、魔道院のボルテック卿が作った魔道人形だ。」
「ボルテック? ボルテックってあの。」
アデルが10歳くらいのころ、ジウル・ボルテックという拳士が、クローディア大公領を尋ねてきたのだという。
祖父母は、彼を歓迎したが、アデルはそうでも無かった。
当時アデルの無手での戦いの師匠は60代の老人であり、さすがに全盛期の強さはないものの、巧みな重心移動により、重い打撃や、相手の攻撃を受け流す技術に長けており、アデルは彼をものすごく尊敬していた。
で、尊敬されてない師匠たちが、どうなったのかというと、例えば剣の師匠は、無手での不意打ちや魔法攻撃に対処出来なければ、そのままお役御免になり、魔法の師匠は、至近距離からの格闘戦への対処を求められ、泣く泣くクローディア大公領を去ることになった。
アデルは、祖父母のすすめで、短期間ながら、ジウルに教えを乞うたが、あまり感心しなかったのだ、と言う。
細やかな体さばきや、技のつなぎ、ながれ、どれをとっても、いつも教えて貰っている老師匠にはとても及ばなかったのだ。
それは、年齢的な衰えを加味すれば、ジウルのほうが、強いことは強いのだろうが、武の道はそんなものでは無い……
「ちょっと待て。10歳の女の子がそんなことを考えたいたのか?」
「ああ。それはそうだよ。」
アデルは、なにを当たり前のことを。
と、言わんばかりに、ルウエンに顔を近づけた。
「じっちゃんとばっちゃんからは、おまえは強くなれって、教わったんだ。誰よりも。」
なので、アデルは、練習中にいきなり、魔法攻撃をかましてみたのだ。
結果は、ラクラク防御され、とんでもないカウンターの攻撃魔法をくらって、アデルは昏倒した。
目が覚めて、最初に言った一言は
「てめえ、魔法の方が得意じゃないか。」
で、あったそうな。
言われたジウルは、少し傷ついたようだった。
眉間に皺を寄せながら、
「まあ、俺くらいの天才でも研鑽にかけた時間の差は、でるものだからな。」
と、つぶやいた。
それからは、アデルは、ジウルに熱心に従った。彼の拳法は、打ち出す打撃に魔力をのせることにあったが、そのまでの境地には、アデルはなかなか到達できなかった。
「師匠よ。」
ある日、彼女は、火焔球を打ち出してから、それと一緒に移動して、火焔球の炸裂と同時に拳を打ち込むという自爆技(みたいなもの)の練習をしながら、アデルは聞いてみた。
「師匠は、拳士なのか魔法使いなのか、どっちなんだ?」
「若い頃は拳士、だったんだがな。」
と、ジウルは、今度は氷の矢を作り出して、それを手で投げるというわけのな分からない技を披露して、アデルにやってみるように告げた。
アデルは真似をしてみた。
なるほど。
「飛ばす」工程を省略することで、「次」の準備が格段にしやすくなる。
投げることは、コツがいるがこれは慣れが解決する。
「ある魔法使いに敗れてな。そこから、魔術の修練をするように命令された。」
「拳士から魔道士に?」
「うむ。俺は天才だったのでな。結局、魔道の才が花開いて、グランダでは魔道の総元締めとでもいうべき地位にながく君臨したのだ。」
「した? したって言ったわよね?
ジウル・ボルテック……ボルテック。
師匠がまさか、グランダ魔道院の妖怪じじいだって言うの!
いったい、師匠、あんた幾つよ!?」
「年寄りに歳を聞くものではない。」
ジウルは案外本気で嫌がっているように見えたという。
「災厄のジェイン」を作ったのが、そのボルテックだっていうの!
噛みつきそうなほどに、アデルの顔は目の前にある。
部屋は、ぼくとアデルで一部屋。
“貴族”とラウレスで、一部屋。
なんで男女で部屋を分けなかったかといえば、吸血鬼と一晩同じ部屋で過ごすのをアデルが嫌がったからだ。
それにしてもベットはちゃんとふたつあるのに、いつ潜り込んできたのだろう。
「一時期、ボルテックの妖怪じじいは、魔道人形の開発にねっしんだったんだ。」
ぼくは、知っていることを説明してやった。
「特にフィオリナがお気に入りだったらしく、あいつをモデルにした人形は複数体作ったらしい。技も再現するために、記憶まで服制してね。
結局、起動はさせなかったみたいだけど、事故で起動して、そのまま、廃棄されたのが一体。盗まれて、起動させられたのが一体。
“災厄”のジエインは、そのほかの個体だろうと思う。」
「強いのかな?」
「カザリームに盗み出された一体は、妖怪じじいの弟子の調整を受けて、稼働し続けた。強いし、はっきり言うと、フィオリナとは別物になっていた。」
「会ったことあるの?」
「まあ。」
その人形。ベータはフィオリナとリウを含んで三角関係にあったのだが、そのことを、娘であるアデルには、あまりどう説明したものか。
「じゃあ、ルウエン。 」
アデルは、顔を押し付けるようにして言った。
「ジェインは、わたしに任せてね!」
「自分の親を模した人形だよ?」
「どっちみち、あいつとも戦うんだから。予行演習になるわ。話を聞いた限りじゃあ、絶対にひかない相手みたいだし!」
ぼくは、アデルを見つめた。
「わかった。」
しぶしぶ、ぼくは答えた。
「そのときになって、ほかに方法が無ければそうするよ。
じゃあ、こんどはアデルの話をきこうか?」
アデルは、びっくりしたように、ぼくを見つめた。
「ここから、なんか話が必要?」
「そりゃあ、吸血鬼のお姉さん方に聞かれずに、話ができるのは、あんまりチャンスがないしね。明日は早いけど、話くらいはきけるよ。」
アデルは、ため息をついた。
こいつは、ダメだとか、アホとかぶつくさ言う声がきこえた。
そんな話をして、寝室に入ったのだが、まったく眠れなかった。
フィオリナをモデルにした魔道人形?
間違いなく、魔道院の妖怪じじいの作品だ。
それが、作られたとき、たしかフィオリナは9歳か10歳。
その当時のフィオリナの記憶と魔力と武力を兼ね備えたとてつもなく厄介な代物のはずだった。
だが、起動させなければ、それはただのよくできたお人形さんだし、起動かせれば、専門家のメンテナンスなしには、そう長時間動き続けることはできない。
それは、例えば、魔道人形の造り手自身が、そばにいて、1戦闘ごと、また
十日に一度程度は、微細な調整を行えることが稼働の前庭となる。
リウは、はたして魔道人形についての、そこまで詳細な知識をもっていただろうか。
寝返りをうったら、アデルの顔が目の前にあって、ぼくは、思わず仰け反って、後ろの壁に頭をぶつけた。
けっこう痛い。
「起きてた?」
「まあ。」
アデルは。
布団のなかに潜ってはいるが、少なくとも上はなにも身につけていなかった。
肩から腕のなめらかな筋肉は、女の子を庇護の対象にしか見ることができないタイプの男性には、逞し過ぎるように感じられるかもしれない。
「少し、話そうか。二人きりで喋るのは久しぶりだし。」
「そうだね。たぶん。」
アデルの声が小さくなった。
「喋りたいことは別々と思うので、まずルウエンのほうから。」
うん。
「“災厄”のジェインは、たぶん、魔道院のボルテック卿が作った魔道人形だ。」
「ボルテック? ボルテックってあの。」
アデルが10歳くらいのころ、ジウル・ボルテックという拳士が、クローディア大公領を尋ねてきたのだという。
祖父母は、彼を歓迎したが、アデルはそうでも無かった。
当時アデルの無手での戦いの師匠は60代の老人であり、さすがに全盛期の強さはないものの、巧みな重心移動により、重い打撃や、相手の攻撃を受け流す技術に長けており、アデルは彼をものすごく尊敬していた。
で、尊敬されてない師匠たちが、どうなったのかというと、例えば剣の師匠は、無手での不意打ちや魔法攻撃に対処出来なければ、そのままお役御免になり、魔法の師匠は、至近距離からの格闘戦への対処を求められ、泣く泣くクローディア大公領を去ることになった。
アデルは、祖父母のすすめで、短期間ながら、ジウルに教えを乞うたが、あまり感心しなかったのだ、と言う。
細やかな体さばきや、技のつなぎ、ながれ、どれをとっても、いつも教えて貰っている老師匠にはとても及ばなかったのだ。
それは、年齢的な衰えを加味すれば、ジウルのほうが、強いことは強いのだろうが、武の道はそんなものでは無い……
「ちょっと待て。10歳の女の子がそんなことを考えたいたのか?」
「ああ。それはそうだよ。」
アデルは、なにを当たり前のことを。
と、言わんばかりに、ルウエンに顔を近づけた。
「じっちゃんとばっちゃんからは、おまえは強くなれって、教わったんだ。誰よりも。」
なので、アデルは、練習中にいきなり、魔法攻撃をかましてみたのだ。
結果は、ラクラク防御され、とんでもないカウンターの攻撃魔法をくらって、アデルは昏倒した。
目が覚めて、最初に言った一言は
「てめえ、魔法の方が得意じゃないか。」
で、あったそうな。
言われたジウルは、少し傷ついたようだった。
眉間に皺を寄せながら、
「まあ、俺くらいの天才でも研鑽にかけた時間の差は、でるものだからな。」
と、つぶやいた。
それからは、アデルは、ジウルに熱心に従った。彼の拳法は、打ち出す打撃に魔力をのせることにあったが、そのまでの境地には、アデルはなかなか到達できなかった。
「師匠よ。」
ある日、彼女は、火焔球を打ち出してから、それと一緒に移動して、火焔球の炸裂と同時に拳を打ち込むという自爆技(みたいなもの)の練習をしながら、アデルは聞いてみた。
「師匠は、拳士なのか魔法使いなのか、どっちなんだ?」
「若い頃は拳士、だったんだがな。」
と、ジウルは、今度は氷の矢を作り出して、それを手で投げるというわけのな分からない技を披露して、アデルにやってみるように告げた。
アデルは真似をしてみた。
なるほど。
「飛ばす」工程を省略することで、「次」の準備が格段にしやすくなる。
投げることは、コツがいるがこれは慣れが解決する。
「ある魔法使いに敗れてな。そこから、魔術の修練をするように命令された。」
「拳士から魔道士に?」
「うむ。俺は天才だったのでな。結局、魔道の才が花開いて、グランダでは魔道の総元締めとでもいうべき地位にながく君臨したのだ。」
「した? したって言ったわよね?
ジウル・ボルテック……ボルテック。
師匠がまさか、グランダ魔道院の妖怪じじいだって言うの!
いったい、師匠、あんた幾つよ!?」
「年寄りに歳を聞くものではない。」
ジウルは案外本気で嫌がっているように見えたという。
「災厄のジェイン」を作ったのが、そのボルテックだっていうの!
噛みつきそうなほどに、アデルの顔は目の前にある。
部屋は、ぼくとアデルで一部屋。
“貴族”とラウレスで、一部屋。
なんで男女で部屋を分けなかったかといえば、吸血鬼と一晩同じ部屋で過ごすのをアデルが嫌がったからだ。
それにしてもベットはちゃんとふたつあるのに、いつ潜り込んできたのだろう。
「一時期、ボルテックの妖怪じじいは、魔道人形の開発にねっしんだったんだ。」
ぼくは、知っていることを説明してやった。
「特にフィオリナがお気に入りだったらしく、あいつをモデルにした人形は複数体作ったらしい。技も再現するために、記憶まで服制してね。
結局、起動はさせなかったみたいだけど、事故で起動して、そのまま、廃棄されたのが一体。盗まれて、起動させられたのが一体。
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「強いのかな?」
「カザリームに盗み出された一体は、妖怪じじいの弟子の調整を受けて、稼働し続けた。強いし、はっきり言うと、フィオリナとは別物になっていた。」
「会ったことあるの?」
「まあ。」
その人形。ベータはフィオリナとリウを含んで三角関係にあったのだが、そのことを、娘であるアデルには、あまりどう説明したものか。
「じゃあ、ルウエン。 」
アデルは、顔を押し付けるようにして言った。
「ジェインは、わたしに任せてね!」
「自分の親を模した人形だよ?」
「どっちみち、あいつとも戦うんだから。予行演習になるわ。話を聞いた限りじゃあ、絶対にひかない相手みたいだし!」
ぼくは、アデルを見つめた。
「わかった。」
しぶしぶ、ぼくは答えた。
「そのときになって、ほかに方法が無ければそうするよ。
じゃあ、こんどはアデルの話をきこうか?」
アデルは、びっくりしたように、ぼくを見つめた。
「ここから、なんか話が必要?」
「そりゃあ、吸血鬼のお姉さん方に聞かれずに、話ができるのは、あんまりチャンスがないしね。明日は早いけど、話くらいはきけるよ。」
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