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第六章 ランゴバルドの風
第72話 北から来た少女
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ぼくは、なにを思っていたんだろう。
そうなんだ。
彼女の髪や顔立ち、その仕草、口の利き方。
充分だ、もう充分。
ぼくは、まだひっそりとこの世界を観察だけして回るつもりだった。そうだもうしばらくは。
それ以外のことは怖かったというのもある。
自分がいない間に世界がどのように変更してしまったのか。
友人たちがどこのこうのでどういう風になってしまったのか。いやそもそも死んでいるのか生きているのか。
中でも一番知りたくなかったのがぼくの親友と婚約者のことだ。
アデル。
この少女は何を検討する間もなく、何を検討する必要もなく、ー明らかにフィオリナの血縁だった。
顔立ちは、フィオリナよりも、リウよりも、アウデリアさんににていた。
あの人ほど大柄ではないが、しなやかに鍛え上げた筋肉、大口を開けて大笑するのが、いかにも似合いそうな健康そうな歯を備えた口もと。
これは、いかにもアウデリアさん、そっくりの萌えるようなオレンジの髪。
ぼくは、腕を掴まれた。
首筋に刃物が押し当てられる。
つまり、このアデルと名乗る少女が、なかなか手強いと見たこの連中は、ぼくを人質に取ることにしたのだ。
悪い手段ではない。
「おい、おい嬢ちゃん下手に動くと、こいつの命はねぇぞ。」
「あ、ぼくはルウエンっていいます。魔道士見習いです。」
ぼくは、自己紹介した。
ひょっとすると。
可能性こそかなり低いものの、アデルは、アウデリアさん自身の娘かもしれない
。
クローディア大公はまだまだ、男盛りだったはずだし、アウデリアさん自身はそもそも寿命があるのかすらさあだかではない。
フィオリナの妹か弟を作ろうとした結果が、アデルである可能性は、あった。
「ルウエンっていうのか。
お前も冒険者学校に入るために来たのか?」
その通り。ただし動機は極めて不順だった。
冒険者学校だったら生徒のふりをしていればいくらでもただ飯が食える。
帰ってきたばかりのぼくにとっては休息と観察のための時間が絶対に必要だった。
誰が電車が着いた初日の日にアデルなどという運命の子にいきなり出くわすというのだろう。
「そうですよ。なんだったら冒険者学校へのご案内を僕はできますけど。」
「おい勝手に話をするんじゃねえ。こいつがどうなっても」
首筋にナイフの刃がめり込んだ。
うわあ。やめて欲しいな。切れたらどうるんだ。
「まあはっきり言えばどうなってもいいぞ。」
アデルはたのしそうに笑った。
「妙なのに絡まれているから助けられると思っただけで、所詮は通りすがりの赤の他人だ。」
この対応に、連中は明らかに面くらったようだ僕はできるだけAleppoそうに聞こえる声で言った
ぼくはできるだけ、哀れっぽく聞こえる声で言った。
「冒険者学校へのご案内をぼくがただでしますよ。代わりにこいつらぶちましてぼくを助けてくれるっていうのはどうです。」
アデルは手甲をはめた両手をガツンと打ち鳴らした。口元がつり上がり笑みの形を作ったが、猛獣が牙をむき出したようにしか見えない。
「商談成立だな、ルウエン。」
「ふざけんな、ガ」
ぼくは、押し当てられたナイフに自分から、喉首を押し込みにいった。
悪役くんは、あせって、ナイフを引く。その動作に合わせて。
ぼくは、自分の頭を羽交いじめから、抜き出した。
そのまま、相手の体勢を崩す。
男は、バランスを崩して頭から、地面に突っ込んだ。
そのときには、もうアデルは残りの4人を制圧している。こちら技もへったくれもない。
極端に言ってしまえば武器すら抜いていない。
彼女はその拳で4人を殴り倒しただけだ。全く呆れるばかりの威力だった。
体格ではまだ幼い彼女に勝る男たち全員が地面に倒れたまま、完全に意識を刈り取られている。
「いこう!」
アデルが、ぼくの手を握った。
同様なチンピラに目をつけられないとも限らなかったし、判断はいい。
でも。
彼女が、ぼくの手を握った瞬間。びっくりしたように、
ぼくを覗き込んだのだ。
「おまえ、ばっちゃんの親戚か?」
「え、えっと。ばっちゃん? アデルのおばあちゃん?」
「そうだな。ええ‥‥」
アデルは言い淀んだ。
「まあ、いいや。あとで話すから、いまは走れ!」
ランゴバルドの街は、ぼくが覚えているとおりではなかった。
そもそも、駅前に、あんな屋台とテントだけの商店街なんてなかったし、いきなりこちらをかどわかしにかかる犯罪者もいなかった。
建物そのものは増えていない。でも、大型の馬車を通すために広げた道路に、―またバラックが、立ち並んで、すべてを台無しにしていた。
アデルは、凄まじい健脚の持ち主だった。
単に脚が速い。という問題ではない、その速度のまま、約30疾走し続けたのだ。
「驚いたか。」
うなじに汗が光っていた。
「北の大地じゃあ、獲物を追って、こうやって大地を駆け回るんだ。」
「そ、そういうもんなんですか?」
ぼくは、腕を引っ張られて、散々である。
「しかし、人間がそもそもこんな速度と持久力で、走り回れるなら、たぶん弓も罠も入りませんよね。普通に獲物に追いついて、首を刈れる。」
「うーーん。そういえば」
アデルは考え込み始めた。
「ばっちゃんは、あんまり弓は使ってなかったし、じっちゃんは獲物を追っかけるときには、わりと馬を使ってたなあ。」
それから。はたと気がついてぼくを見た。
「そう言えば、おまえも鍛えてるよなあ、ルウエン、だっけ。
みたところ、魔道士よりみたいだけど。
あれか、ひょっとして。」
「ええ。一応これでも冒険者ですよ。」
ぼくは言った。
「ただ、ぼくのいた辺境じゃ正規の冒険者資格がとれないんで、わざわざ、ランゴバルドにやってきたんですよ。アデルさんもそうでしょ?」
うーーん、そうだな。
考え込むその顔は、まるきりアウデリアさんの相似形だった。だから耐えられたのかもしれない。
もし、その面立ちが、体型がもう少しフィオリナよりだったら。
ぼくが耐えられたかどうかは分からない。
アデルは、校門のところまで来るとらぼくに手を振った。
「じゃあ、ここでいったんお別れだ。
一緒のクラスになれるといいな!」
そうなんだ。
彼女の髪や顔立ち、その仕草、口の利き方。
充分だ、もう充分。
ぼくは、まだひっそりとこの世界を観察だけして回るつもりだった。そうだもうしばらくは。
それ以外のことは怖かったというのもある。
自分がいない間に世界がどのように変更してしまったのか。
友人たちがどこのこうのでどういう風になってしまったのか。いやそもそも死んでいるのか生きているのか。
中でも一番知りたくなかったのがぼくの親友と婚約者のことだ。
アデル。
この少女は何を検討する間もなく、何を検討する必要もなく、ー明らかにフィオリナの血縁だった。
顔立ちは、フィオリナよりも、リウよりも、アウデリアさんににていた。
あの人ほど大柄ではないが、しなやかに鍛え上げた筋肉、大口を開けて大笑するのが、いかにも似合いそうな健康そうな歯を備えた口もと。
これは、いかにもアウデリアさん、そっくりの萌えるようなオレンジの髪。
ぼくは、腕を掴まれた。
首筋に刃物が押し当てられる。
つまり、このアデルと名乗る少女が、なかなか手強いと見たこの連中は、ぼくを人質に取ることにしたのだ。
悪い手段ではない。
「おい、おい嬢ちゃん下手に動くと、こいつの命はねぇぞ。」
「あ、ぼくはルウエンっていいます。魔道士見習いです。」
ぼくは、自己紹介した。
ひょっとすると。
可能性こそかなり低いものの、アデルは、アウデリアさん自身の娘かもしれない
。
クローディア大公はまだまだ、男盛りだったはずだし、アウデリアさん自身はそもそも寿命があるのかすらさあだかではない。
フィオリナの妹か弟を作ろうとした結果が、アデルである可能性は、あった。
「ルウエンっていうのか。
お前も冒険者学校に入るために来たのか?」
その通り。ただし動機は極めて不順だった。
冒険者学校だったら生徒のふりをしていればいくらでもただ飯が食える。
帰ってきたばかりのぼくにとっては休息と観察のための時間が絶対に必要だった。
誰が電車が着いた初日の日にアデルなどという運命の子にいきなり出くわすというのだろう。
「そうですよ。なんだったら冒険者学校へのご案内を僕はできますけど。」
「おい勝手に話をするんじゃねえ。こいつがどうなっても」
首筋にナイフの刃がめり込んだ。
うわあ。やめて欲しいな。切れたらどうるんだ。
「まあはっきり言えばどうなってもいいぞ。」
アデルはたのしそうに笑った。
「妙なのに絡まれているから助けられると思っただけで、所詮は通りすがりの赤の他人だ。」
この対応に、連中は明らかに面くらったようだ僕はできるだけAleppoそうに聞こえる声で言った
ぼくはできるだけ、哀れっぽく聞こえる声で言った。
「冒険者学校へのご案内をぼくがただでしますよ。代わりにこいつらぶちましてぼくを助けてくれるっていうのはどうです。」
アデルは手甲をはめた両手をガツンと打ち鳴らした。口元がつり上がり笑みの形を作ったが、猛獣が牙をむき出したようにしか見えない。
「商談成立だな、ルウエン。」
「ふざけんな、ガ」
ぼくは、押し当てられたナイフに自分から、喉首を押し込みにいった。
悪役くんは、あせって、ナイフを引く。その動作に合わせて。
ぼくは、自分の頭を羽交いじめから、抜き出した。
そのまま、相手の体勢を崩す。
男は、バランスを崩して頭から、地面に突っ込んだ。
そのときには、もうアデルは残りの4人を制圧している。こちら技もへったくれもない。
極端に言ってしまえば武器すら抜いていない。
彼女はその拳で4人を殴り倒しただけだ。全く呆れるばかりの威力だった。
体格ではまだ幼い彼女に勝る男たち全員が地面に倒れたまま、完全に意識を刈り取られている。
「いこう!」
アデルが、ぼくの手を握った。
同様なチンピラに目をつけられないとも限らなかったし、判断はいい。
でも。
彼女が、ぼくの手を握った瞬間。びっくりしたように、
ぼくを覗き込んだのだ。
「おまえ、ばっちゃんの親戚か?」
「え、えっと。ばっちゃん? アデルのおばあちゃん?」
「そうだな。ええ‥‥」
アデルは言い淀んだ。
「まあ、いいや。あとで話すから、いまは走れ!」
ランゴバルドの街は、ぼくが覚えているとおりではなかった。
そもそも、駅前に、あんな屋台とテントだけの商店街なんてなかったし、いきなりこちらをかどわかしにかかる犯罪者もいなかった。
建物そのものは増えていない。でも、大型の馬車を通すために広げた道路に、―またバラックが、立ち並んで、すべてを台無しにしていた。
アデルは、凄まじい健脚の持ち主だった。
単に脚が速い。という問題ではない、その速度のまま、約30疾走し続けたのだ。
「驚いたか。」
うなじに汗が光っていた。
「北の大地じゃあ、獲物を追って、こうやって大地を駆け回るんだ。」
「そ、そういうもんなんですか?」
ぼくは、腕を引っ張られて、散々である。
「しかし、人間がそもそもこんな速度と持久力で、走り回れるなら、たぶん弓も罠も入りませんよね。普通に獲物に追いついて、首を刈れる。」
「うーーん。そういえば」
アデルは考え込み始めた。
「ばっちゃんは、あんまり弓は使ってなかったし、じっちゃんは獲物を追っかけるときには、わりと馬を使ってたなあ。」
それから。はたと気がついてぼくを見た。
「そう言えば、おまえも鍛えてるよなあ、ルウエン、だっけ。
みたところ、魔道士よりみたいだけど。
あれか、ひょっとして。」
「ええ。一応これでも冒険者ですよ。」
ぼくは言った。
「ただ、ぼくのいた辺境じゃ正規の冒険者資格がとれないんで、わざわざ、ランゴバルドにやってきたんですよ。アデルさんもそうでしょ?」
うーーん、そうだな。
考え込むその顔は、まるきりアウデリアさんの相似形だった。だから耐えられたのかもしれない。
もし、その面立ちが、体型がもう少しフィオリナよりだったら。
ぼくが耐えられたかどうかは分からない。
アデルは、校門のところまで来るとらぼくに手を振った。
「じゃあ、ここでいったんお別れだ。
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