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魔王の蠢動
カザリームへの応援要請
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リウから応援の要請をうけたルトは、考え込んだ。
なにかが起こってた。
新たな魔王誕生の兆しのようなものが、カザリームとランゴバルドで同時におこるとは、偶然の一致にしては、あんまりだ。
それを起こしたものがいるのならば、明らかに戦力の分断が目的なのだろう。
傷ついたエミリアとクロウドは、再生医療をうけたとのことで、安心している。時間はかかるがもとの体にもどれるのだ。
地を吸われたファイユとマシューはどうするか。吸血鬼の呪縛を解くには、その吸血鬼をめっしてしまうのが、いちばんだったが、呆れたことにこの主人公は、それをするのをためらっている。はたして、そいつを倒してしまって良いものか。
となると、誰をカザリームに向かわせるのがベストなのだろう。
フィオリナは、わたしが、わたしがとグイグイ来るのであるが、今度ばかりは彼女でもいいか、一度はルトも考えたのだ。
だって、リウが今現在、ちゃんとバートナー扱いしているのは、その昔、ボルテックのじじいがつくったフィオリナをモデルにつくった魔導人形だ。
それを目の当たりにした本家フィオリナが、どうするかはちょっと予測が付きにくく、結構、面白いものになるんじゃないかと、ルトは思ったのである。
だが、それを楽しむためには、彼自身もカザリームに出向かねばならないので、その案は却下せざるを得なかった。
次に考えたのが、ギムリウスだった。なにしろ、彼女は、転移の達人である。
カザリームにいったことがなくても、つまりなんのマーカーを置かなくても、カザリームには、あっという間に行って帰って来られるのだ。
ドロシーのスーツが、切り裂かれてしまったという報告もうけているので、代わりを渡してやる必要もあった。
しかし、である。
ギムリウスは単体の戦力としては、こころもとない一面もあるのだ。
彼(あるいは彼女)のいまの体は、コミュニケーション用の義体に過ぎない。
もちろん、本体や眷属たちを呼べば、無敵なのだろうが、それはカザリームごと始末する必要がでた場合のみに留めておきたい。
そうこうしているうちに、話をききつけた好奇心旺盛な真祖さまが、自分がいきたいと言いだした。ギムリウスのスーツをつくるならば、採寸やら縫製は自分の仕事だというのだ。
ギムリウスに確かめたら、本当だった。
あのスーツに、ロウが役にたっているとは、思いもしなかった。ドロシーを脱がして遊んでるだけだと思ってたよ、すまない、ロウ。
それに、血を吸われたマシューとファイユをもとに戻してやるためには、たしかにロウの「双主変」を使うしかない。
ルトは、考えに考えた。
ドロシーが敵の手におちているのだ。
これをすみやかに救出して、カザリームにも被害をもたらさずに、ドゥルノ・アゴンを倒し、いや倒しただけではだめなのだ。誰が、なんのために魔王を創り出しているのかを確認しなければならない。
それには、ロウはひとりでは、少し心もとないのだ。
かといって、ロウとギムリウスを同時に送り出してしまえば、ランゴバルドに残る「迷宮組」はアモンひとりになってしまう。
シャルリリア龍皇国からの留学生の件も、夜道で彼らを襲った巨大な爪の正体もわからないままだ。こちらも対処をしなければならない。とくに留学生の件は、のちのちの学長選挙にもかかわってくるかもしれない。
そこで、ルトは名案を思いついた。
必要最小限のメンバーを送ろうとするから悩むのであって、こっちにいてもらっては迷惑なメンバーもいっしょに送ってしまえば収支は合うのでは?
なので、ルトは、なぜかランゴバルドについてきて、連日“神竜の息吹”で飲んだくれている“フェンリルの咆哮”のザックをふたりにつけることを思いついたのだ。
暇そうにしているクセに、ザックはしぶった。
「どうせ、燭乱天使あたりにぼくらを偵察しとけって言われたんでしょう。」
と、言われて、ザックは酔がふっとぶ思いをした。
「ここで、竜魔法を使う刺客と、なぞの留学生のお尻をおっかけてるよりも、新たな魔王を名乗るドゥルノ・アゴンにかみついたほうが、あなた向きでしょう?」
ザックが、ぶうたれるのを、ルトが「へえ、フェンリってよく吠えるんですねえ。」と、無邪気な顔で尋ねたので、ザックはだまって言うことをきくことにした。
なにかが起こってた。
新たな魔王誕生の兆しのようなものが、カザリームとランゴバルドで同時におこるとは、偶然の一致にしては、あんまりだ。
それを起こしたものがいるのならば、明らかに戦力の分断が目的なのだろう。
傷ついたエミリアとクロウドは、再生医療をうけたとのことで、安心している。時間はかかるがもとの体にもどれるのだ。
地を吸われたファイユとマシューはどうするか。吸血鬼の呪縛を解くには、その吸血鬼をめっしてしまうのが、いちばんだったが、呆れたことにこの主人公は、それをするのをためらっている。はたして、そいつを倒してしまって良いものか。
となると、誰をカザリームに向かわせるのがベストなのだろう。
フィオリナは、わたしが、わたしがとグイグイ来るのであるが、今度ばかりは彼女でもいいか、一度はルトも考えたのだ。
だって、リウが今現在、ちゃんとバートナー扱いしているのは、その昔、ボルテックのじじいがつくったフィオリナをモデルにつくった魔導人形だ。
それを目の当たりにした本家フィオリナが、どうするかはちょっと予測が付きにくく、結構、面白いものになるんじゃないかと、ルトは思ったのである。
だが、それを楽しむためには、彼自身もカザリームに出向かねばならないので、その案は却下せざるを得なかった。
次に考えたのが、ギムリウスだった。なにしろ、彼女は、転移の達人である。
カザリームにいったことがなくても、つまりなんのマーカーを置かなくても、カザリームには、あっという間に行って帰って来られるのだ。
ドロシーのスーツが、切り裂かれてしまったという報告もうけているので、代わりを渡してやる必要もあった。
しかし、である。
ギムリウスは単体の戦力としては、こころもとない一面もあるのだ。
彼(あるいは彼女)のいまの体は、コミュニケーション用の義体に過ぎない。
もちろん、本体や眷属たちを呼べば、無敵なのだろうが、それはカザリームごと始末する必要がでた場合のみに留めておきたい。
そうこうしているうちに、話をききつけた好奇心旺盛な真祖さまが、自分がいきたいと言いだした。ギムリウスのスーツをつくるならば、採寸やら縫製は自分の仕事だというのだ。
ギムリウスに確かめたら、本当だった。
あのスーツに、ロウが役にたっているとは、思いもしなかった。ドロシーを脱がして遊んでるだけだと思ってたよ、すまない、ロウ。
それに、血を吸われたマシューとファイユをもとに戻してやるためには、たしかにロウの「双主変」を使うしかない。
ルトは、考えに考えた。
ドロシーが敵の手におちているのだ。
これをすみやかに救出して、カザリームにも被害をもたらさずに、ドゥルノ・アゴンを倒し、いや倒しただけではだめなのだ。誰が、なんのために魔王を創り出しているのかを確認しなければならない。
それには、ロウはひとりでは、少し心もとないのだ。
かといって、ロウとギムリウスを同時に送り出してしまえば、ランゴバルドに残る「迷宮組」はアモンひとりになってしまう。
シャルリリア龍皇国からの留学生の件も、夜道で彼らを襲った巨大な爪の正体もわからないままだ。こちらも対処をしなければならない。とくに留学生の件は、のちのちの学長選挙にもかかわってくるかもしれない。
そこで、ルトは名案を思いついた。
必要最小限のメンバーを送ろうとするから悩むのであって、こっちにいてもらっては迷惑なメンバーもいっしょに送ってしまえば収支は合うのでは?
なので、ルトは、なぜかランゴバルドについてきて、連日“神竜の息吹”で飲んだくれている“フェンリルの咆哮”のザックをふたりにつけることを思いついたのだ。
暇そうにしているクセに、ザックはしぶった。
「どうせ、燭乱天使あたりにぼくらを偵察しとけって言われたんでしょう。」
と、言われて、ザックは酔がふっとぶ思いをした。
「ここで、竜魔法を使う刺客と、なぞの留学生のお尻をおっかけてるよりも、新たな魔王を名乗るドゥルノ・アゴンにかみついたほうが、あなた向きでしょう?」
ザックが、ぶうたれるのを、ルトが「へえ、フェンリってよく吠えるんですねえ。」と、無邪気な顔で尋ねたので、ザックはだまって言うことをきくことにした。
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