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魔王になんかなりたくない!
惨劇!ホームルーム
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数十年来、ルールスの護衛を務めるネイアが、よりにもよって外出をするルールスについていかなかったのは、この日の午後のホームルームが彼女の担当だったからである。
もちろん、ルールスとルトが、そう命じなければ、ホームルームはヤホウに任せることも考えたのだが、新入生を迎えて!しかも初めてのホームルームには、格子ほどもある蜘蛛の化け物は、キツすぎるのだ。
かくいう彼女も、吸血鬼であり、しかも普段着は素肌に直接ボロ布を巻きつけるというインパクトのある格好をしているのであるが、要は程度問題である。
この日のホームルームの出席者は120名。階段席になった大教室はほとんど、ルールス分校の貸し切り状態だった。
なんでこんなことになったかといと、大邪神ヴァルゴールの「贄場」の支配権を巡って、多数の使徒がこの地に集まったのだ。そこでヴァルゴールが突然「もう贄なんかいらないから」と、とんでもないワガママを言い出し、集まった使徒たちは途方に暮れたのだ。
そのまま、解散していただいて、ヴァルゴールとしては、構わなかったのだが、ルトが、難色を示した。殺人に禁忌のない百人近い狂信者の群れを解き放つのは、あんまりだと思ったのか、それとも各地から、集められたあげくに現地解散を命じられた使徒たちを気の毒に思ったのか、手に職も当座の生活費もないものたちを、冒険者学校に入学させたのだ。
もちろん、郷里にかえって生活ができる者は、そうしてもらうつもりだったのだが、考えて欲しい。
信仰する神と、机を並べて学生生活を送りたいと思わぬ信徒が、はたして1人でもいただろうか。
実際は、さすがにそれは畏れ多いと思ったり、これを機会に信仰を離れたりした。
(例えば先に登場した祭司長のアゲートなどは、ランゴバルド市内に治療院を開き、けっこう繁盛している。)
大半の信徒は、嬉々として冒険者学校への入学を選んだ。
ランゴバルドの公式な見解はこうである。
邪悪なるヴァルゴールのアジトを襲撃し、これを打ち破ったさいに、似生贄として集められた多数の人質を救出した。
彼らは心身ともに弱りきっており、また、家族もヴァルゴールの使徒の手にかかり、身寄りのないものも少なくなかった。
苦渋の決断として、ランゴバルドは、彼らを冒険者学校に、入学させた。
そこならば、衣食住を確保させた上で職業訓練もできる。
言っておくが、彼は邪教の被害者などてはない。
人間を生贄に、捧げるヴァルゴールの信徒のなかでも「使徒」と呼ばれるとびっきりの狂信者の群れである。
冒険者学校は、それをそっくりそのまま、ルールス分校に押し付けた。
ルールスは、頭を抱えたが、アキルの「ああ、連中、わたしの言うことなら聞くから!」というセリフに、激昂し「なんだお前は! 異世界人かなにか知らんがヴァルゴールの現身だとでもいうのか?」
ルトたちは、沈黙をもってそれに応え、ルールスは手近な酒瓶をラッパ飲みして気を失った。
「えーっと、まず今日は、新しいお友達を紹介・・・っと。そのまえに。」
ネイアは、教室の隅に、お目当ての人物をみつけて、呼びかけた。
「この一ヶ月に、このクラスに入ったものに紹介しておく。
ひさびさの出席となるので、初対面もいるだろう。
ランゴバルド冒険者学校の自警団『神竜騎士団』で、現役の銀級冒険者アモンだ。」
久々にホームルームに出席したアモンは、やれやれという表情で立ち上がったが、彼女が口を開くより早く、その胸に飛び込んだ者がいる。
ほぼ、反射的に振り抜いたアモンの拳はキレイにカウンターになり、相手は、頭を仰け反らせながらも、アモンにシがみついた。
ううむ。打撃で突き放されずに組み討ちに持ち込むとは!
居並ぶ、ヴァルゴールの使徒たち、無手の技に経験のある生徒たちから、感嘆のためいきがもれたが、そうではない。
平凡そうな田舎娘は、アモンの胸に顔をうずめて泣きじゃくった。
「リアモンド! やっぱりあなただったのね! ほんとうのほんとうにあなたなのね!
助けてわたしを助けて!」
「なにがどうなってる? ルナ=ベル。竜の牙共が死にものぐるいで探していたぞ。
なぜ、都を出奔した。あそこ以上に安全な場所なんてないぞ、竜王陛下。」
竜王。
ネイアは、聞かなかったことにしようかと思ったが、最前列のアキルをみて、思い直した。
うん、邪神がいるクラスの担任をしているのだ。竜王が入学してきて、なにが問題なのか。
「わたし、魔王になんかなりたくない!」
もちろん、ルールスとルトが、そう命じなければ、ホームルームはヤホウに任せることも考えたのだが、新入生を迎えて!しかも初めてのホームルームには、格子ほどもある蜘蛛の化け物は、キツすぎるのだ。
かくいう彼女も、吸血鬼であり、しかも普段着は素肌に直接ボロ布を巻きつけるというインパクトのある格好をしているのであるが、要は程度問題である。
この日のホームルームの出席者は120名。階段席になった大教室はほとんど、ルールス分校の貸し切り状態だった。
なんでこんなことになったかといと、大邪神ヴァルゴールの「贄場」の支配権を巡って、多数の使徒がこの地に集まったのだ。そこでヴァルゴールが突然「もう贄なんかいらないから」と、とんでもないワガママを言い出し、集まった使徒たちは途方に暮れたのだ。
そのまま、解散していただいて、ヴァルゴールとしては、構わなかったのだが、ルトが、難色を示した。殺人に禁忌のない百人近い狂信者の群れを解き放つのは、あんまりだと思ったのか、それとも各地から、集められたあげくに現地解散を命じられた使徒たちを気の毒に思ったのか、手に職も当座の生活費もないものたちを、冒険者学校に入学させたのだ。
もちろん、郷里にかえって生活ができる者は、そうしてもらうつもりだったのだが、考えて欲しい。
信仰する神と、机を並べて学生生活を送りたいと思わぬ信徒が、はたして1人でもいただろうか。
実際は、さすがにそれは畏れ多いと思ったり、これを機会に信仰を離れたりした。
(例えば先に登場した祭司長のアゲートなどは、ランゴバルド市内に治療院を開き、けっこう繁盛している。)
大半の信徒は、嬉々として冒険者学校への入学を選んだ。
ランゴバルドの公式な見解はこうである。
邪悪なるヴァルゴールのアジトを襲撃し、これを打ち破ったさいに、似生贄として集められた多数の人質を救出した。
彼らは心身ともに弱りきっており、また、家族もヴァルゴールの使徒の手にかかり、身寄りのないものも少なくなかった。
苦渋の決断として、ランゴバルドは、彼らを冒険者学校に、入学させた。
そこならば、衣食住を確保させた上で職業訓練もできる。
言っておくが、彼は邪教の被害者などてはない。
人間を生贄に、捧げるヴァルゴールの信徒のなかでも「使徒」と呼ばれるとびっきりの狂信者の群れである。
冒険者学校は、それをそっくりそのまま、ルールス分校に押し付けた。
ルールスは、頭を抱えたが、アキルの「ああ、連中、わたしの言うことなら聞くから!」というセリフに、激昂し「なんだお前は! 異世界人かなにか知らんがヴァルゴールの現身だとでもいうのか?」
ルトたちは、沈黙をもってそれに応え、ルールスは手近な酒瓶をラッパ飲みして気を失った。
「えーっと、まず今日は、新しいお友達を紹介・・・っと。そのまえに。」
ネイアは、教室の隅に、お目当ての人物をみつけて、呼びかけた。
「この一ヶ月に、このクラスに入ったものに紹介しておく。
ひさびさの出席となるので、初対面もいるだろう。
ランゴバルド冒険者学校の自警団『神竜騎士団』で、現役の銀級冒険者アモンだ。」
久々にホームルームに出席したアモンは、やれやれという表情で立ち上がったが、彼女が口を開くより早く、その胸に飛び込んだ者がいる。
ほぼ、反射的に振り抜いたアモンの拳はキレイにカウンターになり、相手は、頭を仰け反らせながらも、アモンにシがみついた。
ううむ。打撃で突き放されずに組み討ちに持ち込むとは!
居並ぶ、ヴァルゴールの使徒たち、無手の技に経験のある生徒たちから、感嘆のためいきがもれたが、そうではない。
平凡そうな田舎娘は、アモンの胸に顔をうずめて泣きじゃくった。
「リアモンド! やっぱりあなただったのね! ほんとうのほんとうにあなたなのね!
助けてわたしを助けて!」
「なにがどうなってる? ルナ=ベル。竜の牙共が死にものぐるいで探していたぞ。
なぜ、都を出奔した。あそこ以上に安全な場所なんてないぞ、竜王陛下。」
竜王。
ネイアは、聞かなかったことにしようかと思ったが、最前列のアキルをみて、思い直した。
うん、邪神がいるクラスの担任をしているのだ。竜王が入学してきて、なにが問題なのか。
「わたし、魔王になんかなりたくない!」
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