26 / 38
25、古竜VSもう一人の黒蜥蜴
しおりを挟む
『暁の戦士』たちは階段をいくつも降り、また上がり、長い長い廊下を歩いて、また、階段を上がって、降った。
いくら何でも、ランゴバルト博物館がこんなに広いわけはない。
空間に操作が加えられている。
あるいは、別の空間と重ね合わせることで拡張を行っているのか。
ぼくは、目をこらした。術式自体は、それほど、複雑なものではない。ただ、あまりに膨大な魔力が必要なため、人間には構築できないだけだ。
ならば、ここを。
こうして。
こう。
通路は揺らいで消滅し、目の前には、重い鉄の扉が現れた。
場所は、地下なのだろうか。空気が僅かに澱んでいる。
扉は音もなく開いた。
部屋の主は驚いたように振り返る。
ぼくは、黒蜥蜴のマスクを脱ぎ捨てて、真っ直ぐに部屋の主に向かって歩いた。
何か叫ぼうと開きかけた口に、短剣を差し込む。
3歩下がって。
はい、電撃。
鋼糸を伝わって流れた電流は、口内から、ニフフの体を焼いた。
煙を上げてのたうち回るが、なあに、死にはしないだろう。なにせ腐っても古竜だ。
そういえば、このところリアモンド以外に腐ってない古竜にあったことがない。今年は竜運でも悪いんだろうか。
手枷は簡単に外れた。
ギムリウスのスーツは、おへその下まで引き裂かれていた。
あぶない。まさかとは思っていたが、本当に危機一髪もいいところだった。
ニフフが、そんな趣味があるとはわからなかった。
「ルト・・・ニフフは竜よ。竜人じゃなくって本物の竜な、の。」
皮膚がこそげ落とされて、赤黒い肉や骨まで見えている手首に、ぼくは治癒魔法をかける。
肋も何本か折れているようだった。
たぶん、抱きしめる方が先なんだろうけど、ぼくは、それをする資格はないように感じていたし、ドロシーも苦痛を訴えるよりも涙を流すよりも代わりに大事な情報をぼくに伝える方を優先した。
「だから、安心していたんだが。
竜がわざわざ卑小な人間をさらって痛めつけるとか・・・考えられない。」
「ニフフは、『神竜の鱗』を自分のものにするつもりだったの。でも、もう鱗はニセモノとすり替えられていて。
わたしが何か知ってるんじゃないかって問い詰められたんだけど、なにもわからないって、言ったら。」
よしっ!
取り敢えず脇腹にキックだな。
グエっと叫んでニフフが、のたうつ。
「起きろ、蜥蜴。」
竜の鱗なぞ、なにするものか。
魔法にも物理的な打撃にも強いのだが、両方いっぺんには防ぎきれない。
「る、ルト、きさま!」
「もう少しマシな方だと思ってたんですがね。」
人化した古竜だ。回復力だってすごいはずだ。
立ち上がるニフフには、もうダメージのあとはない。
「人間がっ!」
ぼくは、嬉しかった。
とりあえず、ぶち殺す気はなかったから、うっかり、殺してしまわないか気を使わずに、痛ぶれるのはとってもよい。
かあっ
と、開いた口の中にエネルギーが収束する。
ああ、おそい。おそい。おそい。
どのくらいおそいかというと、ぼくが、ニフフの顔に、ギムリウスの糸でつくった黒蜥蜴マスクを被せてやる時間が十分間に合ったくらい。
ぼふっ
音は鈍かった。
ブレスはぼぼ、マスクの中でその威力を発揮したのだ。
おおっ!
神獣ギムリウスの糸で織られたマスクがずたずたになっている。
わざわざ、ぼくの顔に合わせてつくった逸品だったのだが、さすがは竜のプレス。
あとは。彼のもつ、竜鱗とブレス。どっちが強いかの勝負だろう。
髪は全て燃え尽きた。
とっさに、目をつぶるくらいの判断はできたのだろう。
眼球は無事だった。
顔は、皮がめくれ人相がわからなくなっている。
それでも闘志を失わないのは。
たいしたものだ。
抵抗の意思がないものを痛ぶるのは、実はぼくは苦手なんだ。
「わし、は、」
よろよろとニフフは歩いた。耳と口のからケムリふいている。
「リアモンドさ、まの鱗を。」
へえ。
竜化するつもりか?
ここで?
させない。
組み付きながら、投げをうつ。
人間の体術には、人化した竜は不慣れなものが多い。そりゃあそうだろう、もともとがもともとなのだし、人の姿をとっても力ははるかに上。力に任せて攻撃すればそれでどんな人間でも圧倒できる。
だか、バランスの悪い二本の足で歩き、関節も同じ形状をとっている以上、投げ技、関節技が効かないわけがない。
枯れ木の折れる音は、腕の骨が折れた音。
このような傷をおったままだと、変身がしにくくなる。
もちろん、治してから変わればいいのだか。
いいや。そんなスキは与えてやらないね。
ドロシーがぼくのそでをひいた。
「ルト、もういい。」
「え?でも」
「ニフフさまも、お止めください。あなたが神竜の鱗を欲する理由をお聞きする必要があります。」
「確かにそうだね。」
ぼくは賛成した。
「でもドロシー、それはもう少し痛めつけてからにしよう。」
ニフフは、呆然と口を開けた。
歯は全部ふっとんでるし、まだ口のなかが燃えていた。
「る、ルト、ルトさま。あなたさまはいったい?」
「ルトはロウさまとギムリウスのいるバーティのリーダーです。」
ドロシーは冷静に言った。
「あなたがその二つの名に畏れをいだくのなら、ルトとこれ以上戦うのはおすすめしません。」
ぼくは、ドロシーに、上着をかけた。
前を掻き合せながら、ドロシーはこの日はじめて泣いた。
いくら何でも、ランゴバルト博物館がこんなに広いわけはない。
空間に操作が加えられている。
あるいは、別の空間と重ね合わせることで拡張を行っているのか。
ぼくは、目をこらした。術式自体は、それほど、複雑なものではない。ただ、あまりに膨大な魔力が必要なため、人間には構築できないだけだ。
ならば、ここを。
こうして。
こう。
通路は揺らいで消滅し、目の前には、重い鉄の扉が現れた。
場所は、地下なのだろうか。空気が僅かに澱んでいる。
扉は音もなく開いた。
部屋の主は驚いたように振り返る。
ぼくは、黒蜥蜴のマスクを脱ぎ捨てて、真っ直ぐに部屋の主に向かって歩いた。
何か叫ぼうと開きかけた口に、短剣を差し込む。
3歩下がって。
はい、電撃。
鋼糸を伝わって流れた電流は、口内から、ニフフの体を焼いた。
煙を上げてのたうち回るが、なあに、死にはしないだろう。なにせ腐っても古竜だ。
そういえば、このところリアモンド以外に腐ってない古竜にあったことがない。今年は竜運でも悪いんだろうか。
手枷は簡単に外れた。
ギムリウスのスーツは、おへその下まで引き裂かれていた。
あぶない。まさかとは思っていたが、本当に危機一髪もいいところだった。
ニフフが、そんな趣味があるとはわからなかった。
「ルト・・・ニフフは竜よ。竜人じゃなくって本物の竜な、の。」
皮膚がこそげ落とされて、赤黒い肉や骨まで見えている手首に、ぼくは治癒魔法をかける。
肋も何本か折れているようだった。
たぶん、抱きしめる方が先なんだろうけど、ぼくは、それをする資格はないように感じていたし、ドロシーも苦痛を訴えるよりも涙を流すよりも代わりに大事な情報をぼくに伝える方を優先した。
「だから、安心していたんだが。
竜がわざわざ卑小な人間をさらって痛めつけるとか・・・考えられない。」
「ニフフは、『神竜の鱗』を自分のものにするつもりだったの。でも、もう鱗はニセモノとすり替えられていて。
わたしが何か知ってるんじゃないかって問い詰められたんだけど、なにもわからないって、言ったら。」
よしっ!
取り敢えず脇腹にキックだな。
グエっと叫んでニフフが、のたうつ。
「起きろ、蜥蜴。」
竜の鱗なぞ、なにするものか。
魔法にも物理的な打撃にも強いのだが、両方いっぺんには防ぎきれない。
「る、ルト、きさま!」
「もう少しマシな方だと思ってたんですがね。」
人化した古竜だ。回復力だってすごいはずだ。
立ち上がるニフフには、もうダメージのあとはない。
「人間がっ!」
ぼくは、嬉しかった。
とりあえず、ぶち殺す気はなかったから、うっかり、殺してしまわないか気を使わずに、痛ぶれるのはとってもよい。
かあっ
と、開いた口の中にエネルギーが収束する。
ああ、おそい。おそい。おそい。
どのくらいおそいかというと、ぼくが、ニフフの顔に、ギムリウスの糸でつくった黒蜥蜴マスクを被せてやる時間が十分間に合ったくらい。
ぼふっ
音は鈍かった。
ブレスはぼぼ、マスクの中でその威力を発揮したのだ。
おおっ!
神獣ギムリウスの糸で織られたマスクがずたずたになっている。
わざわざ、ぼくの顔に合わせてつくった逸品だったのだが、さすがは竜のプレス。
あとは。彼のもつ、竜鱗とブレス。どっちが強いかの勝負だろう。
髪は全て燃え尽きた。
とっさに、目をつぶるくらいの判断はできたのだろう。
眼球は無事だった。
顔は、皮がめくれ人相がわからなくなっている。
それでも闘志を失わないのは。
たいしたものだ。
抵抗の意思がないものを痛ぶるのは、実はぼくは苦手なんだ。
「わし、は、」
よろよろとニフフは歩いた。耳と口のからケムリふいている。
「リアモンドさ、まの鱗を。」
へえ。
竜化するつもりか?
ここで?
させない。
組み付きながら、投げをうつ。
人間の体術には、人化した竜は不慣れなものが多い。そりゃあそうだろう、もともとがもともとなのだし、人の姿をとっても力ははるかに上。力に任せて攻撃すればそれでどんな人間でも圧倒できる。
だか、バランスの悪い二本の足で歩き、関節も同じ形状をとっている以上、投げ技、関節技が効かないわけがない。
枯れ木の折れる音は、腕の骨が折れた音。
このような傷をおったままだと、変身がしにくくなる。
もちろん、治してから変わればいいのだか。
いいや。そんなスキは与えてやらないね。
ドロシーがぼくのそでをひいた。
「ルト、もういい。」
「え?でも」
「ニフフさまも、お止めください。あなたが神竜の鱗を欲する理由をお聞きする必要があります。」
「確かにそうだね。」
ぼくは賛成した。
「でもドロシー、それはもう少し痛めつけてからにしよう。」
ニフフは、呆然と口を開けた。
歯は全部ふっとんでるし、まだ口のなかが燃えていた。
「る、ルト、ルトさま。あなたさまはいったい?」
「ルトはロウさまとギムリウスのいるバーティのリーダーです。」
ドロシーは冷静に言った。
「あなたがその二つの名に畏れをいだくのなら、ルトとこれ以上戦うのはおすすめしません。」
ぼくは、ドロシーに、上着をかけた。
前を掻き合せながら、ドロシーはこの日はじめて泣いた。
3
あなたにおすすめの小説
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。
敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。
この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。
「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」
無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。
正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる