最強パーティなのに最下級からなりあがる~怪盗ロゼル一族と神竜の鱗

此寺 美津己

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26,集めて探偵さてと言い

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二フフを引きずるようにして、3階の「神竜の鱗」の間に戻ると、なんとぼくの制服を着た黒蜥蜴くんや、ロゼル一族のみなさんと鉢合わせした。
出来るだけ、けが人は出すなと黒蜥蜴くんには厳命しておいたのだが、エミリアがなぜか、ボロボロだ。

肩の関節をはずされ、顔は人相がわからないくらいに腫れ上がっている。

「やあ、遅くなった。」

と、言って黒蜥蜴は手をあげた。

「どうもこのロゼル一族の内紛に巻き込まれていてね。
このエミリアが、どうも『神竜の鱗』を独り占めにしようとしたって話になって・・・」

「ち、ちがう、わたしは・・・・」

小柄な影がその頬を叩いた。
血が床に飛び散る、なんども。なんども。

「違う、と言っている。」

ぼくは小柄な影にむかって言った。
たマントのフードを深く降ろしているだけなのに、その容姿は、きりにつつまれたようにぼんやりしている。

『認識阻害』の魔法だった。

「違うなら申し開きも聞こう。」
小柄な影は、感情の欠如した声でたんたんと言った。
「だが、違うと言い張るばかりで、理由を言わん。
冒険者学校のルトなる生徒が、ランゴバルド博物館の『神竜の鱗』を手に入れたなら、なぜそれを、長たるわたしに報告せぬ。

なぜ、闇討ちをしかけて、鱗を奪おうとした!」

黒蜥蜴、いや今はもう黒蜥蜴のマスクもしていないし、その衣装を身につけているのは、ぼくなので、わかりやすく名前でよぼう。

ラウレスは、呆然とぼくを見ている。
ドロシーは、と見ると、驚きながらもぼくを見てにっこり、笑ってみせた。

「ルトが非常識なことをするのは、慣れっこになってるから。」

うんうん。フィオリナに似てきたな。

可哀想だったのは、ニフフだった。

せっかく再生しかけていた頭髪やひげがパラパラと抜け落ちる。
ショックをうけたときの戯画的な表現としては悪くない。
いつか、劇作家としてデビューした際は使わせてもらおう。


「そ・・・そんな・・・わしはいったいなにを・・・」

ふところから、虹に輝く鱗を取り出した。

「こ、こんなイミテーションを掴まされ・・・・」

たたきつけられた鱗はかわいた音を立てて、跳ね返った。
ぼくはそれを拾い上げた。

「いいんですか? まあ、丈夫は丈夫でしょうけど。」
「ふざけるなっ!」

二フフは、ぼくに襲いかかろうとして・・・やめた。それはそうだろうな。
暴力は嫌いなのだが、こういうところは便利だ。

ぼくは、ポケットからもう一枚の鱗を取り出した。

大きさ、輝き、瓜二つ。

「ルト・・・と言ったな。おまえの目的はなんだ? なぜ、神竜の鱗を盗む。」

「人聞きの悪いことを。」
ぼくは笑う。
「ランゴバルト博物館の『神竜の爪』を手にしたのはいまがはじめてです。」

「そ、そんな・・」
とエミリアが言いかけてまた、ビンタされた。厳しすぎないか『紅玉の瞳』。

ぼくはエミリアをかばって、傷に治癒魔法をかける。
はずれた肩ははめてからのほうが治りがいいので、そうした。
こういうときに大げさに痛がらないのは、やっぱり荒事になれているのだろう。

「ど、どういう・・・」

「ロゼル一族の長『紅玉の瞳』とお見受けします。」

ぼくは、小柄な影にわらってみせた。

「先達に生意気なことを申し上げますが、認識阻害魔法にはこんな使い方もあるんですよ。」

手に持った『神竜の鱗』は色もかわらず、輝きもかわらず・・・だが。



「え? わ、わしが、偽物だと思ったのは・・・まさか」

「これですか? 偽物に見えるような認識阻害をかけました。」

「わ、わたしが見たのは・・・」
「少なくともランゴバルド博物館所蔵の鱗ではありませんね。」

また『紅玉の瞳』が振り上げたこぶしをぼくは掌で受けた。

「エミリアはぼくが預かりますね。」

「そうはいかん。」
『紅玉の瞳』の口調は平坦で、あいわらずなんの感情もこもらない。
「エミリアは我らを裏切った。そして、なんのために裏切ったかも皆目わからぬ。」

エミリアは目をふせた。

顔の腫れがひいて、もとの愛らしさがもどってきている。

なにか言いたいのだが、言い方がわからない。
そんな風だった。

「ぼくがかわりに説明しましょうか?」

エミリアは驚いたようにぼくを見た。

違ってたら訂正してくれればいい。

そう言うと頷いてくれた。

「あなたは、五枚の“神竜の鱗”をもって何を願うつもりでした?」

「・・・・」

「ああ、確かに五枚の鱗がそろえば、神竜が現れてなんでも願いを叶えてくれるなんておとぎ話は、誰も本気にしていないでしょう。
でも、実際のところ、『神竜が現れて」まではかなりの信憑性のある噂です。
魔術的にも一応の理屈は通ってる。

剥がれ落ちた分体を本体が回収しに現れるのですから。

そこで、『なんでも願い』ではなく、ある程度のお願いならばきいてもらえる。
そんな風に考えたのかも知れませんね。あっていますか?『紅玉の瞳』殿。」

「わ、たしは・・・」

「わかってますよ。あなたは死にかけてますね。」

今度こそ、ロゼル一族の間に動揺が走った。だが、それは・・・見るものが見れば驚天動地のことを言われたのではなく、「やっぱりそうか。」という驚きと諦めの動揺だったようにぼくには思えた。

「吸血鬼が不死身といってもそれは、定められた寿命がないだけ。
長い年月の間にはすり減ってくるのです・・・」
ぼくは、胸をたたいた。
「・・・こっちのほうが。」

『紅玉の瞳』はうつろな目でぼくを見た。

「あなたは感情がすり減ってしまっている。もう何をしても何を感じても心が動かない。
前もって条件づけされた魔道人形のように、一定の目的にむかって動くだけ。それが一族の延命という目的だったおしても。

あなたは、神竜にこう頼むつもりだった。

“リンドを見つけて自分の後継者に据えてほしい”」

エミリアは、ぼくをまじまじと見つめていた。

「そして、エミリアはそうはしたくなかった。彼女は自分が仕えるべき相手をもう見つけたから。
かといって、それを半ば自動人形と化したあなたに納得させられるとも思えない。
そこで、単純かつ、有効的な手段に出た。

すなわち・・・神竜の鱗を五枚揃わせないこと。」

「ばかな・・・」

「エミリアはあなたより多い情報で動いてるんですよ。
あなたは、ぼくらがロウ=リンドとよぶ吸血鬼を知らない。古の魔王の名を名乗る少年のことを知らない。」

『紅玉の瞳』は苦しそうにうめいた。
なんらかの感情が・・・とても長い年月ぶりに彼女の中に訪れ・・・それが彼女を苦しめている。

「・・・おまえたちはなにもの、じゃ?」




「我らは『踊る道化師』」

その答えが『紅玉の瞳』になんの意味もなくてもぼくはそう答えざるをえない。
だって、カッコつけたいし。
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