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29、最終決戦はただのゲーム
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「何故かは知らねど、深淵竜は神竜の鱗がお望み。」
少年は笑った。
ルトには珍しく、艶やかな。
まるで、誘うようなそんな笑み。
持った鱗に、手を伸ばした深淵竜をかわすように、くるりと身を翻した。
「ゾール、ゾール、気が早い。
まだゲームの説明がまだです。」
ルトの、もう片方の手にも魔法のように耀く鱗が登場した。
彼がフェイクとして用意したもう1枚なのだろう。
「さっきも言いましたが、あなたは実に下らないことをした。」
そのまま、ダンスのステップを踏むように、軽やかに部屋の中央へと一同を誘う。
そこには、小さなテーブルが用意されていた。
集会所を、模した部屋だ。
おそらく集まった人々に飲み物でも供するときに、使うのだろう。飾り気のない木製のテーブルだった。
「要するに、あなたはなにかの下らない理由で、神竜の鱗を集めたかった。
だから、そのためにまず犯人を作った。
随分と手の込んだことをしてくれて、多くの者が迷惑を被った。
さて。」
ルトは、テーブルに片手をついてウィンクをした。
「あなたにそれだけのことをする資格があるのか。
これがこのゲームのポイントです。」
「下賎なニンゲン風情が」
「蜥蜴」
一言でゾールを黙らせると、ルトは2枚の鱗をテープルに置いた。
「どちらがランゴバルド博物館におかれた『神竜の鱗』なのかわかりますか?」
「くだらん。」
ゾールは呻いた。
「認識阻害だか、なんだか知らぬが、耄碌したニフフなどと一緒にされたくはないな。」
「ほう、いかがですか? 耄碌竜どの?」
話を突然振られた上に、あらためて二つの鱗を見比べることに集中していたニフフは、とっさの答えに窮した。
「いや、その。」
ニフフは口ごもった。それからはたと気がついたように
「だ、だれが耄碌竜じゃ!」
「さてさて、お立ち会い」
香具師のような言上で、ルトは、机のうえに手のひらをかざした。
乾いた金属音をたてて、鱗が落下した。
1枚、2枚、3枚。
それはすぐに、耀く放流となって机のうえに高く積み上がった。
「奇遇ながら、ぼくも『神竜の鱗』を集めるのが趣味でして。」
ルトの笑いは悪魔のそれに似ていた。
「偉大なる深淵竜殿は、もちろんこの中から、ランゴバルド博物館所蔵の『神竜の鱗』を判別できますよね。
みごとに、引き当てたならば神竜の鱗はあなたのものだ。
『紅玉の瞳』が持つ1枚もおまけに進呈いたしましょう。
いかがです?」
「人間ごときがなめたことを」
「無能蜥蜴」
ゾールを再び、絶句させてから、少年は言う。
「さて、どれがランゴバルド博物館に所蔵された『神竜の鱗』でしょう?」
しばしの沈黙ののち、ゾールは乾いた笑いをたてた。
「いや、面白い、面白いぞ。よい趣向だ。
おまえも我に平伏し、命乞いをしたいその心情を押し殺して、これほどの趣向を凝らすとは!
よいだろう。おまえとその学友二人の命は助けてやろう。」
「あのう・・・」
とラウレスが恐る恐るきいた。声はやっと回復した。
「わたしの命とかは・・・・・?」
「おまえは、竜の都の『神竜の鱗』を盗んだ罪で、死罪または万年牢に幽閉となる。」
ラウレスは、よろよろと床に座り込んだ。
「ああ・・・・人間の女の子、人間の酒、人間の食べ物・・・・特に人間の女の子。」
侮蔑したように鼻を鳴らして、ゾールは「神竜の鱗」の山に手をかけた。
最初の一枚を手に取る。
「ふむ、これだ! もう見つかった。」
ゾールがルトにその鱗を突きつけた。
「高貴なる輝き、厚み、色合い、どれをとってもイミテーションでは実現できんこれが本物の『神竜の鱗』に違いない。」
ルトは泣き出しそうな顔で笑った。
「それでいいんですか? その隣の鱗なんかも怪しいですよ。」
「馬鹿を言うな・・・これこそ、紛れもない本物の『神竜の鱗』・・・・」
そいつぶやきながらも、隣の鱗を手に取る。
その顔が驚きに歪んだ。
「む・・・・こちらが本当の『神竜の鱗』であったか。」
ゾールは破顔した。愛おしそうに鱗を頬擦りする。
「その下に隠れたやつなんてどうですかね? なんか一段と色艶がいいような気がする。」
「馬鹿をいうな。もう我はホンモノの神竜の鱗を見つけたのだ。紛い物など・・・・いや。」
愕然としたように、ゾールがもう一枚を取り上げた。
「こちらが、本物かっ!? い、いや、違う、これも、これも、これも!」
ゾールの鉤爪と化した手が、鱗の山を弄り、かき分けた。
「ど、どうなっている。す、全てがホンモノにしか・・・見えん。認識阻害・・・いや、神竜の鱗は認識阻害など弾くはずだ。
我の目が曇ったとでもいうのか!」
「最初から曇りまくりではなかったんですか?」
ルトは辛辣に言った。
「もともと、こんな馬鹿げた計画を立てて破綻しないワケがない。ニフフを耄碌扱いしましたが、あなたはなんです?」
「に、人間が・・・・」
「蜥蜴。」
三度、絶句したゾールは、何かを決心したように、頷いた。
「わかった・・・・人間の呪い師の小僧。
おまえの認識阻害の術は大したものだ。この我の目すら誤魔化すのだからな!」
「諦めました? なら賭けはぼくの勝ちですね。神竜の鱗は差し上げられません。
とっとと、退散いただいて、竜の都で、神竜の鱗の盗難の罰を受けてください。」
少年は笑った。
ルトには珍しく、艶やかな。
まるで、誘うようなそんな笑み。
持った鱗に、手を伸ばした深淵竜をかわすように、くるりと身を翻した。
「ゾール、ゾール、気が早い。
まだゲームの説明がまだです。」
ルトの、もう片方の手にも魔法のように耀く鱗が登場した。
彼がフェイクとして用意したもう1枚なのだろう。
「さっきも言いましたが、あなたは実に下らないことをした。」
そのまま、ダンスのステップを踏むように、軽やかに部屋の中央へと一同を誘う。
そこには、小さなテーブルが用意されていた。
集会所を、模した部屋だ。
おそらく集まった人々に飲み物でも供するときに、使うのだろう。飾り気のない木製のテーブルだった。
「要するに、あなたはなにかの下らない理由で、神竜の鱗を集めたかった。
だから、そのためにまず犯人を作った。
随分と手の込んだことをしてくれて、多くの者が迷惑を被った。
さて。」
ルトは、テーブルに片手をついてウィンクをした。
「あなたにそれだけのことをする資格があるのか。
これがこのゲームのポイントです。」
「下賎なニンゲン風情が」
「蜥蜴」
一言でゾールを黙らせると、ルトは2枚の鱗をテープルに置いた。
「どちらがランゴバルド博物館におかれた『神竜の鱗』なのかわかりますか?」
「くだらん。」
ゾールは呻いた。
「認識阻害だか、なんだか知らぬが、耄碌したニフフなどと一緒にされたくはないな。」
「ほう、いかがですか? 耄碌竜どの?」
話を突然振られた上に、あらためて二つの鱗を見比べることに集中していたニフフは、とっさの答えに窮した。
「いや、その。」
ニフフは口ごもった。それからはたと気がついたように
「だ、だれが耄碌竜じゃ!」
「さてさて、お立ち会い」
香具師のような言上で、ルトは、机のうえに手のひらをかざした。
乾いた金属音をたてて、鱗が落下した。
1枚、2枚、3枚。
それはすぐに、耀く放流となって机のうえに高く積み上がった。
「奇遇ながら、ぼくも『神竜の鱗』を集めるのが趣味でして。」
ルトの笑いは悪魔のそれに似ていた。
「偉大なる深淵竜殿は、もちろんこの中から、ランゴバルド博物館所蔵の『神竜の鱗』を判別できますよね。
みごとに、引き当てたならば神竜の鱗はあなたのものだ。
『紅玉の瞳』が持つ1枚もおまけに進呈いたしましょう。
いかがです?」
「人間ごときがなめたことを」
「無能蜥蜴」
ゾールを再び、絶句させてから、少年は言う。
「さて、どれがランゴバルド博物館に所蔵された『神竜の鱗』でしょう?」
しばしの沈黙ののち、ゾールは乾いた笑いをたてた。
「いや、面白い、面白いぞ。よい趣向だ。
おまえも我に平伏し、命乞いをしたいその心情を押し殺して、これほどの趣向を凝らすとは!
よいだろう。おまえとその学友二人の命は助けてやろう。」
「あのう・・・」
とラウレスが恐る恐るきいた。声はやっと回復した。
「わたしの命とかは・・・・・?」
「おまえは、竜の都の『神竜の鱗』を盗んだ罪で、死罪または万年牢に幽閉となる。」
ラウレスは、よろよろと床に座り込んだ。
「ああ・・・・人間の女の子、人間の酒、人間の食べ物・・・・特に人間の女の子。」
侮蔑したように鼻を鳴らして、ゾールは「神竜の鱗」の山に手をかけた。
最初の一枚を手に取る。
「ふむ、これだ! もう見つかった。」
ゾールがルトにその鱗を突きつけた。
「高貴なる輝き、厚み、色合い、どれをとってもイミテーションでは実現できんこれが本物の『神竜の鱗』に違いない。」
ルトは泣き出しそうな顔で笑った。
「それでいいんですか? その隣の鱗なんかも怪しいですよ。」
「馬鹿を言うな・・・これこそ、紛れもない本物の『神竜の鱗』・・・・」
そいつぶやきながらも、隣の鱗を手に取る。
その顔が驚きに歪んだ。
「む・・・・こちらが本当の『神竜の鱗』であったか。」
ゾールは破顔した。愛おしそうに鱗を頬擦りする。
「その下に隠れたやつなんてどうですかね? なんか一段と色艶がいいような気がする。」
「馬鹿をいうな。もう我はホンモノの神竜の鱗を見つけたのだ。紛い物など・・・・いや。」
愕然としたように、ゾールがもう一枚を取り上げた。
「こちらが、本物かっ!? い、いや、違う、これも、これも、これも!」
ゾールの鉤爪と化した手が、鱗の山を弄り、かき分けた。
「ど、どうなっている。す、全てがホンモノにしか・・・見えん。認識阻害・・・いや、神竜の鱗は認識阻害など弾くはずだ。
我の目が曇ったとでもいうのか!」
「最初から曇りまくりではなかったんですか?」
ルトは辛辣に言った。
「もともと、こんな馬鹿げた計画を立てて破綻しないワケがない。ニフフを耄碌扱いしましたが、あなたはなんです?」
「に、人間が・・・・」
「蜥蜴。」
三度、絶句したゾールは、何かを決心したように、頷いた。
「わかった・・・・人間の呪い師の小僧。
おまえの認識阻害の術は大したものだ。この我の目すら誤魔化すのだからな!」
「諦めました? なら賭けはぼくの勝ちですね。神竜の鱗は差し上げられません。
とっとと、退散いただいて、竜の都で、神竜の鱗の盗難の罰を受けてください。」
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